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8 嫉妬①
8 嫉妬
さらに一年が過ぎた。
シリウスは二十になり、屋敷の誰より背が高くなり、痩せていた身体には無駄のない重さがついた。
剣、短剣、拳銃、組み技。読み書きに加えて数学と地理と、三カ国語。ゲルハルトを唸らせる給仕の作法。伯爵夫人にも完璧な角度で礼をするようになった。
変わらなかったのは、目だけだった。
どれほど服を着せ、言葉を教えても、彼は無垢な獣の目をしていた。その目は、たった一人だけを映していた。
「シリウス。夜会に付いてこい」
「はい、閣下」
シリウスが十七になった頃から、屋敷の中では傍に仕えさせていた。
十八からは、遠方の視察に同行させた。
けれど夜会に同行させたのは、二十になったこの日が初めてだった。
勿体ぶっていた。自分が泥から拾い、手ずから洗って磨いた宝物を、見せびらかしたくて堪らなかった。けれど、時が来るまで我慢していた。拾ってから四年経った同じ日——今日がその時だ。
「夜会というところは、華やかですね」
「はっ。くだらん、つまらん、退屈な場所だ」
煌びやかな夜会の喧噪を、シリウスは従順な犬——或いは護衛として、ユリアンの半歩後ろをぴたりと付いて歩いた。
夜会のドアを開けたその瞬間から、ざわめいた。小声で貴族たちが噂している。あの従者は何者なのか。どこの家の血なのか。公爵はどこであれを見つけたのか。
無理もなかった。この会場の誰より背が高く、肩幅が広く逞しく、黙って立っているだけで人が道を空ける。礼は完璧で、語学も堪能、そして何より——あの目だ。誰と話していても、視線の半分は必ず主人に残っている。番犬の目だと言う者がいた。恋人の目だと言う者もいた。後者は、扇の陰で囁かれた。
ユリアンはただ、いつものように完璧な角度で微笑み、何も答えなかった。答えないことが、いちばん彼らを苛立たせると知っていたからだ。
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