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第3話
異界の旅人<プラネース>は銀髪という特徴的な髪色以外に、豊富な知恵と稀有なスキルを天から恵まれて希にこの世界に現れるという。
そのスキルは様々で、魔物からのみ採取可能な【核】を利用しこの世界の生活豊かにしたのも異界の旅人<プラネース>だと言われている。
持ちうるスキルによっては国を亡ぼすことも容易いと伝えられていて、彼らは総じて知能が高く危険であるため国は保護し、敵に回らないように手厚く扱うという決まりなのだ。
そして佐藤静臣は――
<鑑定>
という稀有なスキルを持っていた。
鑑定士が存在しない訳ではないが、大都市に1人居るかもしれない少なさで主に【核】の鑑定や魔物やそこから採れる素材など未知の物や植物を鑑定し、総じて国に使えている。それに加えて他世界の知識を持っているだけでも脅威となりうる。
そのため彼という存在を広めない為に城から出さないように、と命が下った。
国のためと、彼を守るために。
しかし彼は穏やかそうな見た目と違って会話をするはぐらかされたりすることも多く掴めないことが多い。
悪意があるのかないのかも全くわからないのだ。
顔や口調に騙されてはいけないだろう。
まだ信用は出来ない。そう思っている頃にちょっとした問題が起こった。
『あっ、サトー様』
責務の途中、書類を運ぶために移動していたところ扉の向こうから声が漏れていた。
サトー? シズの事か。何かあったのかと足を止める。
『ん……ぁ』
この掠れたような声は何をしているのかすぐにわかってしまう艶声だ。
確かこの時間は歴史を学びたいといって数日前から教師を呼んでいたはず。
ガタガタと物音も聞こえてきた。
誰とどう関係をもってもらってもいいが、周りの者に聞かれると流石に王家が保護している対象としては美しくない。
「何をしている」
扉を合図もなしに声をかけながら開くと、予想通り教師が仰向けに机に乗っており、開いた足の間にシズが入っていた。
「シャルル様っ!」
教師が長い髪を乱しながら慌ててシズを押しのけ乱れた着衣を正しながら離れる。
「やだなぁ、ノックくらいしてよ」
行為に対して悪い事をしている概念がない様子でへらりとした顔で文句を言われた。
「学んでいたのでは?」
「んー……先生が魅力的だったから?」
仕方ないよね、とでも言いたげに両肩を上下させた。
折角要望に応えてやったのに少し腹が立つ。
「廊下に声が漏れていた。城内では気を付けてくれ」
はぁーい、とゆるい返事を聞いた後、部屋を後にし責務に戻る。
人の性に関して文句を言う事は出来ない。
何せ上級階級になるほどストレスも多いのか、暇なのか、性に関して積極的になる輩も多いのだ。
私も含めて、だが。
書類を渡し終えた後執務室へ戻り、ソファに座り一息つくためにメイドに紅茶を入れてもらう。琥珀色を一口飲むと先ほどの光景が頭に浮かんだ。
同じ人間なのだから性欲くらいあるだろうが、こう……神聖化しているわけではないが、気軽に体を重ねるような性格だとは思いもよらなかった。しかもあの者とは初対面だったはず。なんというか……いや、人の性癖に口を出してはいけないな。
数日後。
書類の確認が一段落し、息抜きに窓を開けると微かに艶っぽい声が聞こえてくる。
確か、数刻前に剣技の訓練がみたいと言ってなかっただろうか。
私の執務室からほど訓練場は近い。
「シズ!」
訓練場の扉は開け放たれていて、扉に両腕をついて下肢を剝き出しにして腰を突き出している訓練生と思しき青年とその体を後ろから抱えているシズがいた。
「し、シャルル殿下っ!!」
青年は私の姿を確認すると即座にシズから離れて行ったが、下げていたズボンに足を取られ数歩動いたところで転倒した。
「あーもう少しだったのになぁ」
あーあ、萎えちゃったとはだけている服を正す。
「気を付けてくれと言っただろう?」
「えー? だって可愛かったし」
可愛いだけで手を出すのか? 警戒心がないのか? 訓練生とはいえ返り討ちに遭う可能性もあるのだぞ。これは厳しくしないといけない人間なのでは。それとも異界の人間はみんなこれが普通とでも?
なんにせよ、風紀が乱れるのはよろしくない事だ。
王家が保護しているとはいえ、発見した私が一任されている。
このままでは私の自由すら危うくなる可能性もある。
「城内では行為を禁止する」
「えー。素敵な人がたくさんいるのに放っておくの?」
シズは貞操観念という物が欠如しているのだろうか。
ちらりと視線を奥に向けると、先ほど転倒した訓練生は慌てながら着衣を整えているが、シズは先ほどまで手を出していたにも関わらず興味を失った様子で、気にしていないようだ。
「ああ、放っておけ」
「僕って街に行ってもいいの?」
こうして話が変わるのは癖なのだろうか。度々起こる。
「許可を得られればな」
「お願いしてすぐに貰えれるの?」
こてんと首を傾げて見上げてくる。
シズは私より少し身長が低いため目を合わそうとすると見上げる事になるのだ。
「国王陛下はお忙しい方だからすぐとはいかないだろうが……」
「……そっかあ」
返事と共に視線を流した。先ほどまで行為に及んでいたからかほんのりと頬が色づいていて艶めかしい表情に見える。
困ったなぁ、と言いながらも口元は緩んでいて表情からは困っているようになど見えなかった。
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