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第38章 次の話 **

「じゃあ何するんだよ」 「先に聞いたらつまらないでしょ」  指先が悠麻の唇をなぞる。 「今日はユウが誘ったんだから、最後まで付き合ってね」 「……お手柔らかに」 「それは約束できない」  和真がもう一度、悠麻の唇を塞いだ。  触れるだけの口づけを何度か繰り返すうちに、悠麻のほうから距離を詰めた。  和真のシャツを掴み、もっと、とでもいうように唇を追う。  少し前の夜とは違う。  あのときは、離れていかないでほしくて自分から誘った。  今はただ、触れたい。  和真の体温をもっと近くに感じたかった。  和真の手が背中へ回る。  服越しにゆっくり撫でられ、悠麻はその腕の中へ身体を預けた。 「外すよ」 「うん」  カチ、と小さな音がする。  悠麻は自分から和真へ腕を伸ばした。  首筋へ触れ、肩を抱き寄せる。  早く続きをしてほしい。  そう思っている自分に気づいても、もう戸惑わなかった。  空気に触れた瞬間、鈴口から透明なものがだらだらと溢れた。  先走りが茎を伝い、和真の手首まで落ちる。  和真はそれを見て、低く笑った。 「いやらしい。もうこんなに」 「……うるさい」  否定しきれない。  自分から膝を開いている。  和真の掌が根元を包むと、また一筋、涎みたいに垂れた。  和真がベッドサイドの引き出しを開ける。  いつもの箱だ。  中から一本、細身で長いブジーを取り出した。丸い玉が等間隔についている。  光らせて、悠麻の手に握らせる。 「自分で入れて」  声は優しい。  けれど、選ばせるつもりはなさそうだった。  悠麻は手元へ視線を落とし、先端へブジーをあてがった。  当たっただけなのに、腰が小さく引ける。  和真が上からローションを垂らす。  冷たい液が鈴口へ落ち、金属を伝って玉のひとつひとつを光らせる。  同じ手で、和真は自分の指にもローションを絡めた。  濡れた指が、悠麻の両乳首へ乗る。  摘まない。  爪の先で、かりかりと引っ掻く。左右同時に。  熱が走って、悠麻の腰が浮いた。 「んっ……」  浮いた拍子に、あてがっていたブジーの先端が、つぷ、と鈴口を飲み込んだ。  浅い。  それでも悠麻の手が止まった。  動かすのが怖い。  玉がひとつ入る想像だけで、指が固まる。 「どうした」  和真が耳元で笑った。  乳首から手を離さない。 「俺に押し込まれるのと、自分で入れるの、どっちがいい?」  意地悪だった。  悠麻は歯を食いしばって、自分の指に力を入れた。  自分がしたいから誘った。  途中で和真に全部預けるのは嫌だった。 「自分で、入れる……っ」  押し込む。  丸い玉がひとつ、鈴口を拡げて中へ落ちる。  体が震えた。  次の玉。  また震える。  ひとつ入るたびに、尿道が内側から形を覚えさせられる。  甘い痛みが、等間隔で奥へ進む。  半分ほど沈んだところで、和真が悠麻の手首を軽く押さえた。 「俺の声に合わせて抜き差しして。一、二。一、二」  悠麻は従おうとした。  一、で引く。  二、で沈める。  なのに、玉が粘膜に引っかかるたびに手が遅れる。  数えられているあいだに、腰が勝手に逃げる。  リズムが崩れる。 「違う。こうだよ」  和真がブジーを奪った。  悠麻の手から滑るように抜けて、次の瞬間、激しく上下する。 「一、二。一、二」  数えながら、ぐっぽりと前立腺に当たるまで沈めて、途中まで引き抜く。  また前立腺まで押し込む。  丸い膨らみが、奥の弱いところをひとつずつ乗り越えていく。  乗り越えるたびに、下腹の底がきゅっと締めつけられた。  悠麻は弓なりに背中を反らして、その快感を受け止めた。  口から声が落ちる。  考える暇がない。 「ほら。自分でやって」  また渡される。  金属は熱を持っている。  悠麻は震える指で持ち直し、和真の声に合わせた。  一、二。  一、二。  ほんの少しずつしか動かせない。  それでも、玉が前立腺をかすめるたびに腰が跳ねる。  それを見ながら、和真が悠麻の脚を開いた。  ローションをつけた自身を入口へあてがい、ゆっくり突き入れる。  正常位のまま、奥まで沈める。  中が圧迫される。  前立腺を狙っているわけではない。  なのに、和真のものが抜き差しされるたびに、腫れた核が優しく持ち上げられる。  悠麻の持っているブジーが、その動きで微妙にずれて、尿道側からも熱が溜まっていく。 「乳首と前立腺、どっち触ってほしい?」  耳元で囁かれた。  