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23歪んだ俺は灰になる①
(ほわぁ~~綺麗な男……)
初めて奴を見た時、純粋にそう感じた。
誰かに何かのトクベツな感情を抱くと云う経験が皆無だっただけに衝撃的だった。
さらさらの黒の綺麗な髪と対照的な、何処かラテン系を彷彿とさせるミステリアスで滑かな灰褐色肌がとても艶っぽい。
長い睫毛に縁取られた切れ長の大きなオッドアイが伏せられるだけで、幻想的だし、何処かお伽噺の世界の住人のように浮世離れしていた。
奴の名前はナハト・グリード。
日本を護る竜であり特務機関エンブリオのコル・ドラコの部隊長の1人だ。
爛れた人生を送ってきた。これはイケナイ事だ。頭の片隅で分かっていた。相手の中で小さく燻っていた種火が炎に変わるように、俺の本能が警鐘を鳴らしていた。悲鳴を上げようと思った。だのに。喉がくっついたみたいになって、潰れた呻き声しか出なかった。
身体に重石でもついてるかのように、固まって動けなかった。
肌が粟立って、震えが止まらなかった。でも。
気付いたら受け入れていた。
……俺は、正真正銘の、馬鹿である。
理由はなんて事無くて、コインロッカーベイビーが地下闘技場関係者のチンピラに拾われ、奴隷闘士として働かされ、とあることが切っ掛けで身体を差し出す羽目になり、でも、能天気で自堕落で適当で淫乱な俺にとってそれは天啓の様な閃きと共に沢山の男達を啼かせて来たのだ。
人間ってのは純粋に見えて悪知恵が働くし、簡単に残酷な事も出来てしまう生き物だ。
だから【そういう人間】──従順(頭が悪くて)で、愚か(頭が弱くて)で、未熟(頭がお粗末ちゃん)な、相手にとって都合の良いお人形(俺)が一番安全なのだ。
だからやっぱり俺は頭がおかしいのだろう。
人間ってのは、苦労を知らずに甘い蜜を吸っちゃうとどんどん堕ちていく訳で。
しかもタチの悪い事に、俺にはどうやらそっちの才能があったようで、何と云うか……快楽にとても弱い人間だったのだ。
──男のちんぽを尻の穴で咥えて悦ぶ変態でした。だからなんだって話だが。第2次性が覚醒する前からもう判っていたことなのだ。
面が悪くても、一応密かに需要はあるようで、182cmで82kgの大柄なオメガはイシュタルでもたま~に指名が入っていた。
俺は気持ち良ければ何でも良いタイプなので役割はネコもタチも可としている。
エンブリオからの紹介で激安アパートでの一人暮らし。そしてヒモで家族の毛玉。
薄汚れたボロアパートの一室で、俺は自堕落に学生生活を送りつつ、指名して来た男の為に身支度を整え、イシュタルやホテルで身体を許して生計を立てていた。
◆
肌寒くなって来た冬の陽気は夕暮れ深まるといっそう冷える。
もはや不良の溜まり場となっている廃ビルの一室。
床には吸殻、空き瓶や空き缶が散乱し、穴が空いてそこから綿が飛び出たソファに寛ぐようにして煙草の紫煙を燻らせている時だった。
適当に不良と関わりを持ってもたま~に軽く酒と煙草。喧嘩はやらない。傷付けて良いのは自分自身で十分。
「なあお前──、イシュタル──だっけ? なんかそこでウリやってるってマジ?」
俺はそいつの言葉の意味をはかりかねていた。
つるんでは居るが特別仲良しって訳じゃない連中が物珍しそうな眼差しで俺をニタニタ見ている。
ウリ……? 何か勘違いしてんなコイツら。
「…………」
返事の代わりに深い溜め息と共に灰皿にいつもなら滅多に吸わない煙草を押し付けるとじっ、とそいつ等の目を見詰めた。
連中は一瞬たじろいだがゴクリと喉を鳴らして更に食い下がって来た。
どうせ冷やかしだろうとたかをくくって鼻で笑った。
「一発いくら?」
え、こいつらマジで云ってんのか? 胡乱な眼差しを一瞬くれてから、仏頂面のまま値段を呟いた。
「指名で5万、デート10万。本番は交渉次第だけど──20~30万は行くかな。ちな完全予約制だから」
