49 / 66

23歪んだ俺は灰になる②

 あれからナハトとは当然何の進展もなく。  たまにすれ違う事はあっても視線なんてくれやしない。 (ん~……。フツーそうだろ……)  以前通りの毎日。いつも通りの仕事。  指名を受けて指定されたホテルへ向かった俺に降って湧いた違和感。 「あれ?」  指定の部屋から出てきた男は俺を見て動きが止まった。 「あの……何か」 「もしかして……拓真君?」 「え」 「ああ、やっぱりそうだ。その顔の傷痕……。僕だよ、君が小学生の時、良く遊んだ大学生! 懐かしいなぁ~」 (こいつ、誰かと勘違いしてねぇか?) 「あの「まさかこんな日に君に会えるなんて、なんか運命感じちゃうなぁ~」  男の様子がなんだかおかしい。目つきも怪しいし、落ち着かないのかそわそわしている。 「…………?」 「一緒に死んでくれるかい?」  その瞬間勢い良く部屋に引き込まれた。  背後で鍵の閉まる音がして、一気に全身から冷や汗が出た。  どうする、どうする、どうする!?  混乱して逃げる事が優先された視界に映ったバスルーム。  一目散にそこへ飛び込んで内側から鍵を掛けた。 「逃げ場は無いよ。僕はゆっくり待つから気持ち良くなってから一緒に死のうね」  外から聴こえる声に肩を震わせて頭を抱えた。 (ふわ、こっからどーしよ……)  ふと視線を上げると、そこには沢山の器具が置いてあって。  スタンガン、針、浣腸器、手錠、ペンチ、ニッパー、裁ち鋏、尿道ブジー、えらいデカイバイブ、小さいカミソリ沢山入れたガシャポン、コックリング、肛門鏡クランプ、明らかにヤバそうな粉、注射器……。 「…………」 (あの男と心中……ここらで終わらせるのも有りなのか? ホテルの方々、部屋駄目にしてごめんなさい。……ああ、でも最後にせめてナハトの声が聴きたいなぁ……)  じと、とスマホを眺めて、勇気を出してナハトに電話してみた。  助けを求めるつもりは毛頭無くて、ただ声を聴きたかった。 (ナハトの番号……この間の仕事の時の履歴。繋がるか……?) 『はい』 (良かった、出てくれたぁ……っ)  ずるずるとくずおれるようにして尻餅をつくと、バスルームの床はやけにひんやりしていた。  深呼吸してから何とか言葉を吐き出す。 「あ、あ、ナハト……? 俺、俺……直忠だけど……」 『あ? 直忠? ……泣いてんの?』 「いや……なんか、声が聴きてぇなぁって……」 『はあ? お前どうした?』 「どうもしてな「ねぇ~拓真。クスリでキメセクしながら首絞めたら気持ち良く死ねるよねぇ~?」  うわ、最悪だよ。思いっきり聴かれたじゃねーか。 「あ──……忘れて。ごめん、それじゃあ……」 『……場所何処?』  奴の声のトーンが一気に下がり、有無を云わさぬ迫力に圧されて居場所を白状していた。 「え、あ……○○区の……、○○ホテルの八階のHー十七号室……」 『分かった。俺が来るまで絶対扉開けんなよ』 「え……」  間に合うわけ無いし別に構わない。  ものの数分だった気がする。  ほ──……と長い溜め息を漏らしてから、両手で顔を下に撫でるようにして、ゆっくりと立ち上がり、扉のノブに手を掛けた。 (どうせいつか死ぬはずだったんだ。最期にナハトの声が聴けて良かった……)  部屋の方から爆音と悲鳴が聴こえて来た。 (は……?) 「おーい。ビッチ。生きてるかー?」  呆然とする俺を余所目にバスルームの扉がノックされた。 「あ……ナハト、……?」 「来てやったぞ」  間違いない。ナハトだ。 「早くね……?」 「だって俺、このホテル泊まってるし」  それから店の黒服を呼んで男は連れて行かれて、俺は何故か……何故かナハトの泊まってるスイートルームに泊まらせて貰う事になった。 「…………」 「…………」 (気まず……)  ナハトはソファに腰掛け退屈そうにスマホをタップしている。  俺はと云うと落ち着きなく広くて豪華な室内をうろちょろしていた。 「お前大人しくできねーの?」  と云われて身体がぴゃっと床から浮いた、気がする。 「いや、いや……だって……」 (まさか偶然が重なったとは云え、本当に助けに来てくれるなんて……) 「図体デカイ癖にたまに小心者だよなぁ?」  くっくっ、と喉を鳴らして眼を細め笑うナハトに、何故だか胸がきゅんとときめいて。 (もしかして……俺、ナハトの事……好き……なのか?) (人を好きになった事が無いから確信が持てない……) 「あの時のお前の間抜け面。ぷっ。