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第6話 普遍的なふたり
「…俺は…」
_______ベータだ。
ああ。どうして。
その言葉を聞いた瞬間、一気に視界がモノクロになった。
秋とはいえ残暑が厳しいのに、寒い。
いや、わかっていたはずなんだ。
この世の大半がベータで、アルファやベータなんてクラスに1人いるかどうか。
僕はただの友達に、何を期待していたんだろう。
幼かった自分には、この感情が何なのか分からなかった。
今でも分からない。
僕にとってのヒーローだからか。
なぜか分からないが、晴海がアルファであると信じていた。
そうであって欲しかったんだ。
その後、塾か何かを理由に自分の性別は言わないまま無我夢中で帰った。
家に着いて、ようやく手元に握りしめられたままの封筒の存在に気がついた。
強く握り締めすぎたのだろうか。
端の方はクシャクシャ。
震える手で封を切る。
そこには予想通りの現実。
(たった1%を引くなんて)
それ以降のことは正直、覚えていない。
翌日、晴海からいつも通りに話しかけられた時も、目を合わせられなかった。
動揺を隠し通す自信がなかった。
大雑把なようで機微に聡い彼は、僕の心情の変化にもすぐに気がついたのだろう。
視線を感じることはあっても、無理に話しかけるようなことはしなかった。
それが心苦しくて、尚更元の関係には戻れない気がした。
とにかく、その頃にはもう都心の中学へ入学することは決まっていて、そのことすら言い出せないまま気まずい関係だけが続いた。
卒業式の日、ついに碌な別れの言葉すら交わせなかった。
逃げるように引越しをし、晴海とはもう二度と再開できないのだろうと覚悟していたが、ずっと当時のことを後悔するとともに、謝りたい気持ちでいっぱいだった。
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「引っ越したこと、後から知ったんだ」
晴海が目元に憂いを滲ませて言う。
当たり前だ、晴海は僕のことを少なくとも大切な友達の1人として扱ってくれていた。
そんな彼の気持ちを勝手な感情で踏み躙ってしまったのだから。
「本当にあの時はごめん。
せめて晴海には伝えるべきだったのに」
いいんだ、とでも言うように晴海が首を振る。
あの時、態度を変えてしまった理由は言わなかった。
言ってもきっと困らせてしまうだけだと分かっていたから。
会いたかった、だなんてどの口が言えたんだろう。
勝手に晴海に期待して、勝手に裏切られた気持ちになって。
どこまでも最低で幼かった自分に幻滅する。
気持ちの清算はすることができたんだ。
もうこの人に会わないほうがいい。
あの時封じ込めた気持ちが、溢れ出てまた傷つけてしまわないように。
美しい思い出のまま終えられるうちに別れよう。
「話せて良かった。そろそろ行くよ」
帰ろうとして椅子の上の鞄に手を伸ばす。
その手を晴海が掴む。
あの時とは違う、大きくて血管が浮き出た大人の手で。
「待って」
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