悠麻はたまらず、手元のブジーを示した。 「こっち……っ」  一生懸命、抜き差ししてみせる。  一、二、と自分で数えながら。  玉が核を越えるたびに、声が甘くなる。  和真が微笑んだ。  ベッドサイドの箱から、同じくらいの細さのブジーをもう一本取り出す。  一本入っている。  それなのに、もう一本。  悠麻は目でそれを追った。  どうするのか、和真の手元から視線が離せない。  和真はローションをたっぷり絡めて、すでに塞がっている鈴口へ、二本目を突き立てた。 「は——っ」  声にならない悲鳴だけが漏れた。  拡がる。  痛い、と口に出る前に、熱が追いつく。  二本の金属が、狭い道を擦りあう。  和真は構わず、腰をグラインドさせた。 「ほら。一、二。一、二。ユウ、手が止まってるよ」  止まっていた。  二本目が入った瞬間、指が固まった。  和真に言われて、また動かす。  一、で引く。  二、で沈める。  同じ数えで、和真のブジーが大きく抜き差しされる。  途中まで引き抜いては、また深く沈める。  狭い尿道の中で、二本がごつごつぶつかった。  和真の大きい動きに、悠麻の持っているほうも弾かれる。  浅く動かすつもりが、ぶつかった勢いで奥まで持っていかれる。 「んあっ……待っ、ぶつかって——ひあっ」  一、で両方引かれ、二、で両方沈む。  和真のものが後ろで動くたびに、金属同士がまた当たる。  当たるたびに悠麻のブジーが勝手に大きく動き、腫れた前立腺を上下から擦った。 「あああっ、だめ、動く、勝手に……っ」  声が甘く崩れる。  手が遅れても、和真の抜き差しが悠麻の棒を連れていく。  狭い道の中で、二本がこすれ合い、ぶつかるたびに腰が跳ねた。  隙間から、精液がたらたら溢れ続ける。  射精の形をしていない。  出している途中が、終わらない。  尿が通っていくときと似た、抜けていく熱。  なのに白い。  和真が小刻みに腰を使って、丁寧に同じ場所を刺激し続ける。  賢者タイムが来ない。  イったはずなのに、まだイっている。  前立腺は真っ赤に腫れたまま、当たるたびに弱い射精を繰り返した。  隙間からとろりと出て、筋を引いて止まる。  また潰されると、出しきれなかった熱がもう一筋、鈴口からゆっくり溢れた。 「出る……また、出てる……っ」  出ていない。  溢れているだけだ。  それでも感覚は、射精の途中のまま固定される。  腰がびくびく痙攣し、足の先が丸くなる。  ドライで何回も達する。  達しても、二本のブジーが道を塞いだまま、次の熱を奥から搾ってくる。 「もう降参?」  和真の声は優しかった。  腰は止めない。  一、二、と数えながら、悠麻の手の動きが遅れるたびに、自分のほうでブジーを沈めて補う。  悠麻は涙にぬれた顔を横に振った。  安心したかった夜とは違う。  今夜は、自分がしたくて開いている。  名前のつかない熱のまま、和真の数えに合わせて、震える指で金属を動かし続けた。      *  終わったあと、悠麻は和真の胸へ身体を預けた。 「疲れた?」 「誰のせいだよ」 「ユウがいいって言ったんでしょ」 「限度ってもんがあるだろ」 「途中でやめなかったくせに」 「……うるさい」  和真が笑う。  悠麻もつられて笑った。  身体は重かった。  このまま目を閉じれば、すぐにでも眠れそうだ。  それでも、気分はよかった。  楽しかった。  たぶん、それが一番近い。  何かを確かめたかったわけでも、不安を消したかったわけでもない。  自分から誘って、和真と過ごしたかった。  そして、実際に楽しかった。 「久世さん」 「何?」 「次さ」 「次?」  聞き返されて、悠麻は一瞬だけ黙った。  何の疑問もなく、その先のことを口にしていた。 「……今度は俺が決めていい?」 「いいよ」 「じゃあ、考えとく」 「怖いな」 「久世さんに言われたくない」  笑って、和真の胸へ頬をつける。  次。  今度。  そんな言葉が、ごく自然に出てくる。  契約の終わりを忘れたわけではない。  もう一か月も残っていないことだって分かっている。  それなのに、和真とのことを考えると、その先にも当たり前のように二人でいる自分を想像してしまう。  契約が終わったあとも。  次があって、今度がある。  いつからそう思うようになったのか、悠麻には分からなかった。  まだ、その理由に名前をつけることもしなかった。  ただ、次は何をしよう。  そんなことを考えながら、和真の胸元で目を閉じた。

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