くひひ……っ」 「ふえ……」  ナハトの悪戯っぽい笑い方にドキドキしている自分が居て。  それでもって相変わらず変な笑い方だな~と心の中で呟く。 「あの時は、あの……時は……」  死のうと思ってた、なんて云ったら奴はどんな顔をするだろうか。 「店に電話すりゃ良かったのに。つーかお前なら一人位楽勝だろ」 「気付いたら、その……ナハトに……。ご、ごめん……」  申し訳なさと気恥ずさしさから下を向いて、手持ち無沙汰な手でシャツを弄った。  ふと顔を上げると視線が合って、まるで心を見透かされそうで、慌てて目を逸らした。 「ん──……」  何か云いたそうな含みのある声だったが、「まあ無事で良かった」と云われて、なんとか誤魔化せたと安心する。 「本当に助かりました……」 「いいよ別に」 「あの、ナハト……」 「なに」 「この間……指名してくれた時に、その、shiaの笑顔……って怒らせたの……。あれ、俺、悪気無くて、ホント、ごめん……」 「…………」  何だか唇を尖らせてムスッとした顔のナハト。 「いや、あのね。その、ナハトって変な癖のある笑い方するから」 「ああ?」  不機嫌な返事が聞こえて身体が反射的にビャッと飛び上がった、気がする。 「いやっ! 悪い意味じゃないんだけどっ。……shiaの時とギャップがあって、心の中で呟いたつもりだったんだけど……すみませんでした……」 「ふ~ん……」  子供が拗ねたみたいな表情、でもちょっと嬉しそうに見えた。 「うん……まあ、そういう、事なんです……。態とじゃなくて……」 「……ところでさっきの男、お前の知り合い?」  冷水を掛けられたようだった。  現実に戻された気分。  自分の立場を完全に忘れていた。 「え……。あ……人違いなんだけど……」 「勘違いで殺されかけた?」 「ん……そう、なる」 「へー……成る程」 「……へへ、気持ち悪いよね」  予想していた通りの反応。  これで良いんだと諦めの自分と、後悔している狡い自分と、何だか綯交ぜになった感情が渦巻く。 「……折角助けて貰ったのに、こんな下らない内容で本当にごめん」 「じゃあ誠意。見せてよ」  ふ、とこちらへ視線をくれたナハトの口から発せられた言葉。  はて、誠意とは一体……? 「え」 「俺の対面のソファでオナって」 「は……?」 「できねーの?」  ちろり、片目がこちらに冷ややかな視線をくれた。 「いや……出来る……けど、なんで?」 「俺はお前の命の恩人……だよな?」 「あ、やります。やります。勘弁して下さい……」  のろのろとソファまでやって来るとナハトの目の前でジーンズを脱ぐ。  と、目をまん丸に見開いたナハトから声が上がった。 「なにその下着相変わらずえろ」 「指定されたから……穴空き紐ビキニパンツ」 「布の面積がほぼない」  ソファの上にタオルを敷いてから、リュックからローションを取り出してチンコと尻にとろとろと垂らした。 「ふ……っ」 (そんな気分では無いんだが……) (でもなんだろ、この感覚……)  グチュグチュグチュグチュ。  ぬちゃっ、ぬぷ、ぬぷっ。  ローションにまみれたチンコを扱いて何とか勃たせようと頑張ってみる。 「ん……、ぅ……っ」 「穴も弄って見せて」 「え……」  予想外の言葉に狼狽えながらナハトを見た。  奴は顎に手をあて腕を組んだ状態でこちらの行為を見詰め、相変わらず冷めた表情ではあったが、その瞳は熱のこもった眼差しをしていた。  その熱い視線に晒されていると思うだけで急に恥ずかしくなって、ふと彼のある部分に視線がいって思わず赤面してしまう。 「…………っ」 「……なに?」 「だって……ナハト、勃ってるし……」 「はあ~? お前は、俺のチンコ見ながらオナってんの? 直忠のエッチ」 (俺の名前……っ) 「な、はとって……」 「ん~?」 「いや、だって……いくらなんでも俺なんか……」  罰ゲームみたいなものなのに、なんで見たがるのだろうか。 「ご想像にお任せします」  顎を丸めた手に乗せ、ガラステーブルに肘をつき、オッドアイの双眸がゆるゆると細くなって口元に悪戯っぽい笑みが見えた。 「はい……。わかりました……」  ふと見れば、ナハトが無言で俺の至近距離に近づいて来たものだから物凄く驚いた。  良い香りが鼻を擽って、奴は相変わらず飛び抜けて美人で、その綺麗な瞳に映る自分がとても不思議だった。 「え、あ、ナハト……?」  ナハトの節くれ立った大きな手が、俺の肌に触れた。  たったそれだけの事なのに。  