13 / 27
第13章 契約初夜 **
荷物を置いた部屋は、思っていたより静かだった。
和真のマンションは広くて、無駄がない。家具は最低限で、派手な飾りはどこにもない。悠麻はこれから一緒に使う寝室のベッドの端に腰を下ろし、自分の荷物を見下ろした。
和真が部屋に入ってくる。シャツの袖をまくり上げたまま、悠麻のほうを見た。
「おいで」
声は優しかった。命令というより、ただの呼びかけに近い。悠麻は立ち上がり、ベッドのそばへ寄る。
「契約は今日からだよ」
悠麻は少しだけ息を飲んだ。分かっていた。金を出してもらう代わりに、身体も預ける。店を残すための条件だ。
「分かってる。俺、はじめてじゃないから」
和真の手が止まった。
「……はじめてじゃない」
「うん。経験はあるよ」
「そう」
短い返事だった。表情はほとんど変わらない。けれど、目の奥がわずかに冷える。悠麻は気づいた。言わなければよかったのかもしれない、と思った瞬間、和真が小さく笑った。
「経験あるなら大丈夫だよね」
優しく、でも逃がさない声だった。
悠麻が服を脱ぎ始めると、和真は自分のベッドに上がり、仰向けに横たわった。腰元だけを寛げ、悠麻を見上げる。
「お尻こっちに向けて。上に乗って」
言われた通りにする。和真の上にまたがる形になり、顔が下を向く。硬くなったものが目の前にあった。
悠麻は一瞬、動きを止めた。経験がないわけではない。それでも、さすがに大きいと思った。熱を持った匂いが鼻先をかすめ、思わず息を詰めた。
「舐めて」
悠麻は唇を近づける。経験があるといっても、これまで自分から相手に何かをしたことはほとんどない。求められるまま身体を預けて、それで終わることが多かった。
どうすればいいのか分からないまま、手を添えて舌を伸ばす。動きは浅く、リズムも安定しない。和真はそれを少しの間、黙って受け入れていた。
「下手だね」
感想のように言われた。責めているというより、事実を述べているだけだ。
「……ごめん」
「謝らなくていい。もっとこうやって。根本から舌でなぞって、先は吸う。歯を当てない」
悠麻は言われた通りに動く。大きくて熱いものを口いっぱいに含み、ゆっくりと舌でなぞった。先を優しく吸い上げると、ぴちゃぴちゃと水音が小さく響く。口内の熱く湿った粘膜が、和真の巨根を丁寧に包み込んでいく。
それでもうまくいかない。深さもリズムも安定せず、時折歯が当たりそうになる。
和真が小さく息を吐き、次に悠麻のものを手に取った。
「お手本、見せる」
和真の口が、悠麻のものを含んだ。根元から先端まで丁寧に舌が動き、強く吸われる。腰が勝手に浮く。
和真は悠麻の反応をじっと見ながら、震えた瞬間の場所を逃さず、そこだけを執拗に舌で転がし、吸った。悠麻の腰が跳ねるたび、和馬は同じところへ戻ってくる。一度見つけた反応を確かめるように、二度、三度と繰り返す。
そのたびに身体が勝手に答えてしまうのが、ひどく恥ずかしかった。
悠麻は自分の行為を忘れ、腰を和真のほうへ押し付けてしまった。
「んっ……」
和真が口を離す。
「ちゃんと俺のも舐めて」
低い声だった。
同時に、指が後ろへ伸びる。ローションをしっかりつけた指が、ゆっくりと入ってくる。一本。探るように動き始める。
悠麻は慌てて再び口を動かす。必死に舌を動かしながら、奥を探られる感覚に耐える。
指が角度を変え、圧を変え、しばらくしてある一点を押した瞬間、身体が大きく跳ねた。
「あっ……! そこ……!」
「ここ?」
そう尋ねながら和真の太く長い指が執拗にその場所を刺激し始める。指は一本のまま、何度も同じ場所を擦る。
「んっ、あっ……だめ、そこばっかり……」
「自分で経験あるって言ったんでしょ。なら、これくらい平気だよね」
悠麻の口から涎が垂れる。そそり立つ肉棒から口を離し、必死に腰を引こうとする。
和真はもう一方の腕で腰を押さえ、指の動きをさらに速めた。
「逃げちゃだめだよ」
らに激しく、同じ場所を擦り続ける。
悠麻の腰ががくがくと震え、視界が白く霞んだ。シーツを掴んだ指の下で、皺が軋む。
もう、自分が息をしているのか、喘いでいるのかさえわからない。喉から零れ続ける乱れた音だけが、やけに近い。
「出る……あああ……っ!」
射精した。
強烈な快感の中で、精液が和馬の胸へ飛び散った。
「ぁ……っ、あ……」
身体がびくびくと痙攣する。射精した途端、腰からすっかり力が抜け、支えていられなくなった悠麻の身体が、そのまま和馬の上へぺたりと崩れ落ちた。
萎えきらない陰茎が、白く汚れた和馬の胸へ張りつく。余韻を引きずるように、そこだけが小さくひく、ひくと脈打っていた。
頭側も同じように沈み込み、気づけば悠麻は和馬の股間へ頬を寄せるような格好になっている。けれど、もう姿勢を直すだけの力すら残っていない。
それなのに、和馬の指だけは止まらなかった。