「はあ──マジ!? こんな厳つい男でも売れるんだ。スゲェ世界」
金髪が目ん玉見開いて仰天した表情で叫び、「いやいや、こんなんに金払う位なら溝に捨てた方がマシじゃね?」と坊主頭が馬鹿にしたような声を上げる。
「じゃーほっとけや」
とそっぽを向いたが、奴らは散ること無く俺を取り囲んだ。
「……あのさぁ、何処でその情報仕入れた?」
「俺の先輩、男を掘るのが趣味なんだけど、男のオメガってめっちゃイイって……お前の店の常連。お前のサービスめちゃくちゃ良いって……」
(くそぉ~~常連かよぉ~~っ)
「せ、性感マッサージとかしてるんだって……?」
ちょっと上擦った声の鼻ピアス。
「あー……。こう、たっぷりオイルを身体に塗って、最初は優しくゆっくり広げて、感じる場所は焦らすようにちょっとずつ解して……それから……」
と身振り手振りで説明を終えると何だか雰囲気がおかしい事に気付いた。
明らかに興奮しておるぞい???
「お……男抱くとか面白そう。一度やってみたかったんだよな。汚いオッサンにいつもお小遣い貰ってやってんだろ?」
「あーだからカツアゲとかやんねーのな」
ぶっちゃけ俺の方が喧嘩は強いのだが、今は弱みを握ったと勘違いして相手側が強気に出ている状況。
「これで学校にバレたらどうなるかなぁ~?」
ともすれば厭らしい笑みを浮かべる不良達を一瞥し、さてどうしてくれようか考えて、考えて、考えて……。
「……残念だけど、前知識が足りないね。ボクちゃん。そもそもイシュタルはエンブリオが運営していて、俺達が通うモルガナもエンブリオのもんだ。この意味が分かんだろ? ちゃんと授業受けねぇからそうやって基本的なことも分かんねーんだよ」
まあ、ヤッたりましたよ。楽しみたかったしな。かと云ってイケる訳でも無し。雰囲気を楽しんで男を啼かす下らねー趣味。
いつもならシャワーとうがいがセットだけど仕方ない。俺の脳味噌は空ぽっぽ。
なんで生活の為に男に身体売ってんのにそれをクソガキに……ほんと、無駄の極み。
ぶつくさ文句を心の中で吐きながら、ふと電車の車窓に映る自分に気づいた。くたびれたサラリーマンみたいなってる。
「……なんでじゃ」
一応超有名進学校なのに、なんであんなガラ悪いのが息してるの? いや、俺が云えた義理では無いが。
不良のネットワーク舐めてたわ。
つーか、金持ってるだろ。ちゃんと払えよな。払えるだろうが。糞野郎がよぉ~~。
春をひさぐ身の上で、親の援助なく進学校に行ける筈も無い。エンブリオにはつくづく感謝だ。な~んて、そもそもオメガはエンブリオの管理物だ。感謝もクソもねぇ。が、それでも野垂れ死によりマシだろう。
ナハトとの接点なんて、魂の番としてのダメージの肩代わり以来ご無沙汰。遠くからたまに見かけるくらいのもんで。
何をやっても身体は満たされなくて、空っぽの自分、枯れた自分、汚い自分、醜い自分、歪んだ自分。
(なんの為に生きてんだろーな……セックスの為……? 笑えねー)
でも俺はそれを不幸だとは思わない。コミンジ5達との馬鹿みてぇな大騒ぎは毎回飽きないし、宗像のおっちゃんはいつも優しいし、ほぼ不登校だけどリモート授業で成績もトップクラスを叩き出している。
だのに何故、こんな人生脱落者みてぇなのとツルむようになったか? 答えは簡単だ。なんか面白いことあるかも? なんて薄っぺらい脳味噌で簡単に着いてっちまった。
ふと、俺とは正反対に青春してまーす! なJKが視界に映って。
スマホ片手に髪の毛弄りながら楽しそうに笑っている。結構可愛い顔。
きっとこれがフツーの男子高校生ならトキメキが止まらないだろうなとぼんやり考える。
「ねー今月のshia見た?」
「shia?」
「さっち、shia知らんとかヤバ」
(俺も知らん。ヤバ)
「見たー! めっちゃエロい。マジ鳥肌ヤバい」
(えー。エロい~~? ホントにぃ~~?)