いつも誰かに触られて汚い俺の身体に、綺麗な奴の灰褐色の手が触れただけなのに、それだけなのに……心臓がばくばく高鳴って。 (苦しい……) 「あ、待って、ナハト……っ、ナハト、ん……っ♡」  この間みたいな慣れた手つきで俺のチンコをグチュグチュ弄りながら、尻に指を這わして来た。  苛立った雰囲気を纏って激しくするものだから訳が分からなくて混乱するも、身体は正直なのが恨めしい。 「やっ、あっ、あっ、あうぅ……っ♡」  つぷ、と中に指が入ってくちくちとかき混ぜられて、さっきまで萎えてた気分が嘘みたいに興奮して高まると、もう声が止まらない。  あれ、いつも誰かに抱かれている時の自分の声はこんな甘ったれだったっけ……と足りない頭で考える。 「はぁ、あっ、あん、あっ、ひぁ……っ♡」  指が増える。質量が増す。動きが加速する。ローションと絡まってにちゅにちゅにちゅにちゅ。凄くイヤラシイ音。 「あ、イク……っ。イクからぁ……っ♡」 「ひぃ……っ。ぃくぅ、あぁ、ふあぁ……っ♡」 (ナハ、ト……ど……して……)  びくんっ、と大きく震えて……余韻がおさまらなくて、くちくちと尻の穴がナハトの指を名残惜しそうに咥えてる。 「……イッたじゃん」 「んく。イキ……まし、たぁ……っ♡」  目の前がハート乱舞になって、ああ、やっぱビッチはビッチだなぁ、とひとりごちる。 「は──……かわい……」  甘ったるい眼差しのナハトが俺のおでこにキスをした。  その意味する所が分かんなくて、のぼせた頭のままナハトを見た。 「……俺さぁ、この間スッゲー傷付く事あって」 「……?」 「学校で、オメガが男に犯されてるの、初めて見た」 「ほげ」 (俺の事じゃねーか!!) 「なん、っつーか……云い様のない感情がぐるぐるぐるぐる頭ん中支配して……それで気づいた訳」 「……えあ、はい……」 「チンコ勃ってるって」 「ふわ……」 (真面目腐った顔してるがこれ笑うトコなんかな……) 「……お前はどうかしんねーけど、俺は直忠の事、前から知ってた。まともな癖に適当で自堕落だから不良ともつるむよく分からねー奴。カツアゲも虐めもパシりもしねぇ。そんな奴が、抱かれてんの。しかも、調べたらイシュタルのキャスト候補生で普段は給仕とか」 「裏方かよ!!!! って」  ガンッ!! とガラステーブルが割れる勢いで大きな音を立ててテーブルを叩いたので物凄く驚いた。 「ひっ!」 (声量半端ねぇ……!!) 「ふとした時にやたらとお前の事が頭に浮かんで、だからいっそ声掛けてみるかって。……なのに、なんで他の男に腰振られてんだよ……ふざけんなよ……」 (すみません……すみません……堪忍やで……) 「あの後速攻トイレで抜いたし。男も女も掃いて捨てる程に云い寄られるこの俺がだよ? 自分で自分が信じらんねーよ……虚無を感じた」 「そ、ですか……」 「そこでやっと気付いた。この感情の意味を。あれ? 俺直忠の事好きなんじゃね? って。だから他の男とそういう事してるのかと思うと苛々するし苦しいし……一方的にお前の事ばっか考えて……。この間の、指名しておいて何だけど、結局仕事として処理されてると思うと腹が立って腹が立って……チンコも勃つし」 (あれ? コイツ笑かそうとしてねぇか?)  両手をわなわなと震わせて、彼はじっと自分の手を見詰めたあと、俺に親殺されたんかって目でひと睨みした。意味が分からなかったし何なら怖かった。 「なんのはなし……」 「だぁ~かぁ~らぁ~」  苛々した様子のナハトがチッと舌打ちしながら、眉間に皺を寄せ、ゆっくりと俺をソファに押し倒した。 「……俺のモノになって」 「へ」 「意味が分かりません……」 「ああもう、俺と番えっつってんだよ!! 決まり!! はいはいはいはいもー決まりました!!」 「怖いぃ……この人怖いよぉ……」 「恐くない!」 「…………あ!!」 「……チッ。……なに」 「これって告白か!?!?」 「そうだよ! 下手くそな告白で悪かったなァ!?」 「痛いッ」  バシンッと頭を叩かれて、漸く脳味噌が働いてきた気がする。 「お、俺も……ナハトの事……」 「えっ。もしかして……」 「顔が良いなぁ、とか、えっちな身体してるなぁ……とか思ってました!!」 「ふざけてんのかオメー……」 「で? どうすんだよ」 「え……?」 「え? じゃねぇんだよなぁ。お前の返事を聞きたい訳。分かる?」 「お、俺は……。俺は……」 「さっきも云ったけど金と快楽の為に股開くような汚いヤツで……面も頭も悪いし……だから……」 「そんな、ヤツ……駄目だろ……」  ナハトの真っ直ぐな眼差しが辛くて目を逸らした。