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act:驕傲 【キョウゴウ】④

「ぁっ……んっ、ンッ!」  ベッドの上、克巳さんに抱かれている自分――これでもう何度目だろう。心が置き去りにされたままの虚しい行為に、自分の躰なんかどうなってもいいと思ったのは。 「ひゃぁあっ……ふぁぁっ! あ、ぁ、あっ」  気持ち悦くても悪くても、喘ぎ声をふしだらにあげているのは、感じてる俺の姿を見て、ヤってる男が悦ぶから。悦ばせれば、次の仕事が貰えていたから――だけど克巳さんからは、何も貰えないのに。  ――どうしてこんなに、感じているんだろう? 「アっ……、ふぁっ、あっ! ソッコ、あぁあん!」 「ココが、気持ちいいのか?」  うつ伏せでいる俺の腰を、両手で強引に持ち上げて、その部分を容赦なくグイグイと突き上げる。 「あっン、はぅうぅ……やらぁッッんん、あふっ、やっ、凄い当たるっッ!」  快感に身を任せている間は楽だ。それだけを感じていればいいのだから。見たくない現実も、信じたくない事実も全部、忘れることが出来る。 「稜、もっと感じてくれ。俺自身で感じてる君の姿を、もっと見ていたい」  そう言って後ろから、ぎゅうっと抱きしめてきた。克巳さんの躰、すっげー熱い。汗ばんだ皮膚が、俺の背中に張り付いてくるみたいだ。 「好きだ、好きだ稜。愛してる――」  愛、してる……? 「くっ、そんなに締めあげないでくれ。俺もう、イきそ……ッ」 「克巳さ……、あぁあ……、んっ! 俺もイくっ!」  髪を振り乱し仰け反って先にイくと、痙攣したままの俺を抱きしめ、ちょっと遅れて、克巳さんも中でイった。  うつ伏せのまま、ドロドロした頭で考える。こうやって奪っちゃえば、もしかしたらリコちゃんは愛してくれるかもしれない。たくさんの愛を注ぎ込めば、今の俺みたいに伝わって、きっと分ってくれるかもしれない。だから……  俺以外の誰も、彼女に触れられないようにしてやろうと考えついた。  リコちゃんのすべてを、自分のモノにするために――俺の中にある独占欲で、君を縛りつけてあげるよ。

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