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第15章 我慢 **

風呂から上がり、髪を拭きながらリビングへ戻る。 和真はソファに座っていた。 仕事はもう終えたらしく、ノートパソコンも片づけられている。 悠麻に気づいて、顔を上げた。 「ユウ」 「ん?」 和真が自分の膝を軽く叩いた。 「おいで」 悠麻はその手元を見た。 昨夜も、同じ言葉を聞いた。 ――おいで。 ああ。今日もまた始まるのか。 悠麻はタオルを首に掛けたまま、和真のほうへ歩いていった。 「服、脱いで」 言われた通りにシャツを脱ぐ。下も。裸になった悠麻を、和真はしばらく眺めてから、自分の膝の上に引き寄せた。 背中を胸に預けさせ、悠麻の両膝を開かせる。和真の脚が内側からその太腿を押し広げ、閉じられないように固定した。逃げようと腰を引いても、その動きは和真の胸へ自分の背を押しつけるだけになる。濡れた髪から、同じシャンプーの匂いが立ちのぼる。和真の吐息が耳の後ろで湿り、ソファの革が太腿の裏にひんやりと貼りついた。 「昨日より、少し慣れた?」 「……分かんない」 「そう」 和真の手が胸へ伸びる。指先が乳首に触れた。くすぐったさの奥に、すでに熱が混ざっている。触れただけで腰が勝手に動き、開かれた腿のあいだから和真の股へ尻を押しつけてしまった。悠麻本人は、その動きに気づいていない。 摘む。離す。指の腹で転がす。爪の先で軽く引っ掻く。熱くなった先端に息を吹きかけ、冷えたところでまた摘まむ。同じ場所なのに、刺激の質が変わるたび、腰が小さく跳ねた。 「ん……くすぐったい」 「そう」 和真は慌てて強くしない。指の腹でゆっくり転がし、時折つまむ。くすぐったさが、徐々に別の熱に変わり始める。 「変な……感じ」 「変?」 「くすぐったいだけじゃ……ない」 「ふうん」 和真の手が下り、昨夜さんざんもてあそばれて、少し赤く腫れている先に触れた。触れた瞬間、悠麻は大きく肩を震わせる。けれどローションをたっぷり含ませた掌が優しく根元から先端まで滑ると、あっという間に硬く膨らんだ。先から透明なものが溢れているのに、悠麻はまだ自分で我慢できているつもりだった。 「あっ……」 「力、抜いて」 言われた通りにする。胸を弄られ、次に先を握られ、また胸へ戻り、そのあとでようやく後ろへ指が伸びる。ローションが腿の内側を伝い、冷たい筋が一つ、ソファまで落ちる。 指が奥を探り、すぐに昨日見つけた場所を押した。 「んっ……!」 前立腺を擦られる感覚が、昨日よりはっきりしている。腰がわずかに浮く。その動きでは、開かれた腿のあいだで和真の膨らみを尻で押し潰すだけだった。悠麻は、その密着に気づいていない。 「出そう……」 「まだ」 指が止まった。 代わりに胸への愛撫が強くなる。両方の乳首を同時に摘まみ、軽く引っ張る。くすぐったさと、微かな熱が混ざる。 「待って……そこ、変……」 「逃げないで」 悠麻が無意識に腰を引こうとすると、後退した体は和真の胸にいっそう密着する。逃げたつもりが、預けてしまっている。同じシャンプーの匂いが、二人の体温のあいだで濃くなる 膝の上では、もうこれ以上腰を引ける場所がない。開かれた腿は和真の脚に阻まれ、行き場をなくした手が、助けを求めるように和真の後頭部へ回った。 指が髪のあいだへ入り込み、縋るようにきゅっと握る。 逃れようとしていたはずなのに、いつの間にか自分から和真を抱き寄せるような格好になっていた。 「気持ちいい?」 「久世さん……」 「大丈夫。痛くはないでしょ」 指が再び先を握り、ゆっくりしごいたかと思うと、すぐ胸へ戻る。乳首が熱を帯びてきたところで、奥の一点を擦り始めた。同じ場所を、角度だけ変えて何度も往復する。  熱が少しずつ溜まっていく。胸を摘まれた拍子に先が跳ね、先を撫でられた拍子に奥が締まり、奥を擦られた拍子に腰が浮く。どこか一箇所ではなく、全部が同じ方向へ引き寄せられていく。呼吸が浅くなり、逃がす場所がなくなっていく。 一度目。 「出る……!」 その瞬間、指がすっと抜ける。胸だけを摘ままれ、熱が逃げていく。溜まった快感の行き場が無くなり、腰がわずかに浮き、ほんの少し落ちた。先がわずかに萎えかけ、またすぐに膨らみ直す。そのあいだ、和真は動かない。