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第21話 よだか(晴海side)
俺の出番がきた。
深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
自分でも驚くくらい、心が穏やかだ。
仲間たちの負けが続いている状況でも、取り乱さなかった。
一緒に練習してきたコイツらなら、どれだけ不利な状況であろうと、俺に確実に繋いでくれると信じていたからだ。
現に、先鋒は特攻役として一本を勝ち取ってきてくれた。正義感が強くて勇気のある良いやつ。
次鋒は、一本負けで耐えてくれた。臆病だが一番俺の自主練に付き合ってくれたやつ。
中堅は、諦めずに一本取り返してくれた。決して諦めたりしない強いやつ。
そして、副将。ぶっきらぼうで男気のあるやつ。
アイツは副将戦の直前に、こんな言葉を耳打ちした。
___________絶対、お前に繋ぐ。お前は引き分けでいい、勝たなくていい。だが絶対に負けるな。
今までちっぽけなプライドを守って、そしてプレッシャーに負けて、信じてくれた人たちを拒絶してきた。
そんな俺に失望しないで託してくれた。
今度こそ、そんな気持ちをちゃんと受け取りたい。
期待から、九条から、そして自分から逃げずに戦いたい。
しっかりと踏みしめながら、前に進む。
九条、俺はもうお前から逃げない。
正々堂々、戦おう。
「始めッ!」
「ヤーーーッ!」
互いに一歩前に出る。
しばらく膠着状態が続く。
九条も、絶対に一本は取らないといけないが一本取られたら終わる状況、下手に動けないのはお互い同じだ。
決定打に欠ける攻撃が何度か続き、そろそろ残り時間が短くなってきた頃だろうか。
きっと、試合終わりまでこのまま粘れ、打たれそうになっても逃げて躱せって思ってるんだろ?
俺だって、みんなの期待に応えたい。
でも、決めたんだ。
もう絶対に逃げないって。
面金越しに九条の鋭い眼光と目が合い、昨日の記憶が蘇ってくる。
お前、仕掛けてくる気だろ。
ああ、お望み通り受けて立ってやるよ。
どちらが先に踏み出したのだろう、互いに大きく一歩前に踏み出し面に目掛けて飛び込む。
副将の声か?小さく「あの馬鹿ッ」と驚く声が聞こえてきた。
思わず声が出てしまったのだろう。
悪いな。託した気持ち、確かに受け取ったが、期待には応えられないよ。
知ってしまったんだ、諦めない人間が心に宿す灯火のまばゆさを。
灼け死んでもいい、その光の中に飛び込みたいと思ってしまったんだ。
「メェーーーンッ!!」
相打ちする。
個人戦と同様、九条に脳天を揺らされる。
でも、昨日と違うのは俺も九条の脳天を揺さぶったこと。
どっちが速かったか、俺もアイツも分かっていなかった。
パタッ、パタッ
3人中2人の審判が旗を上げる音が聞こえる。
1人、九条の白旗。
もう1人が白旗を上げていたら、九条の一本になる。
覚悟を決めて、もう1人の旗を見る。
…赤旗。
信じられなかった。
手が震える。
別に一本取ったわけじゃない。
それでも、審判の1人が俺の打突が有効だったと認めた。
今までにこんなことは一度もなかった。
驚きと同時に、
「やめッ」
試合が終わった合図が聞こえる。
俺は、出会って数年、
初めて九条に引き分けた。
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