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第7話 俺にとっても(晴海side)
風に靡く真っ黒な髪は、陶器のような白い肌に映えていた。
見覚えのあるその姿に、思わず旧友の名前を呼んでしまう。
「風宮?」
振り返り、涼しげな瞼に伸びる長いまつ毛をゆっくりと持ち上げるその人。
見覚えのあるその顔は、当時と変わらない透き通った瞳をこちらに向けていた。
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放課後、俺たちはアイスコーヒーを飲んでいた。
向かい合わせに座る彼の名前は、風宮律月。
切れ長な瞼に覆い被さる長い睫毛、派手ではないもののツンとした綺麗な鼻、優しげに弧を描く唇。
ふと隣のテーブルから感じた視線に目をやると、女子高生たちが、芸能人かな?などとコソコソ話す声が聞こえてきた。
こんな田舎に、というより一般社会にいるのが場違いなほどの爽やか美形。
勿体無いことに、本人は無自覚なようだが。
風宮は小学校時代の親友だった。
当時の彼はその容姿のせいか、おとなしい性格と、独特の雰囲気を纏っていたせいか、なかなか近づきにくい存在だった。
誰とでも仲良くしたい!そんな博愛主義者だった小学生時代の俺でも、当初の風宮とは距離を感じていた。
でも俺には、風宮とどうしても仲良くなりたい理由があった。
本人は覚えていないかもしれないけど。
思い出に浸っていると、なんだか風宮が申し訳なさそうな顔をしていた。
(美人はどんな表情でもサマになるんだなー)
そんな馬鹿なことを考えていると、風宮が口を開く。
「あの時のこと、謝りたかった。」
あの時?ああ、アレのことか。
なんとなく心当たりがあった。
ある時を境に、やっと仲良くなれたと思っていた風宮の様子が変わってしまったこと。
原因は察していた。
彼はきっと、自身のバース性を自覚していたのだろう。
そして、それを周囲に知られたくなかった。
あの悪ノリに参加してしまった日は様子がおかしかったからだ。
自分の番が回ってこようとした途端に、足早に去って行ってしまった。
何事にも敏感になる年頃かつ、第二の性別なんてナイーブな話題だ。
気にするのも仕方がないことだろう。
それっきり、話しかけようしても、俺の顔を凝視したかと思えば、目を逸らして当たり障りのない返答をされる日々が続いた。
(俺の予想が正しければ、理由は追求するべきじゃないな)
「気にしてないよ。」
思ってもないことを言ったもんだ。
あの頃は、正直悲しかった。
「憧れの人」とようやく仲良くなれて、短い間だったけど、濃い時間を過ごした。
向こうも俺を慕ってくれていると信じて疑わなかった。
全部受け止めるから、もう一度笑いかけて欲しかった。
まだ子供だった俺にはどうにもできなくて、時が解決してくれるのを待ったが、風宮は何も言わずに転校してしまった。
そして、今。
「そろそろ行くよ。」
幼さゆえに手放してしまったあの日の後悔がまた、俺のものから去ろうとしている。
まるで、もう関わってくるなと言わんばかりに。
風宮と離れていた4年間、多くのものを諦めてきた。
夢や努力も「運命」の前では何の意味も持たないことを身をもって知った。
風宮が去って行ってしまうのも、運命なのだろうか。
このまま見送って、思い出に蓋をするのが…。
(いや、良いわけがない。)
考えつくよりも、体が先に動いた。
「待って」
「ライヌ、交換しよう」
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