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#8 幼馴染
「それで3日おきにしてるの? 短命族みたいだね、ウケる」
アビシェラがゆったり座れるように買った1人掛けソファに、ぎゅうぎゅうになって座るオレ達。
肩が触れそうなどころか、髪も絡まりそうな近距離。
すっかり冷え切った紅茶に唇を寄せながら、オレの幼馴染は意地悪く笑う。
「性器腫れてない? 抗炎症の軟膏作ってあげようか?」
「痛いことされてないもん」
「それは見てみないことには分からないなぁ?」
「やだ、やめてよ」
ダンッ。
調理台兼調薬台の方から大きな音がした。
振り返れば、口の先から湯気を出すティーポットを片手に、アビシェラがにっこりと笑顔を向けている。
「そんな冷めたモン飲むと身体、冷えよりますよ」
オレの首筋からほんの少しだけ顔を上げた彼、リリエリがチッと舌打ちをする。
ガラが悪い。
「悪魔じゃなくてルルの犬かな」
「意地悪しないでリリ」
「たった500年一緒にいるだけで恋人面しちゃう駄犬じゃん」
わさわさと服の隙間から差し込んだ手を這わせながら、わざと挑発するような事を言う。
最初からそうだけれど、このふたりは相性が悪い。
「一回故郷に連れてきたら? こんな独占欲強いと憤死するかもよ」
「アビは死なないから平気だよ、ねえアビ?」
「そういう事じゃなくない?」
パチン、とアビシェラの指を弾く音とともに、外されたボタンが一気に元通りに掛けられてゆく。
不思議な力を目前にして、リリエリの瞳が今日一番輝いた。
「何許しとるん、ルル」
「交尾し過ぎって心配してくれてるだけだよ」
そんな言い合いをするオレ達を尻目に、ボタンに触れたリリエリの指先が静電気のようにパチッと光る。
「ごめんね、リリ。もう、アビやめて」
「いいよ、嫉妬深いのは最初から知ってるし……ルルのどこが良いんだろうね? ちゃんと聞いた?」
「召喚したのがオレだから、死んだら困るって言ってた」
「はぁん?」
オレを押しのけて、アームレストに座るリリエリ。
「同族と一緒にいるのが一番だよ? 特にこんな得体の知れないヤツなんかより」
「いつもそれ言うね、オレはあの雰囲気苦手。アビシェラと一緒の方が居心地良いし……あ、リリは好きだけど」
「タラシが、惚気やがって」
再び手にしたカップを一気に呷りながら、オレの頭をグリグリと撫でる。
その荒々しい動作に反して、手付きが優しいのは何時ものこと。
「アビも優しいんだよ、ちゃんとオレ達を見分けられてるし」
「髪の長さも色も全然違うんだから当たり前じゃん」
「そうだけど……髪乾かすのも上手だよ? 一緒にいたらリリも好きになるよ」
右の口角だけ不自然につり上げながら、当然のように空になったカップをアビシェラに差し出すリリエリ。
アビシェラは黙ってそこに綺麗な色をした紅茶を注ぐ。
「夏季に熱い紅茶淹れるナンセンスな悪魔となんか一緒に住めないよ」
そう言ってリリエリは指先でカップの縁をゆっくりとなぞる。
そして取り出した熱を小さく丸め、オレのカップへと落とした。
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