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2 湯と鋏②
ざり、ざり、と鈍い音が響くたび、黒い束が浴室の床に落ちていく。少年はまた動かなかった。喉を切られると思っているのかもしれない、と思い、ユリアンは少しおかしくなった。
「殺すなら金を払わん」
そう言うと、少年の肩から力が抜けた。
そして——それがまずかった。緊張が解けた途端、痩せた身体がぐらりと傾いで、ユリアンの腕の中に倒れ込んできたのだ。
濡れた頭が、鎖骨のすぐ下に当たった。
ユリアンは動けなくなった。
人に触れられるのは久しぶりだった。正確には、何も要求せずに触れてくる人間に触れられるのが。手を取られるときは婚姻の話で、肩を抱かれるときは金の話で、唇を寄せられるときは——あの男のときは、翌朝には手紙になっていた。
この重さには、何の請求書もついていない。
腕の中の身体は熱かった。熱が高すぎる。ユリアンは舌打ちをして、濡れたまま少年を抱え上げ、扉を蹴って開けた。
「ゲルハルト。医者を叩き起こせ。今すぐだ」
廊下に飛び出してきた執事は、主人の姿を見て息を呑んだ。
シャツはずぶ濡れで、腕には裸の少年を抱えていて、その髪から滴った水が大理石に黒い跡を引いている。
二十年以上仕えてきたゲルハルトさえ、主人のそんな姿を見たのは初めてだった。
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