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第17話 心の太陽(晴海side)
「…風宮」
やっとの思いで風宮のもとに辿り着いた。
たった少しの距離が、果てしなく思えた。
息を切らしながら、口を開く。
「俺、知らなかった。
お前がどれだけ努力してきたのか。
本当にごめん、本当に…!」
風宮の顔が見れない。
どんな表情をしているのか、知るのが怖い。
怒ってる?悲しんでる?呆れてる?
少しの沈黙の後、風宮が話し出す。
「…ねえ、覚えてる?
晴海が剣道やってるって、僕が初めて知った時のこと」
_____剣道?珍しいね
_____ああ、憧れてる人がいるんだ。凛としていて、芯が強い人。俺もそんな風になりたい。
…ああ、そうだ。
俺には憧れてる人がいた。
その人みたいに、芯の強い真っ直ぐな人になりたかったんだ。
「僕はその夢、もうとっくに叶ったって思ってるよ。
長い年月努力し続けられるのは、芯が強くないとできないことだ。
それだけじゃない。
晴海は僕を助けてくれた、話しかけてくれた、輪に入れてくれた。
晴海の真っ直ぐさに救われたんだ。
もう手に入れてるんだよ。
勝ち負けより大切なもの、もっと本質的なものを。」
風宮が背伸びをして、俺の両頬に手のひらをそっと当てる。
指先でゆっくりと頬をなぞって、親指と人差し指で口角をムニっと掴み上げる。
「ね、だから笑って」
初めて風宮と目を合わせる。
怒っても、悲しんでも、呆れてもいなかった。
眉毛を垂らし、目を細めて、三日月のような唇で笑っていた。
あまりの輝きに目が離せない。
この笑顔、見たことがある。
蘇る小2の頃の遠い昔の記憶。
俺が風宮と仲良くなりたいと思った、きっかけ。
_____ハルミって名前、女の子みたーい
_____お前本当に男かよ!
放課後の図書室で子供達がキャハハと笑い出す。
部屋の片隅で本を読んでいた見知らぬ男の子が立ち上がり、近寄ってくる。
徐にノートに字を書き出す。
_____ねえ、「ハルミ」ってこういう漢字?
_____…ちがう
_____じゃあ、これ?
_____たぶん、そう
_____ふーん
この字は「晴れ」の晴、この字は「海」だ
きっと、晴れた日の海みたいに、澄んだ広い心を持って欲しくて名付けたんだね
友達の名前を笑う人に、そんな心はないかな?
_____は?良い子ちゃんぶるなよ!
_____あ、やば。ほら、逃げよっ
男の子が俺の手を引いて走り出す。
楽しげに笑うその顔は、キラキラ光って見えた。
ああ、そうだ。
あの時もこんな笑顔で笑っていたんだ。
俺はバース性という生まれ持った運命に翻弄され続けてきた。
そのせいで、たくさんのことを諦めてきた。
風宮も同じはずだ。
きっと、Ωという性別であるせいで理不尽な目に散々あってきたはずだ。
なのに、今目の前にいる風宮はあの日と変わらず輝きに満ち溢れている。
お前は言っていたな。
俺がヒーローだって。
違うんだ、お前が俺の憧れだったんだ。
仲良くなりたいって、強くなりたいって思ったんだ。
自分の名前を好きになれた、名前を呼んで欲しいと思った。
風宮、お前は俺の心の太陽だ。
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