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第14話 地区予選2

審判の合図から刹那、2人が 「ヤーッ!」 と、威勢ある声を上げる。 剣先同士をバチバチと押し付け合い、緊迫した空気が流れ始める。 瞬きをしたその瞬間、一瞬の静寂の後、 「メェーーンッ!!」 足を踏み込む音、竹刀の打突音、晴海の掛け声が一斉に聞こえてきた。 審判3人全員が旗を上げる。 「面あり!」 思わず歓声が出そうになるのを堪えて、力強く拍手をする。 凄い、一瞬すぎて何が起きたのか全く分からなかった。 大きな体をあんなに素早く動かせるなんて! 横を見ると、千秋もキラキラした目をしながら小さくガッツポーズしている。 興奮冷めやらぬうちに、2本目が開始され、そこでもあっという間に一本を取ってしまった。 「勝負あり!」 無事、第1回戦を突破した晴海のもとに駆け寄る。 外した面を、片手で抱え込んでいる。 「晴海!おめでとう」 「お前すげぇな!あんなデブっちょ瞬殺するなんてなあ」 千秋がサラッと酷いことを言う。 いつもなら晴海が呆れた顔で笑い飛ばすところだが、何やら思い詰めた顔で黙り込む。 「…あれじゃアイツに勝てない」 ボソっと呟いた言葉に千秋は気がついてないようだが、僕は聞き逃さなかった。 やっぱり今日はいつも以上に元気がない、どうしたんだろう。 心配だが、試合はまだまだこれからも続くんだ。 下手に声を掛けても、逆にプレッシャーに感じるかもしれない。 そう思い直して、ただ一言 「頑張って…!」 この言葉に僕の想い、全てを込めることしかできない。 晴海は相変わらず上の空で、唇の端をキュッと硬く結んでいる。 気持ちが伝わってないのが分かって、なんだか切ない気分になる。 _______ 今度は僕が晴海の役に立ちたい。 3人で初めて勉強した帰り道、あの時伝えた気持ちも届いてないようだった。 晴海の、助けになりたい。 力になれないのは、僕がオメガで頼りないから? ただ遠くから応援することしかできない自分が、不甲斐なくて仕方がない。 僕の心配は他所に、晴海は続く2回戦、3回戦も悠々と突破していき、準決勝でも余裕の二本勝ち。ついに決勝戦に進むことになった。 ということは、晴れて県大会への切符を手に入れたわけだが相変わらず本人は神妙な面持ちだ。 なんなら、表情が更に険しく、近寄りがたいオーラまで放っている。 「晴海、相変わらず浮かねぇツラしてんなー」 決勝戦の開始を隣で待つ千秋がブツクサと文句を言っているが、彼もまた心配を隠しきれていない声色だ。 周囲では観客者や試合を終えた選手たちが、ゾロゾロと集まって優勝候補を見守ろうとしている。 そういえば、晴海の試合しか見てなかったから相手がどんな人か知らないな。 「お、そろそろ始まるみたいだぞ。 …おい、あれって」 千秋がちょいちょいと僕の方を叩いて、一点を指差す。 そこに居たのはクラスメイトかつ、昨年の優勝者、九条司だった。

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