射精を終えた身体がまだ細かく震えている、その奥を、何度も、何度も同じように擦られる。
「っ……ぁ、ま……って……」
声にもならない息が漏れる。
逃げようにも腰は和馬の上に投げ出されたまま動かない。ただ刺激されるたび、力の抜けた尻が微かに跳ねる。
終わったはずなのに。
身体だけが、まだ終わらせてもらえなかった。
「はあ……はあ……待って、もう……」
「まだ」
指が止まらない。敏感になった奥を執拗に刺激され、悠麻の腰がまた跳ねる。
「出たばかりなのに、まだこんなに締めつけてる」
「久世さん、待っ……そこ、変な……」
「前立腺気持ちいい?」
「知らな……い、こんなの……」
「経験あるのに?」
嫉妬が、ほんの少しだけ混じっていた。
悠麻は答えられなかった。これまでの相手は、ここまで丁寧に、執拗に攻めてこなかった。ただ入れられて、終わっていた。気持ちいいというより、終わらせるための行為だった。
今は違う。
指が的確に動き続ける。奥が熱くなり、下腹部が締めつけられる。射精の感覚とは明らかに違う波が、徐々に大きくなっていく。
和真が起き上がり、悠麻を仰向けに倒す。まだ敏感なものを、片手で掴む。
「半年間、ひとりでするのは禁止だから」
指がゆっくり上下する。
「最後に、いっぱい出しとこうね」
根元から優しくしごき上げ、先端を掌で転がし、時折強く擦る。悠麻のものがすぐに硬さを取り戻す。先ほどの射精の余韻が残っているのに、容赦なく刺激が続く。
「待って、さっき出たばかりで……」
「知ってる。」
和真の手が加速する。もう一方の手は、悠麻の乳首に触れた。軽く摘まむ。まだくすぐったいくらいの感覚しかない。快感というより、微かな刺激。
和真はそこを長く弄らず、すぐに下へ戻る。
「出る……また……」
「いいよ」
二度目の射精。
精液が腹に飛び、量が少ないのに腰が強く跳ねる。和真は止まらない。濡れたままの手でさらに擦り続ける。
「やっ…もう無理ぃ」
「無理? でも下は、まだ出したそうにしてるよ」
指が再び後ろへ入り、前立腺を押したまま手コキを続ける。
「出るまで、止めないから」
悠麻の視界がまた白くなる。
今度は精液ではなく、透明なものが勢いよく噴き出した。潮吹き。身体が弓なりに反り、声にならない声が漏れる。太ももを伝って、透明な雫がゆっくりとシーツへ落ちていく。
「はあ……っ、久世さん……もう……」
和真が体位を変えた。
悠麻の足を開かせ、自分を導く。正常位。ゆっくりと沈めていく。先ほどの指で十分に開かれているので、痛みはほとんどない。
奥まで入ったところで、和真が一度止まった。
「大丈夫?」
「……うん」
「動くよ」
腰が動き始める。深く、ゆっくり。前立腺を擦る角度を意識しているのが分かる。
悠麻の手が和真の背中に回る。和真の指が再び胸へ伸び、乳首を軽く摘まんだ。くすぐったいはずなのに、腰が勝手に動く。 下ばかりが執拗に刺激される。
「んっ……あっ……」
「気持ちいい?」
「……うん」
和真の動きが徐々に速くなる。悠麻の中を抉るように突き上げ、毎回同じ場所を狙う。
連続で射精したあとの身体は敏感で、すぐに限界が近づく。結合部からぬるぬると水音が漏れ、和真の息が耳元で熱い。
「出る……また……」
「いいよ。何回でも」
四度目の射精。
もうほとんど何も出ず、腰だけががくがくと無様に跳ね続ける。
和真は止まらない。その痙攣する腰を強い力で掴み、逃げられないように押さえ込んだまま、悠麻の前立腺を深く抉るように突き上げ、空になった先端を執拗に擦り上げた。
「まだ出るでしょ」
「もう……何も……出ない……」
それでも指と腰の動きは続く。蜜口がひくひくと痙攣し、透明な雫だけがぽたり、ぽたりと落ちていく。
「ほら、出てるじゃない。嘘つき」
五度目。
ほとんど空撃ちだ。精液はもう出ない。それでも身体はびくびくと震え、後穴がひくひくと収縮を繰り返す。
そのたびに、中に詰まった和真の熱と太さを否応なく再確認させられる。頭の中が真っ白になるどころか、思考そのものが途切れて、ただ熱だけが残る。
「……くっ」
和真が低く息を吐きながら、深く沈めたまま腰をゆっくりと動かした。
悠麻の痙攣などおかまいなしに、なおも前立腺を執拗に擦り続ける。熱いものが一気に広がる感覚に、悠麻は小さく身を震わせ、喉の奥で掠れた声を漏らす。
「ひっ……く……もう、許して……っ」
「……出すよ」
静かな部屋に、濡れたいやらしい音と、二人の荒い息だけが響く。
和真がゆっくりと自身の肉棒を引き抜く。
ぬぽ、と音がして、空になった穴から熱い雫がとろりと溢れ、太ももを伝ってシーツに落ちた。何も出ないのに、悠麻の先っぽの小さな穴はまだひくひくと淫らに開閉を繰り返していた。
「ユウ」
「ん……」
「半年間、よろしく」
経験ならあった。
けれど、ここまで快楽に飲み込まれた夜は、初めてだった。
ともだちにシェアしよう!

