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白熱する選挙戦に、この想いを込めて㊷
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「もしもし。はい、葩御(はなお)8100。元村16500」
陵を信じて投票した有権者が自分の予想を超えていたことに、内心安堵のため息をついた。
若者よりも年配者の多い地区だけに、スキャンダルな過去の出来事が明るみになった時点で、クリーンな政策を推し進める元村が優勢なのは目に見えていた。
だからこそ、もっと差がつくと考えていた。それなのに元村と半数あまりの開票差は、まだまだ先が分からないだろう。
「二階堂、お前はこの差をどう見る?」
その場にいるスタッフが陵に労いの言葉をかけている間に、腕を組みながら隣で座っている二階堂に疑問を投げかけてみた。
「開票がはじまったばかりなので、こうなるという確証は言えないですが、ギリギリまで陵さんが追う立場になるでしょうね」
「その理由は?」
「テレビで例の件が放送されましたが、地元で3日間遊説せずに追い込みをかけられなかったのが、やはり痛かったと思います。それと昨日街頭で、無記名によるアンケート調査をしてみました」
二階堂のセリフで、昨日午後から彼が不在だったことを思い出す。確か手の空いてるスタッフも、数名ほど一緒にいなくなっていた。
「そんなことをしていたなら、俺にも声をかけてくれたら良かったのに」
「秘書さんは陵さんの傍で、不安定になっているメンタルを支えてほしいと考えたので、あえて声をかけませんでした」
「さすがは選挙プランナー。陵の精神状態から有権者の動向を考えて仕事をするなんて、俺には絶対に真似ができない」
「僕では陵さんの傷ついた心を癒すことはおろか、支えることもできませんから。秘書さんには敵いません」
互いに目線を合わせて苦笑いしているときに、ふたたび電話が鳴った。
これ以上の差が開きませんようにと願いながら、電話に出たスタッフの声に耳を傾ける。
二階堂は眼鏡のフレームを上げながら、ホワイトボードに鋭い視線を飛ばしていた。耳からの情報と共に数字で現状を把握しようとしているのが、真剣な横顔から伝わってきた。
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