「もうホント一目惚れってこういう事だわ。ガチ恋。推し活捗るわぁ。shia尊い……!」
(一目惚れ……恋……したことねーな……)
ふとナハトの顔が脳裏に浮かんだ。
(……いやいやいやいや無い無い無い無い。関わりも殆んどねーのに)
「ねー。てか、マジ神々し過ぎて後光が見えるし」
(なんなのそれ、最早大仏じゃね?)
「好き……ホント好き……」
「話題についていけねー。なんの話だよ~」
JKの駄々もれ会話をBGM代わりに聞き流しながらふと考える。
なんで俺、フツーの恋愛出来ないんだろうなぁ。
うん。そうよ、そうなのよ。
そうじゃなかったら、普通に誰かと恋愛して普通に社会人になって普通に家庭持って……あれ、俺に普通になる資格、あるっけ……?
(だって、こんなクズ……どう考えても全うになんてなれないだろ)
男とセックスしたって……気持ちいい、それ以外の感情をもった事が無い。
(もしかして俺はニンゲンモドキなのでは……?)
「ねー、だからshiaって誰?」
「これ見なよ、秒で落ちるから」
(shia……ねぇ)
俺も見てみよっかなー。
スマホをタップしてスススと指を滑らし、shiaを検索。
「「あ」」
そこにはナハトが映っていた。
それからshiaについて軽く調べた。
思いっきりモデルデビュー(?)してるナハトのことだった。いつの間に。何ならドールもダルジャンの奴らも堕竜戦のシーンや、偽竜掃討、モルガナでの私生活などが盗撮されていたのだ。
話題性抜群の容姿、兎に角顔が良い。顔面偏差値カンストどころか振りきってる。神様が配分間違えたレベル。
まあそらメディアも色めき立つよな。奴らにモデルも役者もやる暇は無いから盗撮な訳で。
それでもルッキズム至上主義じゃなくても夢中になる位には飛び抜けた化物なんだから。
「……って云うかshiaってなんだよどっからどう見たってナハトじゃねーか!!」
一人セルフツッコミで写真集(盗撮)が宙に舞った。
と同時に下から天ドン。すんません。
◆
翌朝。
アラームの音で一発起床。俺は目覚めだけはイイコチャンなのだ。
顔を洗って、朝食の支度。毛玉の分もこんもり作ってやる。
(さて……)
トースターで焼いた食パンにマーガリンとジャム塗って咥えつつ、ぼんやりとTV観ながら目玉焼きとウインナーをフォークでつついていた。
いつもと変わらない朝。
久し振りに登校するか、と緩くオールバックにした刈り上げポニテの髪を撫で付けて、前ボタンを二つ程外したシャツにブレザーを羽織る。ネクタイはしない。いつもの癖でピアスを撫でる。軽く香水つけて……。
いつもの通学路から賢者の扉を使ってモルガナへ向かう。
周りの生徒がぎょっとしたように俺から距離を取った。いつものことである。
まあ気持ちは分からんでもない。恐いよな。ごめんな。
それから改めて件の奴をじい、と食い入るように見詰めた。
遠くからでもすぐに奴だと分かる程に特徴的な外見。
黒髪のオールバック三つ編み、魅惑の灰褐色肌、妖しいオッドアイ。
「…………」
ちょっと冷静になって俺。
(やっぱどう見てもshiaなんだよなぁ……)
ナハト達が物凄い人気なのは知っていた。
眉目秀麗、派手な外見なだけじゃなく、喧嘩も滅法矢鱈と強いときた。しかも世界を護る竜だ。そんなもん特別の域を超えてときめかない方が無理と云うもんだろう。
このモルガナ以外でもファンが居て、男女問わずナハトを見つけては盛り上がってきゃあきゃあはしゃいで居るのも知っていた。
それを横目で流し見していた記憶もある。
そりゃあ、なんで他校だけじゃなく一般の人まで見に来てんの?? と疑問に思わなくも無かったが……もしかしてナハトがshiaだって知らなかったの俺だけ??
