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第7話 巨大ネコ怪獣ギャオン、住宅街に出現!

隣り合う幼馴染みの家との間の生垣の庭を、黒猫は尻尾をしゅんと垂らしてトボトボと歩いている。 (律兄が余計なこと言うから!慎に幼馴染み離れの特訓なんて言い出されちゃったじゃん!) 思い返せば、昨夜のこと。 『このまま、ずっと猫から戻らなかったら…… ………俺が飼ってやろうか?』 そんなプロポーズみたいな台詞を聞いた直後だというのに。人間の姿に戻った諒馬に、慎が提案したのは、慎の助けを借りずに自分の力でメンタルを安定させて、猫化を解く訓練をすることだった。 (嫌だなぁ、慎の部屋に慎が居ない) 甘やかさすことが無いようにと、慎は今までは諒馬を待っていてくれた夜の時間に、あえてバイトのシフトを入れてしまったのだ。 (そこまで、することないのに!) 黒猫は青い窓枠に取り付けられた、猫用の出入口をくぐり抜け、慎の部屋へと入っていった。この出入口は、慎が小学生の頃に「諒馬が猫になったとき、いつでも俺の部屋に入れるように」と笑ってDIYで取り付けてくれた、特等席の入口だ。 窓の下には、紙製の白いスタディ模型たちが並べられている。猫の姿でここを通る時、諒馬はまるで自分が大きな怪獣になって住宅街に降り立った気分になる。 ――ギャギャギャオーン! 慎が何日もかけて制作したミニチュアの街を本当に破壊したりは、しないけどね。 ネコ怪獣ギャオンは慎の作った住宅模型を大きな黄色い目を光らせて見つめた。 つね日頃から慎を見ていると、設計には主にCADを使うけど、慎は実際に手を動かすのが一番好きみたいだ。 慎のデザインする家は、外からはプライバシーを守るように窓の取り方が少なかったり、高い塀に囲まれていたりする。けれど、その代わりに内部には、たっぷり光が降り注ぐ中庭や天窓、あるいは開口部の広い縁側が用意されている。 しっかりと守られていると同時に、内側には自由と解放感を感じさせる――そんな建物ばかりだ。 最初の荒削りなアイデアから、何度も検討が重ねられ、無駄がそぎ落とされて美しい形に収束していく様は、まるで慎の頭の中を時間旅行しているみたいだ。 黒猫は模型たちの隙間に器用に足を踏み入れ、棚の上を渡って、最後にスタンと床に降りた。 窓から差し込む淡い月の光を浴びながら、黒猫は背中を弓のようにしならせ、前足を前に投げ出して大きく伸びをした。チャームポイントであるピンク色の肉球が付いたその片方の腕を上げると、その腕が高く高く、伸びて……やがて人間の背の高さにまで形を変えていく。 しなやかな青年の姿に戻った諒馬は、首を左右に傾け、コキコキと関節を鳴らした。 慎からは、バイトから帰ってくるまでの間、少しでも自分でメンタルを落ち着かせて猫化を解く練習をしながら、部屋で待ってていいから、なんて言われたけど……。 (猫化の制御なんて、もうとっくに出来るんだよね) 諒馬は裸の素肌のまま慎のベッドに潜り込み、顔をうずめた慎の香りが残る枕に、むにゃむにゃと文句を零した。 「バカ!慎のアホタレ……!」

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