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第11話 深憂

勉強会から1時間ちょっと経った頃。 ____ブー ブー。 突然晴海の鞄からバイブ音が鳴り出した。 「ごめん、親から電話。続けてて」 そう言いながら、スマホ片手に離席する。 ふと、千秋が手を止める。 先ほどのやんちゃな表情とは打って変わって、妙な表情と真面目な声色で言う。 「…なあ、アイツって昔からあんな感じだったの」 「?どういうこと?」 コソコソと喋る千秋に釣られて、つい僕も静かに喋ってしまう。 「いや…勘違いならいいんだけどさ。 大人びてるっつーより、本当の自分を抑圧してるっていうか。別に暗いわけじゃねぇよ?ノリもいいし。なんかとにかく上手く言えねぇけど」 「うん、僕も気になってた。 昔はもっと…うーん、千秋みたいだった」 「え?俺?」 千秋が素っ頓狂な顔をする。 様子を見るに、千秋も晴海の過去に何があったのかは知らないようだ。 「アイツのこと、気にかけてやってよ 幼馴染だから理解できることもあるだろうし」 目を細めて満面の笑みを浮かべるが、その笑顔はどことなく静かだ。 きっと、友人として彼なりに心配してるのだろう。 晴海、良い友人に出会ったんだな。 _________________________________ 「じゃ、俺あっちだから。 りっきー、今日はありがとねン」 千秋が大袈裟に手を振って背を向ける。 店を出ると空はすっかり真っ暗だ。 「遅いし、送ってくよ」 「え、いいよ」 「いいから」 そんな会話をして、渋々送られる。 恐らく晴海なりの気遣いだろう。 晴海は、多分僕のバース性に気がついている。 ふと千秋の言葉を思い出す。 _____アイツのこと、気にかけてやってよ。 僕だって、晴海のことを元気づけてあげたいのに。 自分の性別がそれを邪魔する。 どこまでも守られる立場であることに、無力感を覚える。 「ねえ、晴海」 「ん?」 「校外学習、覚えてる?」 「…あー、風宮が派手に溺れたやつな」 悔しいことに事実なので言い返せない。 「あの時、いやあの時だけじゃない 僕にとって晴海はずっとヒーローだった」 「…」 「今度は僕が晴海の役に立ちたい それが言いたかっただけ」 気持ちの1%だけでもいい、ちゃんと伝わってほしい。 僕だけじゃない、君の周りには君を思ってくれる人がいる。 そのことにどうか、気がついて欲しいと思うのは、お節介なのだろうか。

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