外で鴉が鳴いている。
夕暮れで焼けた空がやけに寂しくて、それをぼんやり眺めていたら、 一人感傷に浸りたい気分になる。
(思考が既にメンヘラなんだよなぁ……キモチワルイ)
「なー。もう一回だけ、駄目?」
放課後の人気のなくなった教室で(はあ、しかし今日も指名あっから帰ったら用意しなきゃな……)と帰り支度をしていると声を掛けられて、見れば昨日ヤった奴らが雁首揃えてもじもじしていた。
不良独特の雰囲気が場の空気を乱すのもあって居心地が悪いと感じたクラスメイト達は早々に教室から出てしまっていた。
厭な予感がしました。
確か昨日のコースは性感マッサージを要求されたが場所が場所だけにNo。不清潔じゃ無理。
取り敢えず手コキの後にフェラして二発抜いた。汚ねぇチンコ、しかも六人分。えぐう。俺頑張った。でもタダ働き……。
「は……?」
「いや、スゲー良かったからさぁ……お願いします! 今度からちゃんと指名すっから!!」
「俺も!」
「あっ、俺もー!」
「はあ──!?」
でも何だかんだで身体を許すビッチな俺が居た訳です……。
だって……だってだって、やりたかったんだもん。
(いや、でもコイツら男相手だと素人だから気持ち良く無いかも知れねーな……ま、しょうがない)
しかし教室でやる事ではない。
分かってた筈なのに、油断してた。
って云うかがっつかれてその勢いに流されるようにして抵抗出来なかった。
「教室でやるのって何か興奮しねぇ?」
云わんとする事はわからんでもない。
しかし教室でやるのは結構危険を伴うもので。
不意にガラッと教室の扉が開いたのだ。
ほらな。すぐこうなる。
完全に片方の鍵を閉め忘れてた。
頭が真っ白に塗り潰される感覚。
そこにはナハトが居たのである。
何の用でこのクラスに来たのか知らないが、兎に角……ナハト、もといshiaが立っていたのです。
まるで頭から冷水ぶっかけられたように一気に青ざめて、喉がヒュッと鳴りました。
んああああああああああああああああああああああああああああああああああああ────!!!!
ナハトの前でナハトの前でナハトの前で────!!!!
「と、とまっ、あ、とまってえええ~~ッッ!!」
しかし無情にも俺の尻にくっつき虫のピストンはおさまる事を知らず。
パンパンパンパン!!!! と激しい肉のぶつかり合う音が静かな教室に響いて、これコントかなと。夢なら覚めて欲しいと。切に願い。叶わず。
「あ゛~~!! あぁ゛~~!!」
泣きじゃくる俺の顔に他の奴が止めの顔射。
「なんかあたたか……中に出してんじゃねーよ~~!!!!」
最悪じゃあ。
何処の世界にこんな痴態を見られたくない存在を目の前に男に穴ガン掘りされて中出しされてる男が居るのだ。ここにいた。
って云うかいつの間に生で挿入れてたん??? 殺すぞ。
もう終わった……。
全てが終わった……。
真っ白になっちまったよ……。
……いや終わったのか? だって俺はナハトのことを……ナハトのことを……???
「み、見んといて……見んといて~~!! わああぁ……っ!!」
ナハトと視線がかち合ったままガンガン掘られて泣いてると、奴は無表情で冷たい眼差しをくれたままゆっくりと扉を閉めた。
タンッ、と閉まる音がして足音が遠ざかっていく。
「ぐすっ。見られた……。見られたぁ……」
こんな事ってあるか……? 俺は俺が情けないよ……。
「んだよ、見られた位で泣くなよなぁ~」
「うえ、うえええ……」
泣きながら教室の鍵を閉める俺。虚しい。
「ひえ。あの真宵がマジで泣いてる……」
「え。てかナハト部隊長だよな? さっきの。え。マジ? ヤバ。めっちゃ美人……」
不良の一人がうっとりした声を上げた。
「ふ、うんんんぇ~~」
「あはは。真宵、泣きかたキモ」
「んぁ、あ、あ、何硬くしてんだよ……やめろ……やめろ……やめろおおおお~~!!!!」
俺が傷心で泣いてんのにそこに塩塗り込むみたいに興奮してチンコ硬くしてんじゃね~~!!!!
