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第23話
酔った勢いで大学まで来たものの、さすがにあまり関係ない集まりに顔をだすわけにもいかない。稔さんもきっと怒るだろう。モヤモヤイライラしながら、研究室の入り口辺りをウロウロしていると、教授が出て来た。
「おう!小田切!来ちゃったのか」
ニヤニヤしながら近づいて来る教授は、だいぶ酔っているようだ。一緒に出て来た4、5人の院生らしき人たちの中に稔さんはいなかった。
「秋川さんはどこです?」
僕の声が不穏な色を帯びたのか、教授がゴホンと咳払いして言った。
「稔なら、木原君と話があるみたいで、研究室に行った」
「木原って誰ですか?秋川さんの仕事の相手ですか?」
「いや?木原君は今日の主役…」
僕は教授を押しのけて、建物の中に飛び込んだ。
3階まで階段を一気に駆け上がり、研究室まで走った。
稔さんがあいつに何かされるんじゃ、と思うと生きた心地がしなかった。無事でいて、と泣きそうな気分になりながら走って研究室にたどり着き、ドアノブを握ると鍵がかかっていた。灯りがついているし、中には明らかに人の気配がする。揉めているようで、ガタンと音がした。過去、目撃したシーンが蘇り、僕は血の気が引くのを感じた。
「みっ、稔さん⁉︎大丈夫ですか⁉︎ここっ、開けてください!」
ドアノブをガチャガチャしながらドアを叩き、稔さんに大声で呼びかけた。中でドサッと音がして、静かになった。嫌な想像ばかりが頭の中を渦巻いて、僕はほとんどパニックになってドアを叩いた。
「稔さんっ…」
「うるさいっ!」
ドアを開けたのは、少し髪が乱れ、息を切らした稔さんだった。
「だ、大丈夫ですか?」
僕は彼を抱きしめた。
「なんで来てるの」
稔さんが呆れた声を出した。彼を抱く腕に力を入れながら部屋を見回すと、机の陰に人が倒れていた。
「あれって⁉︎やつはどうしたんですか?」
「俺に抱きついて来たから、体落としをかましてやったら気絶したみたい」
「稔さんが⁉︎」
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