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第2話
最悪だ——。
この半年間、桐江から頼りにされ、仕事ぶりも褒めてくれていた。食事に誘ってくれることもあった。
桐江との話はいつでも楽しくて、時間を忘れてしまうほどだった。あまりに話が盛り上がり、終電を逃した雪乃が桐江の社宅に泊まらせてもらったこともあっほどだ。
勿論、二人の関係は健全そのもの。
桐江には雪乃の恋愛対象が男だとも打ち明けていない。それでも雪乃は密かに桐江との時間を楽しみにしていたのは確かである。
恋愛感情などは関係なく桐江は素敵な人だ。
その桐江に、性癖だけではなくセックスもつまらないと知られてしまったことに、相当なショックを受けている。
チームリーダーの桐江のことを、篠塚が良い目で見ていないのには気付いていた。人当たりも良く、仕事もできる桐江は、チームだけではなく部署全体の士気を上げていたし、一番の戦力になっていた。
篠塚はそれが気に入らないのだ。
桐江に懐いている雪乃の態度も癪に障ったのだろう。
桐江から来てからは、普段に増して仕事を押し付けてはサボっていた。
それでも彼が梢に手を出したのは雪乃への当てつけでもなんでもなく、単純に彼の浮気性によるものだ。
篠塚と雪乃が恋人という関係になってから一年と少し経つが、楽しかったのは最初だけで篠塚は常にいろんな人と遊んでいた。
男女問わず手を出すのはタチが悪いとしか言いようがないが、選ぶ相手は“直ぐにヤレそうな人”という共通点がある。
梢にしても、いかにも篠塚が好きそうなタイプだ。男受けの良さそうなピンクの艶のあるリップに、長い睫毛を強調しながら上目遣いに篠塚を見詰める。ねっとりと甘える語尾に雪乃は身震いしてしまうが、篠塚には効いている。
対して梢から雪乃への接し方は実にそっけなく常に上から目線だ。要するに、梢も篠塚を狙っていて、雪乃を敵対視しているのだ。
「ちょっと昼からミーティングに出る」
そう言っては梢と共に姿を消す。ミーティングの予定など入っていないことくらい、雪乃だって知っている。
桐江がいないタイミングを狙っているとしか思えなかった。篠塚は雪乃が逆らえないと知っていて、自分に割り当てられた仕事を押し付けてはやりたい放題遊んできた。
どこで何をしているかなど雪乃には知りようもないが、「分かりました」と言うしかない。
そのうち、終業後も篠塚は梢と過ごす日が増えていった。関係性は明白であった。
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