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第21話
そうして夜会当日――
「シャルル様! お待ちしておりましたわ」
いつもよりお洒落をしている姿は可愛らしいと思うのだが……
彼女との会話を当たり障りない程度に流していると、私を見つけた貴族たちが顔を見せにやってくる。
「おお、殿下。お久しぶりでございます」
「相変わらず素敵ですわねぇ」
「御健勝であらせましたか」
私を囲んで口々に話始めるが、一度に何人も相手するのは疲れるので辞めていただきたい。
適当にあしらいながら参加者を伺う。
グラント家の者は……いた。
「グラント公爵」
「これは殿下。お久しゅうございますな」
「ああ。早速なのだがジャン兄上の事で少し……」
「聞き及んでおりますぞ」
「貴殿のお抱えの魔術師も、と聞いたが」
「ええ、はい。一体どこへ行ったのやら困っておりまして」
会話をしながら公爵の顔色を伺うと額に薄っすらと汗が滲んでいるのが見え違和感を感じた。
揺さ振りをかけてみるか。
「ジャン兄上と共にいるのではないかという噂があるのだがご存じだろうか」
「は!? い、いえ……私は聞いた事がございません」
そういえば呼ばれておりましたので、失礼致しますと、会話を終えてそそくさと去っていく。
王子の私より優先するような事があるとでもいうのか。あからさまに怪しいではないか。
しかし情報は得れたな。
グラント家が匿ってる可能性も出てきた。
これ以上は望めないかもしれんな。
関係がありそうな貴族たちと会話をしてみたが、やはり思った通り何も得られなかった。
であれば、あとは……。
「なんですって!?」
夜会の主催者リミッツ公爵令嬢に婚約者候補から外れてもらう旨を伝えると案の定発狂し、公爵は顔を手で覆った。
「シャルル殿下。娘が粗相でも致しましたか」
「そういう訳ではない。立派なご令嬢だと思っている」
「で、では婚約者に格上げという事ですの!?」
「君を愛してくれる男性を見つけてほしい」
私が分からないというのにその言葉を口にするのか。滑稽だな。
「私はシャルル様を愛していますのに!!」
「生憎私がそう思えない。では後日正式な書類を送る」
これ以上の会話は不要だと感じた私は、失礼する、と項垂れる公爵と呆然としたご令嬢の二人の前からだけでなく夜会からも離れて城へ戻った。
その足でオーギュスト兄上の部屋へ伺ったがお休みになられているというので、手紙にしたためて朝一にメイドから渡すように頼んでおく。
翌日兄上と話し、改めて失踪した魔術師と一致してることを確認した。
後日漸く情報屋から連絡が来た。
やはりグラント家が関係していて、匿っているとのこと。
現在は場所を特定しているところだという。
有能な情報屋だ。正しければ報酬が高くつきそうだがそれに見合う働き具合だ。
その頃、元シズの部屋から【核】が見つかる。
忘れ物かと思っていたが、寝具の底に隠すように貼り付けてあったため、これが呪いの【核】だろうという事だった。
シズの居場所も兵が見つけたという。
我が街クレールではなくレギアの街にいた。
日数はかかるが迎えに行かねばならないと思い逸る気持ちを抑えられずにすぐさま向かった。
路地の奥にある目立たない建物が居場所だという。
数か月前から鑑定屋として営んでいるそうだ。
こんな暗いところに住んでいるのか。
「いらっしゃ……」
扉を開けるとそこには待ち望んだ顔があり心が躍った。
「やっと見つけた」
「どうしたのー?」
ああ、懐かしい声だ。
髪が伸びたな。
黙って居なくなったというのに変わらない口調だ。
半年会ってなかったというのに。
手を伸ばして触れたい。
「どうしたじゃない!何故逃げた!」
「……何しに来たの」
この返事のようで返事ではないやりとりも懐かしい。
だが、声が少し硬くなった。
「当然連れ戻しにだ」
「なんで?」
「保護対象が離れていてどうするんだ!」
珍しくシズの表情が悪い方へ変わった。眉を顰めて目を伏せたのだ。
「……帰って」
「君も帰るんだ」
「嫌だね」
柔らかい声はもう硬く棘を含んでしまっている。こちらを見ようとしない。こんな彼は初めてだ。
だが、ようやく見つけたのだ。連れて帰りたい。
「シズ……! 約束を果たしたい!」
「……約束してたっけ?」
「最後まで抱くという約束だ!」
「あー……シャルルがそんなんだったら守ってもらわなくていいよ」
「シズ!」
そう言って店の奥へ消えてしまう。引き留めようと名を呼ぶも戻ってくることはなかった。
いつも別れ際にいうじゃあね、という言葉もなかった。
諦められない。やっと見つけたんだ。やっと顔を見れたんだ。
往復の時間から考えてこの街に留まれる日数は3日。
毎日会いに行った。
けれど顔を見るなり姿を消したり、客が居れば私など居ないように扱った。当然話しかけても振り向きもしない。
仮にも王子に対してその態度は流石に不敬ではないかと怒鳴りたいが、言った所で状況は酷くなるばかりだろう。無理やり捕まえて連れて帰ろうか……。
しかしそれを実行できず初日以外会話をすることなく期限は来てしまい、諦めたくはなかったが城へ帰る事になった。
そして帰りの馬車の中でふと気づく。
もしかして記憶が戻っているのではないのかと――
記憶が戻っていない状態ならもっと理由を聞くはずではないか?
保護対象という話は目覚めてから一度もしたことがない。
それとも他の者に聞いたのだろうか。
しかも約束を誰に言ったのか疑問に思っていないようだった。
では何故私を否定する?
何か間違ったのだろうか。
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