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第12話 憧憬
4月も終わりに差し掛かってきた頃、自宅で勉強していると、グループチャットに一通のメッセージが届いた。
あの日、定期的に勉強会を開くためライヌでグループを作ったのだ。
名前は「寺子屋さん風宮」。
お察しの通り、千秋が名付けたものだ。
僕は高校が違うし、あの2人も部活が違う。
「今日は何時に部活が終わりそう」「明日は行けない」そんな報連相や、他愛のない日常会話をするチャット。
『来週の土曜、不参加で』
『地区予選だっけ?ガンバ』
ああ、そうか。
帰宅部の僕には馴染みのないイベントだが、そろそろインターハイの季節か。
『応援しに行くからねダーリン♡』
『誰がダーリンだ』
『@風宮律月 ちなみに、お前も道連れな』
『それって行っていいやつ?』
晴海と千秋がいつものように戯れあっているのを眺めていると、急に名前を挙げられ焦って文字を打ち返す。
行きたいには行きたい。
しかし、ああいう行事って部外者が立ち入っていいものなのだろうか。
『良いに決まってんだろ、なあ晴海』
『...』
急に晴海のメッセージが止まる。
入力中のマークが2、30秒ほど続き、ようやく返信が届く。
『いいよ』
少し、違和感を覚えた。
悩んでいる間があったからだ。
もしかして本当は来てほしくないのか。
インターハイの予選なんて、一大行事だ。
知り合いが来たら集中力が奪われる、なんてこともあるだろう。
晴海の邪魔になることは避けたいのだが、決まったことは仕方がない。
その後もトントン拍子で話が進み、次の土曜日に千秋と現地集合することまで決まった。
スマホを手放して伸びをする。
正直、色んな心配は尽きないが試合自体は楽しみだ。
晴海が剣道をしている姿は、昔も見たことがない。
ふと、小学生の頃の会話を思い出す。
_____剣道?珍しいね
_____ああ、憧れてる人がいるんだ。凛としていて、芯が強い人。俺もそんな風になりたい。
聞きそびれたけど、憧れの人って一体誰だったんだろう。
その人みたいになりたくて剣道を始めたと言っていたけど、少しでも近づけたのだろうか。
なんとなく、晴海にそんな風に思ってもらえる相手が羨ましいような気もした。
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