意気地無し。 「ふうん。じゃあ訊くけど」 「俺の顔は?」  色気の権化かと思う位に飛び抜けて美人。そのミステリアスなオッドアイに見詰められたら心臓の高鳴りとまんねぇ。 「……好き」 「俺の身体は?」  彫刻のように無駄の無い均整の取れた身体。引き締まっていてそれでいて筋肉質で魅惑の灰褐色肌。100%エロいに決まっている。 「……好き」 「俺のチンコは?」  その膨らみを見れば分かる。ぜってぇデカイ。 「……それは、見てみないと、なんとも……」 「じゃあしゃぶってみて♡」 (綺麗な顔して云ってるコトえげつなぁ……!!!!) 「……ご、ごめんなさい!! 無理です!!」 「は?」  俺はナハトを押し退けると物凄いスピードでジーンズを穿いて、音速の勢いで部屋を出て、気が付いたら自分のアパートに居た。 (俺が、俺なんかが……ナハトを汚す訳にはいかない……俺みたいなゴミが……あ、パンティ忘れた)  一方のナハトは、ホテルの一室にて俺の穴空き紐ビキニパンティを片手に呆然と眺めていた。 ◆ (あれから一週間……か)  ナハトの姿を見掛ける度に、追われてる訳でもないのに俺は避けるようにそっと隠れていた。 (雑誌、CM……気が付けば何処もかしこもドラコのメンバーに勝手に芸名付けて 無許可な映像や写真集を使い放題、それにshiaだらけ……余計に意識してしまう……ああもうなんでだよ!)  俺は奴に相応しくない……分かってる……分かってる、大丈夫……。  それでも消えない頭の中のナハトをなんとか消す為に指名の仕事に集中して、煩悩をどうにかしようとした。 (えーと、今日の指名は多田さん、と……あれ? この名前どっかで……) 待ち合わせ場所のカフェに向かうと人集りが。よく見ればそれはーー 「げ──!! ナハト……!!」 「お前こんないい男に向かって「げ──!!」ってなんなん」 (自分の事、いい男とか云ってら……間違っては無いけど)  それから人集りを無理矢理抜けるようにしてナハトに腕を引っ張られ、行き着いた先はラブホだった。 (は……?) 「俺さ、滅茶苦茶怒ってる。分かるよな?」  溜まっていた苛々をゆっくり落ち着いて吐き出すようにして、不満顔のナハトが睨んで来る。  ひと気の無いロビーの隅で壁に押し付けられるようにして、無理矢理唇を塞がれた。 「んっ」 「んふ、ぁ、ふぁ……♡」  熱くて甘くて蕩けそうだった。 「なんで? 俺じゃ駄目?」  ちゅ、ちゅ、と焦りを伴ったキス。 「ナハ、ト……ここ、ロビーだから……っ。やめ、やめて……っ」 「じゃあ部屋で。もう俺は我慢しないから」  有無を云わさぬ雰囲気に背筋がぞくりとした。 「……う、分かった」 (もうここまで来たら覚悟するしかない……)  部屋を選んでエレベーターの中でもキスをせがまれて、ナハトの勢いに引っ張られるようにして部屋に入った。 「し、シャワーとか、うがいとか……うわっ!」 「もうして来てる」 (ヤル気満々……!!)  そのままベッドに勢い良く俺を押し倒したと思ったら、ナハトが焦れったそうにベルトを外しジーンズを下ろしてそこからまあ見事な……明らかに20cm以上あるビッグボーイをチンバチしながらフル勃起で見せ付けて来た訳で。 「相変わらずでっかぁ……!」  思わず感慨深げにはわわわわぁ……と乙女になってしまった。 「ふふん。そう?」 「しゃぶって♡」 「ほえ」 「んん……ビッグボーイ。……と云う時の為に!」  そう云いながら俺はリュックからあるものを取り出して見せた。 「じゃじゃーん!」 「テレショみてぇ」 「なにそれ」  胡乱な眼差しの芥川君。 「味のするジェル。これはストロベリー味ね。これを君の巨根に掛けてぇ~」  ひんやりした液体が芥川君のビンビンのチンコに掛かると、奴が一瞬ビクッと反応した。可愛い。 「あ゛っ」 「ナハト、いま喘いだ?」 「聞き間違い」 「ふーん? ……じゃあ舐めます」 「早く♡ 早く♡」  身体を軽くリズミカルに振りながら笑顔でフェラチオを催促するナハト。うぜえ。 「うるせぇなぁ……」  とか云いつつ取り敢えずナハトの隆々と屹立した立派なチンコに何度も優しくキスをした。 (バッキバキ……熱い……)  太い血管がいくつも這っているチンコは雁首も一回り太くて傘が開ききっており、これで後ろをガンガン突かれたらまた飛ぶかもしんねーな……とか期待にチンコが膨らむビッチな俺。  