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第14話 猫好きに悪い人はいないってこと

「美味し〜いっ!」 嶋くんがメロンソーダのフロートを一口、パクリと口の中に入れて、満面の笑みを浮かべた。 それを見て、僕も手元のカップに口をつけた。そのとたん、ジャスミンティーの華やかでナチュラルな花の香りが鼻を抜けた。すっきりとした優しい味わいに、ささくれ立っていた心までスーッとほぐれていく。 「ごめんね、慎まで付いてきちゃって……。 嫌じゃなかった?」 熱々のカップを両手に包み持って僕が言うと、嶋くんはハート型の大きな葉の隙間から、古いガラス戸の向こう側へと視線を向けた。 ふれあいスペースには、今も5、6匹の猫に取り囲まれてクッションマットの上であぐらをかいている慎の姿がある。スリムなキジ猫が慎の肩に前足をかけ、甘えるようにニャァゥーンと高い声をあげた。かと思えば、別の茶トラが慎の手の甲にスリスリと額を擦りつけ愛嬌を振りまいている。 「ううん、最初は全然喋らなくて、どんな人なのかな?と思ったけど……、ただ本当に猫が好きな人だったんだね」 嶋くんはすっきりとした黒目がちな目を和ませて言った。 「無愛想で少し怖かったけど、あんなに動物に好かれるなんて………きっと良い人なんだね」 「はははは……」 と僕は力なく笑った。 いつもの慎なら、初めて会った嶋くんにもっと自分から積極的に話しかけているはずだ。 だから、慎があまり喋らないので僕もビックリした。 あれは、たぶん……。僕たちが話しやすいように、あえて一歩引いて見守ってくれている……んだよね? そんないつもと違う、気を使った優しい慎の態度を、初対面の嶋くんが知るはずもないのだった。 「ねえ、嶋くん……。僕、今日ここに誘っちゃって……迷惑じゃなかった?」 「え?」 突然の問いに、嶋くんが驚いて黒髪をさらりと揺らした。 「嶋くん、退屈じゃなかったかなって……」 「そんな事ないよ。すごく楽しいよ!」 嶋くんはテーブルの上についた両手を少し広げ、まっすぐに僕を見つめた。その黒い瞳がキラキラと輝いている。 「諒馬くんと友達になりたいなって、ずっと思ってたから。だから、誘ってもらって、本当に嬉しかったんだ」 「え……?」 「教室でだってさ……僕、諒馬くんの近くを狙って座ってたんだよ?」 「えーっ、そうなの!?」 嶋くんからのまさかの爆弾発言に、僕は思わず椅子から腰を浮かした。 「本当に?すごーい!」 僕たちは立ち上がって、テーブルを挟んで手を取り合って、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。 その時、ガラス戸の向こうで猫たちが一斉にこちらを振り返った気がした。僕らは自分たちの浮かれっぷりが急に気恥ずかしくなって顔を見合わせ、同時に吹き出した。 ひとしきり、はしゃいだらほっと一安心して、トイレに行きたくなっちゃった。 「ちょっと、お手洗い……///」 赤くなった頬を押さえて席を立つと、嶋くんがクスクスと笑う。 「お茶冷めちゃうよ?」 「うん、すぐ戻るね」 その時、慎が肩の上に乗った毛の長い白猫や、膝の上の茶トラを一匹一匹、せっせと引き剥がしては降ろしていた。だけど舞い上がった僕は視界に入れる余裕がなかったんだ。

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