◆
俺のスマホが震えているのに気付いて、見れば相手は宗像のおっちゃんだった。
今日は日曜日で、いつものように給仕をやって適当に過ごしていた。
電話に出ると聞き慣れた宗像のおっちゃんの声で、「あ、ナオちゃん~? お前に指名入ったんだけど、一日デートでだって。良かったねぇ~。集合場所は──」
早速支度を済ませて客の指定した場所に向かうとハチ公の所に何故かナハトが居ました。
飲んでたカフェオレ鼻から吹いた。
近くを通っていたOLが信じられないものを見るような眼差しをくれてからそそくさと去って行った。
俺が鼻から垂れるカフェオレをハンカチで拭いながら思ったのは──(大学生とか名前が多田さんとか全部嘘やんけ!!!!)。
キャップを目深に被り、グラサンで、しかし元々のオーラは隠しきれてない所為かチラチラと視線が集まっていた。
胸元に光る品の良いネックレス、テーラードジャケットにシャツ、ジーンズとスニーカーと云うラフな出で立ちだが、いかんせん本人の外見が整い過ぎてる所為でお忍びで来た海外セレブみたいな気品のあるオーラ放っておられる。
(やっぱ、スタイル良いなぁ……)
しかし気まずくて近寄れないのである。
「あ」
バチッと火花が散りそうな、気だるい雰囲気を纏って退屈を背負ったナハトと目が合った。
「あ~、えっちの人だ」
(えっちて……指名した時点で俺だって分かってただろうが……)
ナハトが俺に視線をくれた事で、ナンパしようと目論んで二の足踏んでいたであろう人達は脈無しと判断したのかぞろぞろと去って行った。
そろそろと歩み寄り、暑くもないのに額から垂れる汗を拭って漸く言葉をひりだした。
「え、えっち……ちゃう……」
「関西?」
「違うよ……」
「ふ~~ん。まあ良いや。じゃあ行こっか」
「あ、ど、何処に……」
「まずはー、昼飯だろ? それから買い物してー、映画観てー……」
(そんな事の為に、俺をわざわざ指名……? 本気か……? ナハトよ……)
「ん~~ッ! やっぱ怪獣映画最高ッッ! 予想はしてたけど、ゴズラがアイツとタッグ組むとか浪漫あるわぁ~」
「まさかあそこでああなるとは思わなかった。凄い展開で興奮した……! カイザーコングもゴズラもめっちゃカッコイイ!」
「だよな~! は~~。有難う。久しぶりに楽しかったわ。ゆっくりしながら欲しいモンも買えたし、観たい映画も見れたし」
伸びをした後に首をコキリと鳴らしながら、満足そうに笑みを浮かべるナハト。可愛い。花丸満点あげちゃう。
今日のデート。
穴場っぽい店で高級な寿司をご馳走になり、次は人気のカフェでパフェとパンケーキを食べ、それからショッピングのあとコーラとホットドッグとポップコーンを装備して大ヒット映画の鑑賞。
(ナハトめっちゃ食うやん……かわよ)
「や、あ、はは……あの……」
俺はそわそわと落ち着かない雰囲気を漂わせながら、意味ありげに言葉を詰まらせていた。
「ん~?」
グラサンの隙間から覗くナハトのオッドアイの瞳に俺が映っている。
首を傾げるナハトの耳のピアスと黒髪の三つ編みが煌めいて風にそよぐようにふわりと揺れた。
「なんで……その……わざわざ……?」
流石に言葉が足りなさ過ぎると思ったが、ナハトも俺の云わんとしている事はわかったみたいで。
「ああ。別に。一人で遊ぶとか味気ないじゃん」
(まあ確かに君は浮いてましたけど、だからって友達の代わりにゴリラな俺を呼ぶかね……)
「都合良いじゃん。俺は一人で過ごしたくない、お前は仕事で俺に付き合う。Win-Winだろ?」
(話てみて気付いたけど、ナハトって、結構フランクな性格してるよなぁ。もっと素っ気ない時もあるけど……)