悠麻の呼吸が落ち着くのを、ただ待っている。  指がまた動き出す。今度は急がない。落ち着いた呼吸の隙間から、奥を浅く擦り、先を軽くなぞり、熱を帯びた胸の先端を指の腹で転がす。一度目より高い位置から、同じ熱がもう一度積み上がっていく。腿の内側がひくりとし、先走りが糸を引き始める。声にならない吐息だけが、和真の鎖骨に当たった。 二度目。 腰が震え、先端から透明なものが糸を引く。 「まだ」 和真の声は低く、優しい。それでも、決定的な場所への刺激だけは止められてしまった。乳首を爪で軽く引っ掻かれ、悠麻は小さく喘いだ。声が出ていることにも、先から糸を引いていることにも、本人は気づいていない。腰の動きは一度目よりはっきりして、浅く上下する。そのたびに尻が、物欲しげに和真の股間へ擦り寄る。媚びるように当たっては離れ、また当たる。硬くなった先が先走りをたらして小さく揺れた。後ろへ回した手が、和真の後頭部をさらに強く掴む。 三度目。 「もう……限界……」 「もうちょっと我慢しような」 前立腺を深く押し込まれたまま、動かされない。悠麻の呼吸だけが乱れる。腰の上下が早くなり、和真の股に尻を擦りつけるような、みじめな懇願になっていく。 和真の指の腹が、先の小さな穴をなぞった。ヌチャっといやらしい音がする。熱い雫が指先に絡み、糸を引いて落ちる。悠麻はそこで初めて、自分がどれほど濡れているかを知る。意識が追いつくより先に、そこはすでにぐちょぐちょだった。 四度目。 「んあっ……また……」  指が止まり、胸への刺激だけが残る。それでも悠麻の腰は止まらなかった。続きをねだるように浅く何度も突き上げ、触れるもののない空間へ虚しく身体を押し出し続ける。物欲しげに先走りをまき散らしながらのその行為はひどく煽情的だったが、悠麻には自分がどれほどあさましい格好を晒しているのか、考える余裕すらなかった。 何度も寸止めされる。胸の感覚が、くすぐったいだけのものから、熱を持ったものへ変わり始めている。先端を爪で軽く引っ掻かれただけで、熱が走った。 悠麻の股間が硬く勃起し、先端から透明なものが滲む。我慢出来なくなり自分の手を伸ばして触ろうとした瞬間、和真に気づかれた。 「だめ」 首にかけていたタオルが外される。あっという間に両手首を後ろで縛られた。きつくはないが、解けない。腕を後ろで拘束されたせいで、余計に胸を張る姿勢になる。 「……これ、恥ずかしい」 「恥ずかしい?」 和真が悠麻の耳元で、小さく笑った。 「いい恰好だよ。胸、尖って触ってほしいって言ってる」 「久世さん……」 「半年間、俺の言うこと聞くって言ったよね」 和真の声は優しかった。それでも指は止まらない。拘束された腕のせいで逃げ場がなく、胸を突き出したまま乳首を摘ままれ、前立腺を擦られる。 「んあっ……だめ、もう……」 「まだ出していいって、言ってないよ」 「むり……もう……」 悠麻は和真の膝の上で身を捩った。 逃げたいわけではない。ただ、じっとしていられない。開かれた腿を閉じようとしても、内側から和真の脚に阻まれる。腰を浮かせようとすれば、そのたびに背中が和真の胸を擦った。 五度目。 もう一度、中の弱いしこりを正確に押される。 「っ、あ……!」 腰がはっきりと上下し、開かれた腿のあいだで先走りを飛ばしながら悠麻のものが揺れた。 指が一点を外さない。押されるたびに太腿が痙攣し、足先までピンと伸びる。腹筋がひくついて、射精の直前の形のまま固まる。先の小さな穴がひくひくと開閉し、熱い雫を脈打つように吐き出した。声はもう言葉にならず、喉の奥で潰れる。涎が顎から落ち、胸の先端は空気に触れただけで跳ねた。腰は和真の股に張りついたまま、浅く、みじめに、止まらず擦り続ける。 身体が跳ねた。そのまま戻るはずだった腰が、戻らない。 腿からふっと力が抜けた。 「あ……」 和真の膝の上に座っていることさえできなくなり、悠麻の身体がぐらりと横へ傾く。 咄嗟に手をつこうとして、両手が使えないことを思い出した。 「わっ……」 肩からソファへ倒れ込む。 頬がクッションに触れ、遅れて腰まで横倒しになった。開かされた脚だけが和真の腿に引っかかったまま残り、上半身と下半身がちぐはぐに崩れる。 「はぁ……っ、は……」 起き上がろうと腹に力を入れる。 けれど、身体が言うことをきかない。 