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第4話

『第4話 絆の痕跡と甘やかな誓い』 やわらかな月光が差し込むルナの2階、凱の自室。 ベッドに横たわる奏太の寝顔はとても穏やかだった。 『神聖力』をはじめて解き放った反動で深い眠りに落ちた奏太を、凱は愛おしそうに見つめ、その濡れた前髪をそっと払う。 「……私のために、これほどの力を……」 膝をつき、眠る奏太の手をそっと包み込む。 奏太を守るはずの自分が、かえって彼に救われてしまった。その愛おしさと申し訳なさが胸いっぱいに広がり、凱は奏太の甲に静かに唇を寄せた。 自室の救急箱を取り出し、ゼルーガの『死の剣』によって深く切り裂かれた左腕の傷を手当する。包帯を巻き終えたところで、ベッドの上で小さな身じろぎが跳ねた。 「……ん……っ、凱……さん……?」 「奏太……! 気づいたかい? 気分はどうだね」 そっと寄り添う凱の姿を認識した瞬間、奏太の目がハッと見開かれた。 身体を起こそうとしながら、奏太が真っ先に手を伸ばしたのは、凱の負傷した左腕だった。 「凱さん! 傷……傷は大丈夫ですか!? 僕のせいで、ひどい怪我を……っ」 「落ち着きなさい、奏太。手当はもう済んだ。……怪我なら大したことはない。それより君は……身体に痛むところはないかい?」 自分自身の疲労や不安など一切顧みず、開口一番に自分を案じる奏太。 凱の胸の奥がぎゅっと締めつけられる。 「僕は大丈夫です。ただ、少し頭がポカポカして……。それより、あの時……凱さんが血を流したのを見て、頭の中が真っ白になって……絶対に凱さんを守らなきゃって……」 懸命に言葉を紡ぐ奏太の瞳に、ポロポロと大きな涙が溢れ出した。 「泣かないでおくれ、奏太。君が無事でいてくれた……それだけで私には十分すぎるんだ」 凱はたまらず奏太の細い肩を抱き寄せ、その体温を確かめるように強く抱きしめた。 奏太もまた、凱の背中に回した手にキュッと力を込める。 「……怖かった。凱さんがいなくなっちゃうかと思って、すごく……怖かったんです」 「どこにも行かないよ。私はずっと、君の側にいる」 凱はそっと身体を離すと、奏太の頬を包み込み、流れる涙を親指で優しく拭った。 見つめ合う二人の距離が、自然と縮まっていく。 「奏太……」 「凱さん……っ」 重ねられた唇は、驚くほど温かく、そして甘かった。 互いの呼吸を感じ合いながら、何度も深く、確かめ合うように口づけを交わす。 神聖なる力に守られた奏太の温もりが、凱の魔力を、そして傷ついた心まで優しく包み込んで癒やしていく。 「あたたかい……。君の存在そのものが、私にとっての救いだ」 「僕も……凱さんの腕の中が、一番安心します……」 耳まで真っ赤にしながら照れる奏太の額に、凱はもう一度愛おしそうに Kiss を落とした。 ◇ 奏太が再び心地よい眠りに落ちた深夜。 部屋を抜け出した凱は、通信用の水晶鏡の前に立っていた。 蒼い光が揺らめき、鏡の向こうに父であり魔王であるディルと、兄サイの姿が映し出される。 『凱か。ゼルーガの気配が消えたようだが……無事か?』 「ええ。ゼルーガの誤解は解け、撤退させました。ただ……奏太の中に眠っていた『神聖力』が覚醒しました」 凱の言葉に、鏡の向こうでディルが深く息を吐き、静かに頷いた。 『……ついに目覚めたか。竜神の血が……』 「父上。ゼルーガの背後に、他に怪しい動きはありませんか? 奏太の存在を嗅ぎつける者が、他にもいるのではないかと懸念しています」 凱の鋭い問いかけに、ディルは表情を曇らせた。 『……実を言えば、魔界の過激派たちが動きを見せ始めている。彼らは神界最強の竜神の血筋が生きていることを『新たな神魔戦争の引き金』と捉え、脅威に感じているのだ。戦争の再発を阻止するという大義名分の下、奏太の存在そのものを抹消しようと目論む者がいる』 『おいおい、勝手なこと抜かしやがって……! 奏太は俺たちの家族だぞ!』 サイが拳を握りしめて怒りを露わにする。凱の瞳にも、静かながら恐ろしいほどの漆黒の魔気が宿った。 「過激派だろうと何だろうと……奏太に指一本触れさせはしない。私の命にかえても、彼を守り抜きます」 『頼んだぞ、凱。奏太を頼めるのは、お前しかいない』 通信が切れ、静寂が戻った部屋で、凱は奏太の眠るベッドへと視線を向けた。 世界が彼を拒もうと、どんな敵が襲いかかろうと関係ない。 自分たちの奇跡的な波長が重なり合ったあの日から、自分の命も心も、すべては奏太だけのものなのだから——。 「おやすみ、私の愛しい妃……」 凱はそっと奏太の手を握り直し、静かな誓いを胸に刻むのだった。

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