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第28章 クイズ
テレビから、軽快な効果音が流れた。
夕食を終えてから、二人ともソファから動いていない。
悠麻はソファの端に寄りかかってスマートフォンを眺め、和真は少し離れたところでテレビを見ていた。
画面では、芸能人たちが四択の問題に頭を悩ませている。
『それでは問題です。日本で一番大きな湖はどこでしょう?』
「琵琶湖」
悠麻が答える。
正解の音が鳴った。
和真が横を見る。
「分かるの?」
「それくらい分かるだろ」
悠麻はスマートフォンへ視線を戻した。
『では、日本で一番長い川は?』
「利根川」
画面に『信濃川』と表示された。
「あ」
悠麻が顔を上げる。
和真は少し考えてから、悠麻のほうへ身体を向けた。
「罰ゲーム。キスして」
「……俺から?」
「間違えたのはユウだから」
悠麻は和真を見たあと、身体を寄せた。
短く唇を重ね、すぐに離れる。
そのままスマートフォンをテーブルへ置いた。
「次」
「本気になった?」
「なってない」
『日本で最も面積の小さい都道府県は?』
「大阪」
画面に『香川県』と表示された。
「……また外した」
悠麻は眉を寄せると、そのまま和真へ身体を寄せた。
今度は何も言われる前に、自分から唇を重ねる。
一度目より少し長く触れて、離れた。
悠麻はテレビへ向き直りかけて、ふと止まる。
「でもこれ、俺だけ損じゃない?」
「何が?」
「間違えたら罰ゲームあるのに、正解しても何もないじゃん」
「ご褒美が欲しいの?」
「そりゃ、ないと割に合わないだろ」
「何がいい?」
「何でもいいの?」
「いいよ」
悠麻がすぐに振り返る。
「言ったな! じゃあ、正解したら久世さんからキスな」
和真が一瞬黙った。
「……そんなのでいいの?」
「そんなのって何だよ。するのとされるのじゃ全然違うだろ」
「そういうことじゃないんだけど――」
『それでは次の問題です!』
「あ、始まった」
悠麻はあっさりテレビへ向き直った。
『一円玉の素材は何でしょう?』
「アルミニウム」
正解。
「よし」
悠麻は嬉しそうに笑うと、すぐに和真へ身体を向けた。
目を閉じ、少しだけ顎を上げる。
「んっ!」
どう見てもキス待ちの顔だった。
和真は口元を緩め、その唇へキスをした。
触れて、離れる。
悠麻は満足そうに目を開けると、すぐにテレビへ向き直った。
「次」
『一時間は何秒でしょう?』
「三千六百」
正解。
悠麻はまた少し和真へ寄る。
「んっ」
和真がキスをする。
悠麻はそのまま肩が触れる距離に残った。
『春の七草の「すずしろ」とは?』
「かぶ」
『正解は、大根!』
「あ」
悠麻は眉を寄せ、そのまま和真へ顔を向けた。
今度は迷いなく自分からキスをする。
離れたところで、番組が終わり、CMに切り替わった。
「終わった」
「もう?」
悠麻は物足りなさそうに画面を見る。
「まだやりたい?」
「やる」
「じゃあ俺が出そうか。何が得意?」
「歴史」
「じゃあ簡単なのから」
和真が少し考える。
「江戸幕府を開いたのは?」
「徳川家康」
「正解」
「簡単すぎ」
そう言いながら、悠麻はきっちり目を閉じる。
「んっ」
和真が笑ってキスをした。
悠麻は目を開けると、すぐに次を促した。
「次」
「じゃあ、関ヶ原の戦いは何年?」
「一六〇〇年」
「正解」
「もうちょっと難しくしていいよ」
悠麻はまた和真へ身体を寄せ、当然のように目を閉じる。
「んっ」
二度目のキス。
離れても、悠麻は元の場所へ戻らない。
肩が触れたまま、次の問題を待つ。
「じゃあ……承久の乱。朝廷側の中心人物は?」
「後鳥羽上皇」
「正解」
「よし」
悠麻が嬉しそうに笑った。
また少し和真へ近づいて、目を閉じる。
「んっ!」
和真が唇を重ねる。
触れて、離れた。
「次」
悠麻はすっかりクイズに夢中だった。
最初は離れて座っていたはずなのに、いつの間にか肩だけでなく太腿まで和真に触れている。
和真が次の問題を考えているあいだにも、悠麻は急かすように顔を覗き込んだ。
「もっと難しくていいよ」
「難しく?」
「うん。全然余裕」
「分かった」
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