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第15話
『シャルル。お金頂戴?』
『欲しいものがあったのか』
『うん、綺麗だから飾っておきたくて』
『珍しいな。何に使うのだ?』
『滅多に手に入らないんだって。高いけど、いい?』
手に入れたときは嬉しそうに宝物を手に入れた少年のように笑っていた。結局何に使うのか聞けないままだったが……。
――そうだ、あの時の【核】か……!!
「……見覚えがある」
魔法屋での出来事を思い出すと、寝台に力なく横たわる彼と比較してしまい、胸が締め付けられるように痛くなる。
壊れ物を扱うように優しく頬を撫でると、握っていた手を離して立ち上がった。
「シズが購入していた【核】だ」
アメリアとアーバン爺に彼を頼むと伝えた後にすぐさまシズの寝室を抜け隣の応接間へ向かった。
【魔の森】で拾い集めたものを床にまで広げている。片付けている途中か、それとも飾ってるつもりなのだろうか。
兎に角、紫の【核】を探さねばならない。
扉の前を守る近衛騎士やメイドと共に散らばる色とりどりの【核】から紫色を目指して視線を動かした。
数が多く、それがあれば彼が助かるという希望で早く見つけなければと焦ってしまい、見つけた時にはさほど動いていないのに息が上がってしまっていた。
「アーバン爺! これで相違ないか?」
床に散らばっていた中からようやく見つけ出した【核】を見せる。
「おお! これじゃこれじゃ! よく持っとったのう!」
「シャルル! お手柄ですわ!!」
アーバン爺へ【核】を渡すと今にも命が消えてしまいそうなシズの口元へと持っていく。
そして聞いた事のない詠唱を唱え始めた。
――すべての精霊たちよ 我が声に力を貸したもう
――魔力を分け与え 力を我が手に宿る代償へと……
年齢を重ねた方のしゃがれた声での詠唱は実際にはそれほどかからなかっただろうが、長く五分ほどかかったように感じた。詠唱を続けている爺の額に汗が浮かび声も更に掠れ始める。
私とアメリアはただ祈るように見守っていた。
助かってくれと、ただそれだけを願って。
そして、その時が来た。
詠唱が終わると額から黒い靄のようなものがふわりと【核】に吸い込まれていったのだ。
「ふぅ……これで終わりじゃ」
「もう、大丈夫なんだな!?」
「おじいさま、ありがとうございました」
アーバン爺が寝台から離れると入れ替わりにシズの傍へと寄り、手を取った。
まだ冷えている……。
「暫くは目を覚まさんかもしれんが、死ぬことはなかろう」
疲れたのう、と一仕事終えた元宮廷魔術師はメイドを呼びお茶を要求しもうすべきことはないと、隣室へ移動した。
「私も、オーギュストを見てまいりますわ」
シズをお願いしますわね、とアメリアが退出をした。
アメリアには兄上の事もあるというのに申し訳ない気持ちと、いつも助けられていて頼りになる妃だと感謝しかない。
幼いころから我らが男三兄弟をよく窘めていた頼もしさは大人になっても変わらないものだ。
残された私は、シズの手を両手で握り熱を移すように擦った。
まだ目を開けそうな気配はなく、眠っている。
ただ、その顔は先ほどまでの蒼白ではなく徐々に血色が戻ってきているようだった。
それがひどく嬉しい。握る手にも温もりが戻ってきているようにも思える。
「……ぅ……ん……」
「シズ?」
小さな声が聞こえて名を呼んで見たが目を覚ますことはなかった。
どれ程の時間が経っただろうか。
未だ目覚めぬ事に心を痛めている中でオーギュスト兄上が目覚めたとの吉報が入った。
シズから離れるのは嫌だったが、メイドに任せ後ろ髪引く思いで部屋を後にする。
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