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第25話
「いや…あの、稔さん、前にもなんか押し倒されてたし…」
「俺が好きでもない男とでも、迫られたらやっちゃうって思ったんだ」
僕の鼻先にくっつかんばかりに顔を近づけて言った。僕は稔さんから目をそらしながら、しどろもどろに言い訳した。
「きょ、教授に、押しに弱いタイプだと言われてたし、前にあいつに迫られてた時、稔さん細いから抵抗も出来なさそうで、もう少しで落とされそうになってるように見えたし、ぼ、僕が迫った時も最初はイヤがってたのに、すぐに諦めたみたいに僕に抱かれて…」
「それは…」
「稔さんは僕のこと、あんまり関心ないんだ。そっちから連絡してくれることほとんどないし、僕を好きでいてくれてるとは思えないけど、でもセックスするのは好きでしょう⁉︎だから元カレとしたくなっても不思議じゃないと…」
話しているうちに興奮してきて、言うつもりのなかったことまで言ってしまって、僕が我に帰ったとき、稔さんは僕をじっと見ていた。言いすぎたと思って青くなった僕の顔を両手で挟んで言った。
「俺は、好きでもないやつに無理矢理やられるほど弱くない。俺がセックスしたとしたら、それは相手が好きだからだ。あいつと付き合っているときは、あいつが好きだった。だからセックスした。あいつはそうは思ってないみたいだけど。あいつを好きじゃなくなったから別れたし、セックスもしないんだ。君が気にしているあの時も、君が来なかったら俺があいつを殴ってたよ。君はお姫様を守るナイトのつもりみたいだけど、俺はか弱い姫じゃない」
「あ…あの…僕のことは」
「あの時、君とセックスしたのは君が好きだったからだ。何度も会って、食事をして、君は人付き合いの苦手な俺との間をゆっくり詰めてきてくれた。だから、最後くらいは少し性急でも仕方ないと思ったんだ。そうじゃなかったら、君も投げ飛ばして帰ってたよ。」
「稔さん…」
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