「はあ……そっすか……」
「んじゃ、気を付けて帰れよ~」
「え」
「ん?」
「えっ、と……俺、指名、で……来たんだけど……」
吃りながら、ゴクンと唾を飲み込んだ。
空いた手をもじもじさせて我ながらキモい奴だと思う。
「うん」
「し、しないの……?」
(あ……ナニイッテンノオレ……)
「あー。そっか。成る程」
ナハトの視線が俺の頭の天辺から爪先まで品定めするように注がれて、仕事の話の筈なのに、急に恥ずかしくなった。
「…………」
「別にそういう目的で指名した訳じゃないんだけど……なに、したいの?」
「え……」
「ふはっ。耳まで真っ赤になってやんの。ウケる」
「…………帰ります」
(恥ずかしい……これじゃ俺が期待してるみたいじゃん。死にたい……)
「待て待て。良いよ、分かった」
「いや……帰ります……。ホント、すみませんでした……」
「なんだよスネてんの? 大人げな~い。んひひっ」
「shiaの時はスッゴイ爽やかな笑顔なのに……」
心の中で呟いたつもりだったのに。
そのワードを発した瞬間、ナハトの双眸がゆるゆると細められて、街灯に照らされ反射する町の中で、鈍く、妖しく、底光った。
「…………へえ」
物凄い速さで人気のない路地裏に引き込まれると、壁に押し付けられて身動きが取れなかった。
喧嘩慣れしてる俺でも分かった。
ナハト──本気なんですけど!!
「な、え、なん……アッ!?」
訳が分からず狼狽える俺を余所目に、そのまま後ろからチンコまさぐられて、既に半勃ちだったのもあってパンティからポロン。
「あ、ナハト……ッ!?」
「お前に云われるとムカつく……メディアに勝手に踊らされやがってよ」
(え、俺なんか地雷踏んじまった……!?)
「ん……っ、ん、んう、っ♡」
ナハトの手が俺のチンコをくりゅくりゅと弄くって、チュプチュプと卑猥な濡れた音が聴こえる。
ちゅ、ちゅく、ち゛ゅっ……ちゅ、ちゅぷ……っ。
「もう興奮してんの……? お前、変態だもんなぁ……」
耳元で甘く囁かれるだけで腰が砕けそうになる。
ナハトから品のある良い香りがしてやけに胸がドキドキした。
「はう……、ぁ……っ。なん、で……」
「なあ……仕事だけじゃなくて誰にでもあんなコトしてんの?」
「…………?」
とろけそうな頭で言葉の意味をはかりかねる。
「この間、教室で」
「あ、れは……ちょっと迫られて……暇だったから」
「ふうん」
「あ……、や……っ♡」
首筋にゆっくりと熱い舌が這ってぞくぞくした。
シャツの下から手がするすると肌を撫でていくだけで凄く気持ちいい。
くりくり弄られていた乳首をギュッと摘ままれて「ひぁっ♡」と声が漏れる。
(──身長も体重も俺が勝ってるし、なのにナハトの圧倒的アルファに抗えない……)
「あう、ぐりぐりぃ、しないでぇ……っ♡」
亀頭と裏筋を重点的に責められて腰が震えて思わずへたりそうになった。
ナハトはやけに手慣れてて、竿の扱き方も上手く、焦らしたり甘やかしたり絶妙な強弱を繰り返した。
「うっせーな、尻軽ヤンキーが俺に指図すんな」
「あ、あ、あ……っ。いく、イクからぁ……っ♡」
「うん。早くイって。面倒だから」
気だるい声が耳元に届く。
扱く速度が上がっていく。気持ち良すぎて声が我慢出来ない。頭の中に星が散る。
「ひど、ぃ……っ。んぁ、は、あ……っ。んぅ、ふ、ふ……あぁ……っ!♡」
白濁したものがぽたぽたと垂れた。
(イッて……しもうた……)
「ふあ?」
不意にジーンズが下げられて尻の穴に指が這うと流石の俺でも次は何が起きるのか察した。