肘掛けがすぐ目の前にあった。もう横へずれる余地もない。 和真は助け起こさなかった。 乱れた呼吸を繰り返しながら、自分の膝の上からずり落ちていった悠麻を、しばらく黙って見下ろしている。 「もう座ってられない?」 「……うるさい」 「昨日より弱くなってない?」 「誰のせいだよ……」 掠れた声で言い返す。 それでも身体は起こせない。 和真がゆっくり身を乗り出した。 「じゃあ、そのままでいいよ」 悠麻がじりじりとソファの上を後ろへ逃げ始める。腰を引き、膝で探るように動く。 和真はそれを止めない。わざとらしく指の動きを緩め、悠麻が少しずつ距離を取るのを見つめている。 ソファの端まで来た。肘掛けに後頭部がぶつかる。これ以上、後ろへは逃げられない。 「もう逃げられないね」 和真が身を乗り出し、拘束された悠麻の上に覆いかぶさるようにした。右の乳首を強くつまむ。同時に前立腺を深く、正確に押した。 「出していいって、言ってないのに」 悠麻の腰が大きく跳ね、射精した。精液が自分の腹に飛び、身体が痙攣する。指はすぐに抜かれず、余韻の間も優しく内側を刺激し続けた。 「はあ……はあ……」 「勝手に出したね」 和真が耳元で、まだねちっこく囁く。 「後でお仕置きね」 「……分かった」 「いい子」 和真がゆっくりと指を抜き、悠麻の体をソファの上で反転させ、背中向きにさせる。腰を掴まれ、背中を少し丸めさせられる。バック。すでに十分ほぐされているところへ、ゆっくりと沈めてきた。 「んっ……深い……」 「まだ全部入ってないよ」 「……っ…」 動き始める。深く、ゆっくりと。前立腺を擦る角度を意識しているのが分かる。太いものが奥を押し広げ、一点を執拗に擦る。根元までは沈まない。入りきらない残りが、外で熱を持ったまま控えている。角度だけを変えて、同じ場所を何度も往復する。 拘束されたまま、胸がソファの生地に押しつけられる。突き上げられるたびに乳首が粗い布目を擦り、くすぐったさの奥から、熱い快感が滲んだ。時折和真の手が回ってきて、その擦れた先を摘まむ。 「あっ……そこ……」 「布に擦れてるだけなのに、こんなに硬くなってる」 「……んっ、だめ、摘まないで……」 腰の動きが徐々に速くなる。悠麻の中を抉るように突き上げ、毎回同じ場所を狙う。連続で寸止めされたあとの身体は敏感で、すぐに限界が近づく。 和真の指が胸へ戻り、熱を持った先端をカリカリと爪先を立てて細かく擦る。悠麻から嬌声が漏れた。腰が勝手に後ろへ食い込み、太いものを奥へ迎え入れてしまう。 「出る……また……」 「今度は、一緒に」 和真が深く沈めたまま、悠麻のものを握った。数回擦っただけで、二度目の射精が来る。同時に、和真も奥で脈打つ。熱いものが広がる感覚に、悠麻は小さく身を震わせた。 和真がゆっくりと抜け、タオルの結び目を解いた。悠麻の手首に薄い跡が残っている。 「痛くない?」 「……大丈夫」 「よかった」 力の尽きた悠麻を、和真があおむけに寝かせる。自分では腕も腿も動かせない。射精したあとの先の小さな穴が、まだひくひくと開閉しているのを見る。乳首は冷えても立ったままだ。開かれた腿は、支えを外してもすぐには閉じない。視線さえうまく合わせられないまま、和真に見られている。和真は、その余韻をしばらく眺めてから、小さな箱を取り出した。 中から出てきたのは、銀色のカフス型の器具だった。 「これ、つけようね」 「……何それ」 「さっき我慢できなかったお仕置き」 そのまま箱から取り出し、悠麻の股間に当てる。丁寧に悠麻のものを収め、カチ、と音を立ててロックした。鍵は和真が握ったまま、ポケットへしまう。 「排泄はできるから、安心して」 それだけ言って、和真は悠麻の額に軽く触れた。 リビングから寝室までの短い距離を、悠麻は和真の肩に顔を預けたまま運ばれていく。 ベッドに下ろされる。冷たい金属が股間に食い込み、シーツの感触が背中に広がる。和真が薄い掛けをかけ、乱れた髪を一度だけ整えた。 「おやすみ、ユウ」 「……おやすみ、久世さん」 悠麻は自分の股間に装着された感触を確かめるように、指先だけを動かした。冷たい金属が肌に馴染んでいく。 契約二日目の夜が、静かに終わった。

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