それから濡れた熱い舌でねっとりと焦らすようにして、玉をやわやわと揉みつつ下から沿うように、唇を食ませながらちゅるるるるう゛ぅ、と裏筋まで舐め上げるとナハトからくぐもった声が漏れて嬉しくなる。  くぷぷ、……大きく口を開けて亀頭を咥え、そこをぢゅうぢゅうと吸って唾液とカウパーとジェルの力を借りてそれらを絡めながら舐めて舌で割れ目をつつくように刺激した。  暫くそうやってくぽくぽしていたが……。 「もう! でかすぎ!!」  ちゅぽっ、とチンコから口を離し、俺は申し訳なく思いつつ叫んだ。 「はあああああ゛~~!!」  突然ナハトが仰け反るようにして叫ぶもんだから、どうしたどうしたと狼狽えるしか無くて。 「え、え、ごめん! 頑張る、頑張るから!」 「ちがう、かわいい、ごめん、かわいい、むり……」  両手で顔を覆って、ナハトがふるふると震えた。  なんだ……、と一安心した俺はさてこのビッグボーイをどうしてくれようかと悩みつつ再び口淫を再開した。  なにぶん質量が半端ない。  今まで相手にしてきたパンピーの誰よりも、ドラコのナハトのモノが太く、長く、硬い。ああ、どうしてドラコのダルジャン達はどいつもこいつもデカチンポなんだよ!! 嬉しいけど!! 飲み込むの大変!!  手淫で扱きながら、ちゅっちゅっと吸いつつ、このままでは先に進めないと判断し、勇気を出して一気に咥え喉奥に押し込んだ。  じゅるるるるっ! ぐぷっ。  ……そのまま勢い良く喉の奥にゴッ、と当たった。 (入った……苦しい……ッ)  イラマチオは経験あるがこのサイズは咥えた時の質量が相変わらず半端なかった。  それからぬるぅ゛~~、とゆっくりと何度も頭を上下した。  少し動くだけで口のほんの僅かな隙間から色んな液が溢れ出て摩擦で泡が立った。  口の中にみっちりとナハトを含んで、涙がポロポロ溢れた。  なんだか口内が性感帯になったようで、じんじんと痺れて気持ちが良い。  喉の奥まで届いてしまうモノに苦しさから眉を歪め、泣きながら紅潮した頬いっぱいにチンコを咥える姿はナハトにどう見えているのだろうか。  そのまま何度も何度も頭を上下してじゅぽじゅぽと卑猥な音を立ててしゃぶった。 「……ッ、な、お……ッ!」  ナハトの俺を呼ぶ声が聞こえる。 (膨らんでる……限界近い……?)  不意に俺の頭をナハトが掴んで激しく腰を動かした。 「ん、ん、ふ、うっ、……んん゛ぅ゛~~ッ!!!!♡♡♡」  苦しさと快感が一体になって身体に襲い掛かると、ナハトの期待に応えたくてじゅぽっ、じゅぽっ、とされるがままに更に激しく擦り、口の中で一気に熱が爆ぜ、熱くてどろりとした液体をごくりと飲み下した。 (おいしい……) 「うわ、飲んでんのえっろ……」 「んあ……」  ずるっとチンコから口を離すと、唾液と精液とジェルでとろとろになったものが糸を引いて、それがやけにエロくて興奮した。  それからナハトににこりと笑顔を向けてから「ナハトのは相変わらず濃いなぁ」と云いながら口から垂れる液を親指で掬って舐める。  ちゅ、ちゅ……ほんの短い間そうやって舐めていると、ふと視線を感じてナハトを見れば、奴は口を半開きにしてわなわなと震えながら、オッドアイの瞳は爛々と妖しく輝いていた。  で、下半身を見たらもう復活してるじゃありませんか。 「ええ、はやぁ……」  驚いているとそのまま押し倒しされた。  ふーっ、ふーっ、とナハトの興奮した息遣いが聴こえる。  かぶりつくようなキスをされ、舌を絡ませ合うと、ちゅ、とナハトから舌の先端を吸われて堪らなくなる。  獣のように唇を貪って、唾液を交換し合うと、余りの甘さに脳がくらくらと目眩がする。  蕩けるようなフェロモンの香りが室内を満たしているようで気分が良いし興奮度も限界だった。  シャツを捲られ、剥き出しになった肌にナハトの灰褐色の手が触れた。 「あ……っ」  ちゅう、と乳首を吸われて甘ったれた声が漏れた。  片方は口で吸われて、もう片方は指でくにくにと愛撫された。  熱と興奮で肌がしっとりと汗ばんで、触れた所がジン……と熱くなる。  ふにふにと人差し指と親指の腹で粒を揉み込んで、くりゅ、と捻られた。 「ん、ぁ……ッ♡」  乳輪ごと強く吸われると、無意識に俺の身体がぴくん、と反応した。  舌で転がして食むように刺激を与えられると、恥ずかしながら可愛らしい嬌声が出てしまった。 「ああぁ……ち、乳首っ、吸わんといてぇ……ッ♡ 堪忍、堪忍やぁ……っ」  その発言を聞いたナハトの動きがピタリと銅像のように止まり、訝しげな表情で俺を見詰めた。 