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第22話

「ほんっとうにお馬鹿さんですわね、貴方!」  城へ帰り状況を兄上とその妃に話すと怒られた。  何故だ。 「ああ……我が弟よ兄は悲しいぞ」  兄上まで一体なんだというのだ。 「頑なでしたので……」 「お前が保護対象などいうからであろう」 「事実ですが」  二人そろってため息を吐き出した。  何なんだ。私が何かしたのか?  事実を伝えて問題があったのだろうか。  疑問は残るが、不在の間に情報屋から居場所を掴んだとの連絡が入っていた。  急ぎ兵を立てその場所へ急行する。  町はずれにあるグラント家の別荘。  思ったよりも近い場所に二人はいた。  見つかったジャン兄上は父王の元で釈明をしていたが、当然実の兄であり次期国王及び国の保護対象である異界の旅人<プラネース>殺害未遂の罪で離島へと島流しという国外追放の刑に処す事となる。王族でなければ死罪は免れぬほどの重罪であるが陛下の恩情により免れた。  魔術師は手助けをした罪で生涯牢での生活を余儀なくされた。  グラント家は爵位を剥奪。取り壊しとなった。グラント公爵は関わっていた事により魔術師と同じく牢での生活が待っている。ジャン兄上の許嫁だったご令嬢は何も知らなかったようだが、公爵から平民へとなり生活の違いに苦痛を感じているそうだ。  またシズの部屋に【核】を設置したのはメイドで、癒し効果のあるお香のような物と説明されたようで罪自体は軽く解雇のみとなった。  ジャン兄上が犯行に至った理由なのだが、特出した才能がない自身の方が平等に物事を見る事が出来る故に王に相応しい。王になれば将来妃になる許嫁にもっと贅沢で華やかな人生を送って欲しいと思っていた。その為にはオーギュスト兄上に居なくなってもらうしかない。シズに迫っていたのは鑑定のスキルを手にすれば陛下が認めてくれると思ったから、というあらましだった。  非常に浅はかだ。  オーギュスト兄上曰く、弟たちは愛し方がどうして間違っているのだと嘆いていた。  “たち“とはどういうことだ。犯罪に手を染めたジャン兄上と同列に扱われたくないのだが。  ともあれ、事件は全て解決し情報屋には報酬を渡し城お抱えとして働かないかと打診してみたが一蹴された。主人はいらないという事だった。  それから王族と貴族が関わっていため後処理が非常に複雑で時間を要してしまっている。  城を長く開ける事も出来ず、シズに会いに行けていない。  その事も相まって精神的な疲労も溜まり、久方ぶりに夜の街へ出かける事にした。  思えば八か月、いやそれ以上か色々ありすぎてそれどころではなかったな。  久しぶりに羽を伸ばすとしよう。人と体を重ねればきっと気持ちを晴れるだろう。  ――そう思っていたのだが。  いつも通り飲み屋で寄ってきた者を観察し誘い、誘われいざ事に及んでみたが、髪に触れて肌を撫ぜて、声を聴き囁かれ体を揺さぶって果てたとしても全てが違うと、彼と比べてしまっている自分に気付いた。  髪はもっと細く触れると指の間から流れていくほどさらさらとしていて、肌に触れると非常に馴染みが良く、声は柔らかいのに官能的に聞こえて、体中に口付けたいと思う衝動が沸き上がるのに、と。  ただ一度だけ体を重ねたというのに、その一度だけの欲望が拭い切れなかった。  そして心の奥から胸を痛めるような切ない感情が沸き上がってくる。  会いたい。  話をしたい。  髪に触れたい  抱きしめたい。  声を聴きたい。  名を呼んで欲しい。  笑顔が見たい。  ――ああ、そうか。これが愛しいと、愛というのだろうか。  暫く留守にする旨を皆に伝え、責務を限界まで片付ける前に、保留していた他に異界の旅人<プラネース>が存在する可能性だけ伝えてレギアへ向かった。  鑑定屋の扉の前で深呼吸をする。  ちゃんと気持ちを伝えないといけないと。  扉を開けると、シズの少し驚いた顔。それは一瞬ですぐに無表情に変わってしまった。 「また来たの?」  ああ、もしかしてこれは怒っているのだろうか。 「シズ! 君と婚姻を結びたいと思っている」 「婚……!?」  思いを伝えようと口を開くと出た言葉が私自身でも思っていなかった言葉で驚いた。  そうか、それほどにまで私はシズの事を――  彼は動揺しているようで、驚きに口を開けたまま瞬きを繰り返している。珍しくて笑ってしまう。 「ふふ、君もそんな顔をするのだな」 「……飛躍しすぎ」 「それで?」 「……合格。それはわかんないけど一緒にいてあげる」  照れ隠しなのか視線を伏せて少し拗ねたような言い方だったが、耳が赤くなっていたのが見えそれが可愛くて嬉しくて、私たちを隔てるカウンターを乗り越えた。王族にあるまじき上品さを欠けた振る舞いだ。 「シズ……会いたかった」  手を伸ばして腕の中に抱きしめる。  ああ、この感触だ。  シズは黙って抱きしめ返してくれた。  そして首元に鼻先を猫のように押し付けてくる。  合図のように。

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