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第16話
「兄上」
「ああ、すまないシャルル」
「無理はなさらぬよう」
目が覚めたばかりだと言うのに私の姿を見た途端寝台から起き上がろうとしていて、少しふらついた身体をアメリアと共に支えて寝台に腰を降ろすように促した。
「犯人の目処は」
「……申し訳ありません」
「そうか……いや、私を助ける為に異界の旅人と共に翻弄してくれたのだと聞いている。まずは礼を言わないとな」
「当たり前の事をしただけに過ぎません」
そう言うな、と兄上は笑みを浮かべ、隣にいたアメリアも同じように微笑んだ、
何も証拠は掴めておらず、兄上の話を聞くことにしたがアメリアから聞いていた通り、倒れる前日や当日に何も変わったことなどなかった。
シズの目覚めを待ったとしても同じ状況かもしれない。
であれば犯人探しよりも何を使って呪いをかけたのかを調べる方が早そうだ。
「そういえば……徐々に体が重くなっていたな」
毎日ゆっくり重くなっていったそうだ。
ではれば通常は毒を微量に飲ませられていた事が考えられるが、受けていたのは呪いだ。
その線はないだろう。
ならば、毎日傍にある物、あるいは者……まさか【核】か?
「アメリア、アーバン爺に聞きたいことがある。呼んできてくれるか?」
「……わかりましたわ」
ほどなくするとアメリアがアーバン爺を連れてやってきた。
私は立ち上がって食い気味に尋ねた。
「人を呪える【核】はあるのか?」
「おお、あるぞい。そうじゃな……異界の旅人<プラネース>の小僧なんぞはそうじゃろうて」
なん……だと?
「そうじゃなければ【核】で吸い込む事はできんでな」
「……では兄上の場合はどうだ」
爺の狡猾さは知っていたが、こんな時に出さなくてもいいではないか。
わかってたなら最初から教えてくれたらいいものを……!
「そうさなあ……徐々に悪くなった事を考えると魔法が怪しいのぅ」
このクソジ……アーバン爺、他にも知ってるんじゃないのか!? それとも私たちを試しているのか?
「……おじいさま、いい加減にしてくださいまし」
アメリアまで笑顔で怒り始めたではないか。
「おおおお、アメリア可愛い孫よ。そんなツンケンしてはいかんぞ」
「おじいさま!!」
「アメリア、そこまでだ。アーバン、我らは知識不足だ。知ってる事を教えてくれぬか」
手を握り拳を作って怒っているアメリアを夫のオーギュストが窘めている。
昔からアメリアが怒ると兄上が宥めていたが、婚姻した今も変わらないようだな。
仕方ないのう、と蓄えていないのに髭を触るような仕草をしている。
「……これは仮定として聞くがよい。【核】に呪いの魔法を閉じ込めたとなると毒霧のように徐々にその体に浸透させていくことが可能になる。この辺りは魔法が専門のオーギュスト殿下も存じておるはずじゃ。そして【核】自体が呪いを持っていた場合は【核】を使って取り除く事が多い。例外はあるがの」
「つまり、今回は別々の方法で狙われたということだな?」
「仮の話じゃよ?」
仮ではなく正解を教示してもらっている気がするのだが……しかしそれでは……。
「方法が分かれば相手も特定しやすいと思ったが、これでは誰もが可能ではないのか?」
「そうじゃ。【核】があれば誰でも出来るのう」
「……なら、そう……呪いの毒魔法を【核】に注入した人物を探すところからだな。魔法の事だ。私に任せてくれ、呪い系の魔法を使えるものは限られているからその線を探れば見つかるだろう」
魔法の専門家の兄上にそのことはお任せしたいが、体調が万全ではない今、無理はあまりさせられないが……アメリアを見るとお任せください、と言わんばかりに頷いていた。
アメリアが見ているならそう無茶もさせないだろう。では【核】の方はどうしたものか。
魔法屋……いや、ギルドに当たってみるか?
しかしシズから離れるのは……いや、いかん。私が動かなければ誰が動くと言うのだ。
彼の呪いは去った。だから大丈夫なはずだ。
優先すべきは一刻も早く王族を陥れようとしている人物を探し出すことだ。
そう自分に言い聞かせた――
まだ眠るシズの頬に手を添えて体温を確かめると、額に落ちる前髪を指で掬いのけて顕になったそこに口付けを落とした。
「行ってくる。大人しくしているんだぞ」
何故、そのような行動をしたのか……否、そうしたかったからだ……聞こえていないのは承知しているが言いたかった。これも、そうしたかったからだ。
そうして夜遊びをしている時のように平民の恰好をしてギルドへ足を向けた。
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