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5 成長②

 シリウスの成長は、人より早かった。  一か月で、頬がついた。  二か月で、鎖骨の下の窪みが埋まった。  三か月目、仕立屋が二度目の採寸に来て、再び、巻尺を持ったまま絶句した。 「……閣下。前回から、丈が四寸出ております」 「四寸」 「三月でございますよ。三月で四寸は、その、人間の伸び方では」 「作り直せ。今度は大きめに」 「どのくらい大きめに」 「……見当がつかん」  ユリアンは正直に言った。 「三月ごとに来い」  そうして、四ヶ月目のある朝。理髪師が髪を切りにきて、仕立て屋が新しい服を持ってきた。  ユリアンが書斎の扉を開けさせたとき、そこに立っていたのはまるで別人だった。  少し伸びていた黒髪は耳が出るまで短く整えられて、まだ細身なものの背筋は伸びている。濃紺の上着。糊の効いたシャツ。首元まできちんと留められた|釦《ぼたん》。大きめに作らせたはずが、採寸してからまた伸びて、身体にぴたりと合っている。このところ、伸びた手足が裾から飛び出て、今にも釦が飛びそうになっておかしかったから、ずっと見栄えがよくなった。  元々整っていた顔立ちは、ぐんと大人びたように見える。眉が濃く、鼻梁が高い。そして、昏い檻の中に閉じ込められ、殺し合えと教わってきた青い瞳。いくら身綺麗にしてみても、目だけは変わらず無垢な獣のままだ。  ユリアンは椅子の背にもたれ、上から下まで、時間をかけてそれを眺めた。  そして、面白そうに目を細めて笑った。 「——なかなか様になったじゃないか」  シリウスの顔が、赤くなった。  泥の中で蹴られても声を上げなかった人間が、たったそれだけで赤くなった。耳まで。首まで。糊の効いた襟の中まで。  ユリアンは、この一年で一番愉快な気分になった。

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