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第11話
そしてシズは【魔の森】がどれほど危険なのか伝えたが、彼は行くと言って聞かなかった。
シャルルが必ず守ってくれるから、とそればかりだ。
私の強さなど知りえないはずなのにどうして守れると信じられるのだろうか。
何故、私にそこまで信頼を寄せられるんだ。
いざ準備をしようと兄上の部屋を出たところで早足に向かってくるジャン兄上と出会う。
「オーギュスト兄上の様子はどうだ!」
「……余りよくありません」
「そうか!」
「【魔の森】へ出かけてきます」
「そ、そうか? 行ってこい!」
そう言って扉の向こうへ消えていく。何故だろうか、ジャン兄上の態度に違和感を感じる。実の兄が大変だと言うのに遅い登場なのも気になる。
兄上を陥れようとしている怪しい者がいないか信頼できる近衛騎士に調査を頼み、数日分の食糧や水、必要な品を詰め込み準備を終えると愛刀を手に即座に馬車に乗った。
御者は信頼のおける手慣れた者を選び、シズと共に城を後にした。
そうして途中のガイアスの街で必要な品を補充して【魔の森】へと到着すると入り口に御者と馬車を残してシズと二人、森へ入って行った。
御者は待っている間に帰るための準備をガイアスで先に整えてもらう手筈だ
今日は生憎天候も悪く、鬱蒼とした森の中は暗い。
基本的に植物や物は触れなくともスキルを発動すれば(見える)そうだ。
シズは周りに生えている雑草を見て回っている。
魔物が近づいてくればすぐさま応戦出来るように気を張っておかなければ。
「雑草たくさんだね……すぐに見つかるといいけど……今のところハズレばっかりだ」
「やはり、森の奥へ行くしかないか……問題ないか?」
「守ってくれるんでしょー?」
危険だとなんだと言った返事には毎回こうだ。無条件に信頼しすぎではないだろうか。
人の通れる道から外れ所謂獣道へと足を踏み入れる。草をかき分ける音で魔物が寄ってくるのではないかと剣を何時でも抜けるようにグリップに手を添える。
案の定、それはやってきた。
「シズ! 動くな!」
「……ん?」
シズが状況を把握する前に馬車のような体躯をもった魔物が草をかき分けて向かってきているのが見えた。
すぐさま双剣抜き戦闘態勢を取る。
あの大きさでは力は恐らく負けてしまうだろう。ならば相手の力を利用すればいい。
「突進したら止まれないんだってー」
背後から緊張感のない声が聞こえてきたが、助かる情報だ。
その情報通りに走ってくる魔物にこちらからも向かって行き衝突する寸前で軸をずらし相手の過ぎ去る力で剣を振るった。
まずは足――
狙い通りに足を刃が切り裂き、自身の勢いで魔物は砂埃をあげて転倒した。
その隙に背後から首を狙って飛び込み双剣を交差させ魔物のうなじに食い込ませる。
ガキン、と骨に当たった感触が腕に伝わるが、力をさらに込め左右の手を勢いよく引き抜いた。
首は落としきれずに薄皮一枚で繋がっていて血が流れ生々しい肉と骨が見えていた。
「うわ、えっぐ……」
シズが言葉を発した瞬間に倒れた魔物は霧となって消えた。
「助かった。冒険者ではないから魔物の情報には疎くてな」
「おー……消えた。ファンタジー……あ、これもしかして【核】?」
魔物のいた場所には赤黒い【核】が落ちていてシズが拾っていた。
「ああ」
「もらっていい?」
「構わない」
魔法屋でもよく見る【核】だ。私の眼には珍しくないが彼にとっては宝物に見えるのかもしれないな。
そうして時折出会う魔物を倒し、【核】はシズが全て回収していたが、肝心なギネル草が見つからない。
太陽も傾き始めている。夜の【魔の森】で一夜過ごすなど自殺行為に等しいほどに危険だ。
それだけは避けなければならない。焦りたくないが焦ってしまう。
「んー…君邪魔だなー。見えないよ」
つぶやいていたシズを見ると何やらいつの間にか手に分厚い本を持っている。
と思ったら腕を振りかざして、何かを本で叩きつけた。
「……シズ? 凄い音がしたが……」
「かわいそうだけど仕方ないね」
私の眼にはシズの前には魔物がいたように見えたんだが……少し大きめの虫だったのだろうか?
いや……その、足元にあるのは【核】では……?
「あー! あったよー」
信じられないものをみたような気がして脳の処理が追い付かず惚けてしまっていたところでシズの嬉しそうな声が聞こえた。
「沢山生えてるよ。まとめて摘んで帰ろー」
「採りつくすんじゃないぞ」
わかってるって、といいながら根も千切れないように丁寧に土を掘り返して抜いていた。
【魔の森】入り口まで急ぎ戻ると御者が手を叩いて帰還を喜び、馬を走らせた。
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