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第2話
思ったよりあっけなく、薬は手に入った。
繁華街でふらついていると売人が向こうから近寄って、声をかけられた。
ハルシオンを一シート買った。
もしかしたらもっと量が必要なのかもしれないが、持ち合わせがなかったので仕方なく諦めた。コンビニで酒も買った。
どこにしよう、と訊いた。
「どこがいい? 蛍」
「どこでも…でも、海がいいな。できたら…」
「そうか。そうしよう」
荷物はしまい、バイクにまたがって、フルフェイスのメットをそれぞれにかぶって、一番近い海を目指した。
蛍の手が冷たかったので、手を掴んで俺の両ポケットに入れた。
蛍は俺の胴体に、そっと抱きついた。
いとおしいという感情がほとばしる、でも…もう戻れないだろう。
*****
目的地まですぐだった。
もう腹は決まっていた。
俺たちは案外、もしかするとある意味では、幸せ…なのかもしれないと思った。
星々が美しかった。
市街地からそれほど遠くないところに、あるのだ。
リセットボタン、あるいは逃げるためのトンネルのようなものが。
見上げて、すでに蛍も星を見ていることに気づいた。
「きれいだね」
「そうだな」
蛍のほうが。
それから二人でコンビニで買っておいた酒を持って、薬を分け合い、酒で飲み下すと、互いの手を握り締めて砂浜に仰向けで横たわった。
*****
前後不覚。
不思議な夢を見た。
見知らぬ僧侶が白装束に笠をかぶって、見えない顔で
「どこへ行くのですか」
と肩に触れた。
蛍も振り向いた。
「天へ…」
「そうなのですか。あなた方は覚悟の上でしょう」
「あなたのような坊さんに、背中を押されましたよ」
嫌味っぽく聴こえた、自分のセリフ。
いや、実際に嫌味を込めていたのだ。
しかし意外な返事が返ってきた。
「それは申し訳ないことをしました。この世の全ての僧を代表して、わたくしが謝罪します。申し訳ございません」
俺は狼狽した。
「いいえ...そんな、だって...もう…」
「あなた方の飲んだ薬は、致死量に足りません。助かるでしょう」
「あなたは僧侶で医者なのですか?」
「違います。しかし過去には僧だったのです。でも、わたくしには分かるのです」
俺たち、俺と蛍は見つめ合った。
俺の瞳と蛍の瞳に、迷いや希望、不安と疲労が見えた。
「もしそうだとしても、また繰り返すよ」
「うん」
蛍も同じ気持ちだった。
俺たちはまた、僧侶を見た。
「あなた方のいる、この世界を、どうかごらんなさいませ」
その時初めて、自分たちが大きな川の前にいることに気が付いた。
1km? いくらかありそうな川幅だった。
俺は有名な映画の主題歌をぼんやり思いだした。
水面 は暗く、しかし濃い水色をして光っており、遠くに簿明があるようで、彼岸もこちらの岸も、似たような同じ景色だった。
それはただ暗いのだ。
しっとりとした墨汁のように、滴るように、闇があった。光っているのはその僧侶と、俺たち、そして時々波立っては静まる川面ばかりだった。川の、輝きが変わらない。
「いまならまだ...引き返せます」
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