「そんな古い官能小説みたいな喘ぎ初めて聴いた……」 「すんません、ふざけ過ぎました……」 「面白い野郎だね~~」  ナハトが笑顔でキレてる。怖い。 「も、もうぐずぐずだから、入るよ!?」  慌ててジーンズとパンティを脱いだ。物凄く早く脱げた。俺出来る子。ガーターベルトとストッキングだけになる。 「ふーん。じゃあどうして欲しいか云って」  俺は慌てて自ら両脚を曲げ左右に広げてから人差し指と中指を自分の穴に這わせて広げるとおねだりで誤魔化した。 「挿れて、下さい……っ♡」  それを見たナハトが思わずごくりと喉を鳴らした。  荒かった息がより一層乱れる。  無造作にシャツを脱ぎ捨てた奴の灰褐色の筋肉がもうエロくてエロくて、そこにこのセクシーな顔が付いてるのかと思うと信じられなくてスゲー興奮した。  ぬるぬるに濡れそぼった穴にナハトのモノがぴとっとあてがわれた。  その熱量が身体に伝わると、期待で胸がふくらみ、ぞくぞくと高揚感を伴って背筋を駆け抜けた。  最初は俺の様子を窺うようにゆっくり、ゆっくりと挿れていたナハトだったが、一瞬の間をおいて、一気にナカを貫かれた。  まるで電撃のように快楽の衝撃が全身に走った。 「あ、あっ、あぁあ゛~~ッ!♡♡♡」  肉襞がみちみちみちっとナハトのペニスで強引に押し広げられると、それを逃がすまいとぴったりと絡みついて蠕動した。  狭くてぴっちりとしたナカで、体液でどろどろに濡れたそこが、滑らかにナハトを奥へと誘う。  肉を擦る度に鳴いてしまって、それが更にナハトを煽ってしまったようだった。 「ふっ、ん、んッ♡ あっ、あぁ、あん♡ あんぅ゛♡ あぁう゛!♡」 「あ、おくぅ、いいっ♡ もっと♡ もっとして……ッ♡ ふあぁ゛ん♡」 「んぁ♡ いいっ♡ すごい♡ おっきいのっ♡ なはとの♡  きもちいい♡ ぁ゛~~ッ!♡♡♡」  ぱちゅん! ぱちゅん! ごちゅっ!!  奥の良いところに当てると、びくんっと身体をしならせた。  タン、タン、と一定の律動の後にぐりぐりと捏ねるように絶妙な腰使いで良いところを刺激されて気持ち良すぎて堪らない。  快感が次から次へと押し寄せて、波のようにうねると、それは大きくなって一気に覆い被さって来た。  俺が達するのは自明の理だった。  俺がイってる間もこちらの反応を窺うようにして、それからナハトは再び激しく腰を打ち付けてきた。 「あ~~……クソッ。直忠のマンコすっげぇ気持ちいい……」  恍惚とした表情で自分を求めてくれるナハトが愛しくて、俺はぎゅう、とナハトを抱き締めた。  そしたら何を思ったのかナハトは俺の両腕を掴むと、腰を下ろして更に深く一気に奥を貫いて来た。 ぐぼ!! とあってはならない音がしてこれ絶対結腸入ったやつ……と悟る。  頭の中が混乱と快感の大渋滞で、貫かれた瞬間喉が詰まって「カヒュッ」と息が漏れた。 「くあ゛っ! ふぁ……っ!? あ、あ……あー……っ♡ あ、あっ、あ──♡♡♡」  ぐぽっぐぽっぐぽっ。 (すげーおと、してるぅ……)  腹を突かれて身体がびりびりと痺れ、尽きることの無い快感に悶えながら、だらしなく口が半開きになって涎が垂れっぱなし。涙も止まらない。顔がぐちゃぐちゃ。  なのにめっちゃ気持ちいい。多幸感が凄まじい。  圧倒的な質量の熱が、腹のナカを無理矢理抉じ開け暴くようにして何度も抽挿されると、擦れた所が堪らず気持ちいい。 「なんか……♡ おかしい……♡ あ゛……♡ あ……っ♡ きもちぃ……♡ あ……っ♡ んあぁ、……ッ♡」  何度も射精した後になんかチンコがもぞもぞし出した。 「まってぇ……っ。なんか、漏れそう……っ。漏れちゃうからぁ……っ」 「いーよ。そのまま漏らして」 「やだっ、やだぁ……っ。漏らしたくない、やだあぁ……っ!」  首を振って抵抗してもナハトは腰を打ち付けるのを止めない。 (無理……っ。もう限界……っ)  身体が大きく震えて、びくんっ! としなった。  プシャア……ッッ。 「ひ、い、ぁ……っ。……潮……漏らしたぁ……っ。う、ごめ、なさぁ……っ。うぇぇ……っ」  良い歳した男が……お漏らし……恥ずかしくて消えたくなった。  なのにナハトは屈託なく笑っている。 (なんで……?) 「あはは。泣くな泣くな。潮吹いたな~♡ そんなに良かった?」  頭を優しく撫でられながら、戸惑いを隠せなかった。 「えうう……しお……」 「じゃあ続きしよっか♡」  おでこに優しくキスをされてから、ナハトの更なる猛攻が始まった。  