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第4話

 桐江と二人きりになった倉庫は気不味い空気が流れている。なんと話しかけて良いのか戸惑っていると、桐江は何事もなかったかのように資料探しを再開した。  篠塚たちの処分については自分に任せろと言うことか。雪乃も黙々と仕事を再開する。  目的の資料を纏めると、段ボールを棚に戻し倉庫から出ようとした。  桐江に背中を向けた時「いつから気付いていた?」と、背後から質問をぶつけられる。 「え……?」振り返ると、桐江は真剣な面持ちでこちらを見ていた。 「あいつらの関係、知ってたんだろう?」 「……はい……なんとなく、確信があったわけではないのですが」 「嘘だ。俺が篠塚に頼んだ仕事は君がしていただろう。見れば分かる。じゃあその間、あいつらは何をしていた?」 「それは……」  答えられず、黙り込む。 「すまない、宇井くんを怒っているんじゃない。実は前からあいつらのことは疑っていたんだ」 「それは……いつからですか?」 「こっちへ来て二ヶ月くらい過ぎてから、やけにあのコンビで動くようになっただろう? まぁ、梢は本社でも尻軽で有名だけどな。既婚者にも構わず手を出すから問題になっていた。今回の出張で成果を上げなければ解雇だと陰で決まっている。篠塚の存在は、梢には毒だったな」  桐江は雪乃が篠塚の恋人だと言う話題は避け、梢に対しての本社の意図を打ち明けた。  手を止め、また足許に視線を落とす。桐江は篠塚の言葉を聞いていないわけでも忘れているわけでもない。  きっと雪乃を気遣って口に出さないだけだ。  それが余計に恥ずかしくて、ここから逃げ出して一人になりたかった。あと数秒後には自分は泣いてしまう。  これ以上情けない姿を桐江に見られたくなかった。  下唇を噛み締める。あと一時間もすれば退勤時間だ。なんとか、それまでは……。  資料を握り締めるが、不意に桐江の腕が伸びてきた。  隣から雪乃の頭を抱え込むように引き寄せ、自分の肩に凭れさせる。 「……今、誰もいないから」  泣け……。そう言うように頭を撫でられる。 「う……っっ」  みるみる視界が滲んでいき、俯いたまま抱えた資料のファイルに大粒の涙が落ちていく。  桐江は雪乃の震える肩を力いっぱい掴み、対峙させると真正面から抱きしめてくれた。  雪乃よりずっと背の高い桐江の腕の中に、すっぽりと包み込まれる。  温かい。こんなに安心できる場所は初めてだ。  ごめんなさい。今だけは、甘えさせてください。  口には出せないが、桐江のシャツを握りしめ、声を押し殺して泣いた。

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