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5 成長①

5 成長  シリウスがベッドから起き上がれるようになった頃、仕立て屋を呼んだ。仕立て屋は巻尺を手にしたまましばらく絶句していた。痩せぎすのくせに肩幅が広いものだから、貴族の服の型紙ではどうにもならなかったのだ。三日でなんとか仕立てさせ、身綺麗にしてやった。  筋肉だけが付いた、痩せた身体は痛々しい。しかし、肩幅が広いから、服を着せて髪を整えれば、それなりに見られるようになった。少年らしい丸みはなく、頬がこけているが、よく見てみれば目鼻立ちは整っていた。  シリウスは驚くべき速度で食った。  熱を出して寝込んでいた最初の一週間は粥だけだった。しかし二週目に肉が入ると、皿を抱えるようにして食い、食い終わってから、盗んだのではないかという顔で周りを見回した。医者が食わせろと言っていたから、彼の皿だけ量を二倍にしてやった。  シリウスを拾って、三週間が経った。ユリアンは書斎の窓から中庭を見下ろした。シリウスが薪を運んでいる。誰も頼んでいないのに、朝から晩まで何かを運んでいる。何もしないでいると殺されると思っているのだ、とゲルハルトが言っていた。この三週間で、身体の傷は粗方癒えた。そして、少し背が伸びたように思う。 「シリウス」 「はい、閣下」  頭より高く積んだ大量の薪を背負ったシリウスにユリアンが近付くと、シリウスは肩をびくりと跳ねさせた。緊張しているようだ。 「そろそろ回復しただろう。おまえは、私の護衛にしようと考えている。今日から剣を習え」  そう言ってやると、シリウスは目をぱちぱちと瞬かせた。 「俺が、閣下の、護衛……」 「そうだ。筋が良ければの話だが」 「とても……嬉しいです。閣下をお護り出来るよう、頑張ります」  ◆  剣術の教師は、ザイフェルトという老人だった。王室の近衛を退いた男だ。  木剣を握らせて三合で、シリウスの素質を見抜いた。 「——閣下」  稽古場の隅で、老人は声を落とした。 「この者は、まずい」 「筋が悪いか」 「逆でございます。良すぎる」  ザイフェルトは顎をしゃくった。稽古場の中央で、シリウスは一つの構えを百回繰り返している。 「闘技場で覚えたものは、すべて殺すための動きです。手首から先で急所を取る。息を止めない。倒れた相手を必ず踏む。——そこに技を足せば、どうなるか」 「どうなる」 「護衛ではなくなります。殺しの道具になる」  ユリアンは頬杖をついたまま、しばらく稽古場を見ていた。シリウスの背中から湯気が立っている。九十九回。百回。百一回。誰も数えろとは言っていない。 「結構」 「閣下——」 「私の周りにいるのは、笑いながら毒を盛る連中だ」  ユリアンは立ち上がった。 「品のいい護衛など要らん。鍛えてやれ。全部だ」

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