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第22話

僕の幸せ気分は、翌日坂下教授から来たメッセージで台無しになった。明日、稔さんと飲むと言うことを僕に知らせ、嫉妬心を煽ろうとしているのがバレバレな鬱陶しいものだったが、ウザい、無視したいと思いつつ、今後も仕事するかもしれない相手、という社会人としてのマナーに沿って、そんなことは知っていると返信した。すぐに折り返された、行間からキーッという歯ぎしりが聞こえるような大人げないメッセージの後ろの方に、気になる一文があった。 今回留学から帰って来るのは稔さんの元カレらしい。元カレと言って思い出すのは、以前稔さんを押し倒していた無礼者のことだ。あいつが今回帰って来た講師ということか。 一緒に飲むだけ、稔さんは別の人に相談があると言っていた半分仕事モードだし、と自分に言い聞かせていたが、稔は押しに弱いと言う教授の言葉が、頭の中を渦巻いていた。 一度は恋人として付き合っていた元カレに迫られたら、ひょっとしてなんてことがないとも限らない。何しろ相手はセフレでもあり、稔さんはどうやらセックスが好きみたいなのだから。それに、稔さんにその気が無かったとしても、あの細い身体では抵抗するのも難しいだろう。 帰って来るのが元カレだと言ってもらえなかったことも含めて、心配で心配で仕事が手につかず、上司に大目玉を食らった。 夜になって、アパートの自室でコンビニ弁当を肴にビールをちびちび飲んでいたが、落ち着かない気分でさっぱり酔えなかった。テレビのクイズ番組も、毎週楽しみに観ているものだが、全然入ってこない。僕は2本目のビールを飲み干し、缶を潰すと腰を上げた。

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