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第16話 理解者(晴海side)

部活の顧問や、チームメイトの反応なんて正直どうでも良かった。 個人戦だし、俺が負けたことによってみんなに迷惑はかからないから。 唯一許せなかったのは、この場に風宮がいることだった。 アイツは俺のことを「ヒーロー」だなんて言っていたが、それは違う。 諦め切ったこの心の、どこがヒーローなんだろう。 こんな自分を見られたのが堪らなく恥ずかしい。 まだ風宮の前でだけは、カッコつけていたかった。 ごめん、俺はお前の「ヒーロー」を殺してしまった。 どんな顔を向ければいいのか分からない…。 閉会式が終わって、ようやく一息つく。 ジャージに着替えて出入り口に向かうと、そこには風宮と千秋が立っていた。 正直、今は何も話したくない。 「よっ、県大会出場者さん。おつかれ」 「…待っててくれてたんだ」 「当たり前だろー? それにしてもすげぇよな〜。あんな何連勝もして。 なっ!りっきー」 「本当に! 最初の試合なんて、目が追いつかなかったよ。 努力の結晶だね」 努力の結晶…。 思わずその言葉にカチンときてしまう。 本当に努力が報われていたら、結果は違ったはずだ。 「…誰よりも頑張った結果が2位、笑えるな。 でも、ベータだから妥当だよな。どんだけ頑張ったってアルファには敵わないもんな。」 「!ごめん、そういう意味で言ったんじゃ、」 「あ?お前、それはねえだろ」 思わず口に出た言葉に、風宮は慌て、千秋は眉を顰めた。 「…お前らに俺の何が分かるんだよ」 俺は今、酷い顔をしてるだろう。 目の奥がじんわり熱くなって抑え切れそうにない。 心の弱さが表情に滲んでしまいそうで、隠し切れそうになくて、つい強い言葉で言い返してしまう。 こんなことが言いたいわけじゃないのに。 「悪いけど、先に帰る。 千秋、風宮送っていってあげて」 「は?おい待てコラ!」 言い逃げする形で思いっきり走り出す。 これ以上一緒にいたら、もっと傷つけてしまう気がした。 何も考えず走って、走って、走る。 100mくらい走った頃だろうか、急にガシッと腕を掴まれる。 驚いて振り返ると、酷く息切れした千秋がいた。 「てめえ!!待てつってんだろ!! 俺を部活以外で走らせんじゃねえよ」 「…追ってくんなよ馬鹿」 「うるせえな馬鹿。馬鹿なのはお前だ。 お前、俺らに何が分かるんだって言ったよな」 「だから何」 「…俺もお前と同じなんだよ。」 千秋が俺を掴む手にグッと力を入れて、俯き、視線を逸らす。 「俺もお前と同じ…。 成長期が来てから何も上手くいかなくなった。 先頭を突っ走って、誰もいない景色を見るのが好きだった!いつの間にか、昨日までは俺の後ろにいたやつが前にいた!βって理由でな。そんなクソしょーもねえ理由でな!」 千秋が大声で捲し立てる。 ハッとした。 俺はなんて自己中なやつなんだ。 千秋の目にはいつの間にか涙が流れていた。 少し落ち着いたのだろう、ぶっきらぼうにシャツの裾でゴシゴシと目元を拭いて、軽く深呼吸する。 「…りっきーだって苦労したんじゃねえの。 アイツ、オメガなんだろ。本人から聞いた。 名望学園の入学条件、知ってるか?」 「…」 「アルファであること。 優秀な生徒しかいないのはそういうことだ。 ただ、1クラスだけ例外がある。 特進科…この科は成績さえ優秀なら、どんな人間でも受け入れる。 ま、結局アルファばっかりらしいけどな」 俺はとんだ思い違いをしていた。 辛いのは自分だけだとばかり思い込んでいた。 風宮の気持ちを一切考えていなかった。 「そろそろ分かっただろ…。早く戻れよ」 「…ッごめん!」 踵を返して走り出す。 早く謝りたい、話がしたい。 疲労した体で何度も走って胸が痛い、息が切れて側から見たら情けないだろう。 それでもいい、走れ 風宮に向かって!

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