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第20話
雪乃は一人で立ちれなくて、全て桐江が介抱してくれる。至れり尽くせりな時間は贅沢だと思った。
流石にベッドはもう使えないので、桐江に膝枕をしてもらいソファーに横になる。
「何か食べる?」と聞いてくれたけど、食欲はない。
雪乃の体力が戻るまで、二人でまったりと過ごす。
「新幹線、何時ですか?」
「夕方だから、気にしなくていい。荷物も纏めてあるし」
「見送りに行きたいですけど……」
「気持ちだけ貰っておくよ。週末の間に、ゆっくり体を休めて。だいぶ無理をさせたからね」
「僕が望んでしてもらったので。嬉しかったです」
「俺もだよ」
帰るのが名残り惜しい。
出張が延びればいいのに……なんて子供みたいに駄々を捏ねるわけにはいかない。
桐江は本社に帰るとまた仕事が沢山あるだろうし、雪乃も来週からはレセプションパーティーに向けての最終調整がある。
桐江も参加してくれるのかと期待していたけど、別の仕事の関係で出席できないのだそうだ。
次にいつ会えるかも分からないし、そもそも会える保証もない。
雪乃は横たわったまま抱きつき、桐江の腹に顔を埋める。
「一緒に仕事ができて、楽しかったです。大変だった時もありましたけど、でも、全部がいい思い出です。それに、生きてきた中で一番最高の誕生日になりました。ありがとうございます」
お礼を伝えられるか心配だったが、素直に言葉にできて安堵した。帰らないでなんて縋って困らせるような、みっともない真似はしたくなかったから。
桐江もこの半年の思い出を振り返りながら話してくれた。こんな他愛ない時間も終わってしまう。
桐江は最後にツーショットの写真を撮ってくれた。
喘ぎすぎて、啼きすぎてボロボロの雪乃なのに、可愛いと写真を見入る。
「仕事もモチベーションにする」と言ってくれたのが嬉しかった。
駅まで一緒に歩き、そこでそれぞれの電車へと乗り込んだ。振り返ると止まってしまいそうだったけど、振り返らずにはいられない。
桐江は雪乃の姿が見えなくなるまで見送ろうとしていたらしく、同じ場所に立っていた。
感極まって泣いてしまいそうになりながらも、大きく手を振り笑顔を送れた自分を褒めてやりたい。
「桐江さん、また!!」
未来があると願い、さようならとは言わないでおいた。
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