イキにイカされて、最早何が何だか分からなくなって、でも奴の腰は止まらなくて、やめて、と何度懇願しても駄目だった。 (こんなにしてんのにチンコガチガチ……ナハト、相変わらずの巨根で遅漏で絶倫かよ……っ!)  体液にまみれて泡立ち、ぐちゃぐちゃに絡まりながら、奥にぐぼッ、と抜ける度に快感にうち震え身悶えした。  視界がちかちかと弾けるような錯覚と共にナハトから激しく突き上げられ、揺さぶられて堪らず何度も達しては情けなく鳴いた。 「うあ……っ! まって……! あぁ……! すごいのぉ……キてる……っ! もうイキたくない……! イキたくない゛ぃ~~! んぐ、ぅ~~~~ッッ!!!!!!♡♡♡」  触ってもいないチンコから精子がとろとろと垂れ流しになった。 その間ず──っと心地良くて、頭ん中真っ白。 (きもちよすぎて……しんじゃう……) 「ひぐ……っ。う……っ。うぅ……ごめん、なしゃ……っ。ご、めんな、しゃいぃ……っ。も、ゆるしえ(て)くらしゃ……っ♡♡♡」  もうなんか気持ち良すぎて頭壊れてそれしか云えなくて。  馬鹿みたいに繰り返しては泣いてた。 「お前ホント泣き虫だなぁ。上手にトコロテン出来てんじゃん♡ あ~可愛い♡ 本当に大好き♡ でも俺まだイって無いから付き合ってね」 (うそ……)  ナハトの眩しい笑顔、ぎゅっと抱き締められたのを最後に、俺の意識は飛んだのだった。 ◆  翌日、気絶していた俺を起こしたナハトと共に、ホテルから出た俺たちは、一先ず俺のアパートへと向かった。 (やり過ぎて腰がイテェ……)  一応部屋はこまめに掃除してるが、それでも何だか気恥ずかしかった。 「へ~。相変わらず綺麗にしてんじゃん」 「あ、どうぞ座って。何か飲む?」 「ん~何がある~?」  俺は冷蔵庫を確認してからニコニコとナハトに伝えた。 「お茶と紅茶とコーラにチューハイがあるぜ!」 「二十歳未満が呑んでんじゃねぇ!!」 「ひえ」 その勢いに驚いて思わず尻餅をついてしまった。コントかな??? ちょっとくらいイイじゃん。 「はあ~。やっぱ、どう考えても俺達番うしかないよなぁ~」 「ええ~!?」  キレたかと思った次の瞬間にはスッゲー照れ顔でニヤニヤしながらうっとりしているナハト。  え??? 情緒どうなってんの??? こいつ怖い。 「俺達、セックスの相性も抜群だし」 「連続アクメ、潮吹き、トコロテン……お前ずーっとイキ狂って泣いてたな。くひひ……っ」  指折り数えてにやにやする悪代官みたいなナハトに、昨夜はベッドの上でコテンパンにされた不甲斐ない自分、最早ぐうの音も出ねぇ。 「ぐうう……」  あ、出ちゃった。  座布団の上に正座した状態で膝の上に置いた手を握りしめ、顔を真っ赤にしながら唸った。 「なに恥ずかしがってんだよ」 「だって、あんな……。てか、ナハトなに無駄に自信つけてんだよ! 俺とハジメテするまで童貞だったのに──色んなオメガ抱いていい男になってさぁ! これは詐欺だ!!」 「それは俺の努力の賜物」 「ううぅ~~」  俺は決めた。そもそも初めから決めてた。 「つ、番えません……」 「……なんで?」  訝しげな眼差しのナハト。 「だっ……て、だって──俺、クズだから、セックス大好きだから、浮気するかもよ……?」 「へえ。本当に出来る? だってお前を満足させられるのは俺以外にダルジャンのドラコ達だけだぜ?」  そう云いながら、目を細めて此方を見詰める姿が堪らなく色っぽかった。  それでいてどっしりとした自信に満ち溢れた余裕っぷりが伝わって来て、嗚呼、この人には敵わないなと痛感する。 「俺に惚れてる癖に」  人差し指を俺に向けながら、悪戯っぽく笑う姿が小悪魔過ぎて頭がくらくらする。 「はあ!?」  図星を突かれてつい反射的に顔が真っ赤になった。  慌ててかぶりを振って(待て待て待て、ナハトのペースに振り回されるな俺……!!)と何とか冷静になろうと口を開いた。 「……お、俺みたいなクズはナハトには相応しくない。日本を命懸けで護ってくれてるエンブリオのコル・ドラコの部隊長に……こんな傷だらけのど淫乱で節操なくて自堕落て適当なオメガなんて……ナハトの仕事に支障が出る。迷惑に……なりたくない……」  考えても見ろ、道端の石ころにも劣るゴミが、目映い輝きのダイヤモンドに見合うか? 釣り合うか? 有り得ない……。  ナハトと向き合う勇気も無くて……消え入りそうな声で、どうでもいい御託をべらべらと並べた。 「……云いたいことはそれだけ?」  ハッとしてナハトを見た。  奴が冷めた態度になっている事に恐怖を感じた。 (嫌われた……? 呆れられた……? 当然だ、だって俺は逃げてる……!!)  この期に及んで、まだ未練がましく考えている俺はなんて自分勝手なんだろう。  我が儘で、卑怯で、臆病者だ。 「……そう。じゃあ、俺帰るわ。時間取らせて悪かったな」  此方に視線をくれること無く、ゆっくりと腰を上げたナハトは、そのまま玄関で靴を履いて扉のノブに手を掛けた。  ──怖くなった。  気付いたら身体が勝手に動いてナハトの片手を掴んでいた。  ナハトはずっと本音で向き合ってくれたのに、俺は建前ばっかで逃げて、生きる事からも逃げようとして、逃げてばっかで……。  ここでナハトを引き留めなかったら、もしかしたら、もう二度と会えないかも知れない──それでいいのか? まだ逃げるのか? ずっと逃げて、逃げ続けて──俺には何もない。  何一つ持ってないのに、ナハトはそんな俺を好きだと云ってくれた……! (だったら……っ!) 「……どうした?」 「い……行か、ないで……」  あんなにグダグダ云っといて、次の言葉を何と伝えれば良いのか分からない。  その様子を黙って見ていたナハトは、もう待ちくたびれたと云わんばかりに小さな溜め息を付いてから俺の手を握り返した。 「……俺と番ってくれますか?」 「お願い、します……」 「はい決まり──!!」  パチンッと指を鳴らして物凄く嬉しそうな奴に唖然とした。 (やっぱ、この人の情緒やば……)  こうして俺は何故かナハトと番うことになったのだった。 「ナハト、俺の何処が気に入ったの……?」  自分で云うのもアレだが、図体でかいだけの冴えない面した男で、云うて特に魅力的な部分なんて一ミリも無いと胸を張れちゃう所が悲しい。 「ん~、顔も身体も全部好み。見ていて新鮮。面白くて飽きない。食事の食べ方行儀良くて綺麗。困ってる人を放っておけないお人好し。煙草吸ってる癖に歯も息も綺麗だし体臭がいい匂い。照れ屋で可愛い。凄くエッチ。セックスの時めっちゃ甘えん坊。外見と内面のギャップ萌え尊い。一緒に居てスゲェ楽しい。最早好きしか詰まってないって思ったら自分のものにしたくなるのは自然だろ?」 (えらい語るなぁ~~っっ) ◆ 「なー真宵ー。お前指名しようと思ったらリストに載って無かったんだけど?」  明くる日、モルガナにて以前つるんでいた不良に声を掛けられた。 「ああ……裏方固定」 「えっ、なんでだよ」 「彼氏……出来たから」 「彼氏ぃい!? あの真宵が!?」 「……後ろ」 「あ?」 「ナハト部隊長──!!!!」  ある日の夕方、ナハトが俺のアパートへ突然やって来た。 どうしたの、と訊いても「会いたかったから」としか答えない。 スーパーで夕飯の材料を二人で買いに行き、帰宅してから俺は支度に入った。  じゃが芋の皮を剥きながらナハトの事を色々と考えていた。  出来上がったカレーライスとサラダとスープをテーブルに並べて二人と一匹で食べながら、美味しい、とナハトはいつものように料理を褒めてくれる。  食事を済ませるとまったりした時間が訪れる。  それがとても心地いい。  まさか自分が全うに生きようとするとは夢にも思わなかった。 (枯木竜吟……)  殆ど枯れたような人生で、セックスだけにのめり込んで、きっとこのまま自堕落に生きて、最終的に生きる電池切れたら死ぬつもりだった。 「なに考えてんの?」 「いや……なんか染々しちゃって」 「年寄りくさ」 「へへ、確かに」 「俺を独りにしないで」  唐突に云われたその言葉にまるで心臓を鷲掴みにされたように息を呑んだ。 「生きてよ、俺のために。いや俺だけじゃない、ダルジャンのドラコ達の為にも」  ナハトの瞳は真っ直ぐに俺を見ている。  いつか死のうと思って居た過去の自分を見透かされていた。 「じゃあ、」 「?」 「噛んでいい、よな?」 「ん、うん……噛んで……ナハトのモノに、して……」  俺の刈り上げポニテの髪をそっと避けて、指先が愛しそうにうなじを撫でるとナハトの竜牙がちくりと皮膚に穴を空け、歯が食い込んだ。  俺はナハトのモノになった。 「……ずっと、一緒。な」 「分かった……約束する……っ」  優しく抱き寄せられて、彼の温もりが心地良い。  ニカッと笑うナハトに頭をくしゃくしゃと撫でられて、何故だか涙が止まらなくて、男のくせして情けないかも知れないが、ホントに嬉しくて。  初めて人を好きになって、こんな俺でも、生きてて良いんだって。 俺は彼に生かされたんだ。  ──歪んだ俺は灰になった。

ともだちにシェアしよう!