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#6 虚城②

夏季は好き。 一日中陽が沈みきらないお陰で、いつだって洗濯物が乾くから。 「モフは?」 「寝とるよ」 侵食しあってまるで蠱毒のようなハーブ畑の隅。 ガゼボの中の、蔦で編まれた小さな揺り籠。 短い5本の指でアビシェラの服の端をぎゅっと掴んだまま、健やかな寝息を立てる赤ん坊。 「いつもこの姿なら背負っててあげられるのに」 「動き難いから嫌なんじゃろ」 もっちりとしたすべすべな頬と、ベルベットのような毛並みの獣耳。 普段のもこもこした姿も可愛いけれど、寝てる時のモフはまるで神聖な生き物。 そう、確かこれは。 「天使……」 「あん? 何言うとるん? あっという間にデカなって想像を超える悪さするようになるわ」 「よく知ってるね、調べたの?」 「ヒトの居住区まで散歩してきただけじゃ」 「淫魔のじゃなくて?」 「アイツ等は夏眠でおらんらしいからの」 「ふぇ……」 煩いと言わんばかりに顔を顰めたモフに、ピタリと動きの止まるオレ達。 ブンブンと頭を振ったかと思えば、案外すんなりと寝に戻ったようだ。 「オレ、今からシーツ取り込むけど……アビ達は家入ってる?」 「いやまだええわ」 コソコソと耳打ちしながら、モフのむちむちの指をそっと外してゆくアビシェラ。 掴むものがなくなってしまったその手は寂しそうに宙を舞い、ぎゅっと拳を握ったかと思えば、自らの口元へと収まった。 ちゅっちゅと動く唇が可愛い。 スルリと服の隙間から冷たい手が潜り込んできた。 「だめ、モフの前」 「ストックが底尽きるかもしれん」 「一昨日したくせに、嘘つき」 首筋を、脇腹を、脚の付け根を撫でつけながら這い回る手に、くすぐったい以上の感覚は湧き出ない。 一昨日のセックス中だったら、これだけで絶頂していたのだろうけど。 「反応薄っすいのぉ」 「今更でしょ、そんなとこ揉まないで」 「勃起するまで揉むわ」 「無理だよ……」 ふにゃふにゃのペニスを弄ったって楽しくないと思う。 オレも皮膚が引き攣れるだけで、大して良くない。 「痛くなっちゃう、離して」 あっさり解放されたのが意外だった。 けれどオレが興奮しない以上、どうにもならないので。 崩された衣類を直して、洗濯籠を片手にアビシェラから距離を取る。 「ルル、俺考えたんじゃけど」 「なに? モフに虫が寄るから蚊帳を下ろしておいてね」 先日の日光浴の際、虫に噛まれて大変なことになった。 柔肌があんなに腫れるのはもう勘弁。 今日こうしてシーツを干しているのだって、モフの安心と安全のためだ。 背伸びしてやっとピンチに手が届きそうな、丁度その時。 パチンとアビシェラが指を弾く音がした。 (蚊帳を下ろすだけなのに?) 普段はあまり力を使わないのに珍しい……と、思った途端。 「わっ」 プチッと嫌な音を立てて、ズボンの紐が千切れた。 何故か下着までも一緒にズルズルと地面にたぐまってゆく。 「なにするの」 「話の続きな、俺は食っても消化せんじゃろ?」 ふと顔を上げれば、いつの間に来たのだろう。 アビシェラが跪く俺の頭を優しく撫でる。 「アビ、」 「魔力に還元しないで圧縮したまま体内に保持してみようと思ったら、できたんよ」 しっかり頭を固定されて、こじ開けられた口に滴ってくるアビシェラの体液。 「苦い……、オレの媚薬?」 「これが最後の一瓶だったけぇ、明日は買い出し行かんとね」 目を細めて笑う彼は、心底楽しそう。 「これで何時でも何処でも、ルルの発情操作ができるって分かったなぁ」 next

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