俺の精子でぬるぬるにした指先で尻の穴周辺をゆるゆると撫でていく。そうでなくても愛液がじゅくじゅくに漏れてるのに。
「ちゃんと準備してきた?」
「して、きたぁ……っ♡」
「ん。イイコ」
ぐぷっ。滑りの良くなった指が中に入ってくると暫くくちくちと解していった。
(ナハトに尻を弄って貰えるなんて……疼きがやばいぃ……っ)
「あ、あうぅ……っ。はぁん……、あ、やだぁ……っ♡」
「何が「やだぁ……っ」だよ。ケツマンコひくひくさせやがって……」
チンコが勃起した事で分かりやすくなった前立腺に指先が触れた瞬間、ビリッと全身に電撃が走った。
待ち望んでいたように、身体が悦んでいる。
「や、あ、あっ、んああ……っ♡」
最初は優しくトントンクリクリ、それからグリュッ、と前立腺を押し潰すようにしてコリコリと責められるともう堪らなくて、馬鹿みたいに喘ぐ自分が居た。
「んぐ……っ。イイトコ、当たってぇ……っ♡」
「あ、あっ、いい……っ。はぁ、ん……っ♡」
「はは。自分だけshiaで気持ち良くなってごめんなさいは?」
何だか愉しそうなナハトの声が聴こえる。
(shia……? ナハトだろ……? あ……そっか、俺がshiaなんて云ったから……)
「ごめ、なさ……っ。shiaで気持ち良くなってごめん、なさいぃ……っ♡」
ぐりゅぐりゅっ、と再度前立腺を強く擦られて目の前がチカチカする。
「あ、……きもちい……っ。ふあ、ダメ、ダメええ……♡」
「何が駄目なん?」
「前立腺……っ。ぐりぐりぃ、、、♡」
「は。好きな癖に」
「はぁん、あっ、あん……っ♡」
「ふぅ、ん……っ。んくっ、ぐ、ぁ……っ♡」
「やぁ、あ……! は、あっ、あっ、あぁあ……っ!♡」
尻の穴への指の抽挿が更に激しくなって、1本が2本に、2本が3本に。
グチュグチュグチュグチュ、下半身からエッチな音がする。
「激し……っ、やっ、待ってェ……ッ♡ も、ゆっ、くりぃい……っ♡ ふああぁ……ッ♡」
「ほら。さっさとイッちまいな。俺、この後用事あんだから煩わせんなよクソビッチ」
(最悪……最悪なのに……きもちい……っ。我慢出来な……っ)
「は、ぁ……っ。あぁっ。ああぅ……やあぁ……っ!♡♡♡」
頭の中が白く爆ぜた。
一気に高まった快感に身体が堪えきれなくなって、腹の下がきゅううぅ、と痺れて疼いたと同時に更に物凄い快感が全身を襲って来て、びくんびくんと情けなく震えている自分が居た。脳味噌が酸欠状態で意識がぼんやりする。
「あれ? もしかしてメスイキしちゃった?」
(尻だけで……またイったぁ……)
もう立ってられなくて、くたりとくずおれてる俺を冷めた目で見下ろすナハト。
ハンカチか何かで汚れた指先を拭うと、要らないモノを捨てる様な仕草で、それを俺に投げて寄越した。
「一人で帰れるよな? じゃあな」
去っていく後ろ姿をぼんやり眺めながら霞む視界から彼の姿は見えなくなった。
「ぁ、はぁ……」
暫くふうはあと呼吸を整えて、次第に冷静になる。
手だけでイかされるとか……。
しかもこっちは仕事なのにご奉仕してないし。
(でも、すげぇ良かった……。あんなに感じたの久し振り……)
一体ナハトは何がしたかったんだ……?
俺にだけ気持ち良くして、自分は何も要求しないで……。
それにめっちゃ手慣れてた。
まあ……そ、だよな……。
ナハトだろうがshiaだろうが女も男も入れ食いだよな……。
(なんか理不尽……あの時まで童貞だったのに、すっかりいい男になりやがって……)
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