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白熱する選挙戦に、この想いを込めて――(プロローグ)②

 生死の境を彷徨った俺。一時、意識不明の重体から危篤になったんだよと、悲壮な顔をした稜が教えてくれた。  俺を刺した男はその場で現行犯逮捕され、傷害事件として立件されたのだが、供述が二転三転したお陰で無差別な犯行として、ニュースで流れたのだった。 「済まない……。恋人の俺が刺されてしまったせいで、芸能活動を自粛しなきゃならないなんて。君はただ、傍にいただけだというのに」 「いいってば、俺のことは気にしないで。むしろ、チャンスだと思ったから」  飾り気のない病室の中なのに、稜の周りを取り囲む空気が違って見える。印象的に映る眼差しはヘコむことを感じさせず、逆に静かに燃えている感じに見えた。 「……チャンスって、どこが?」 (稜の出番が、減ってしまったというのに――) 「夢の実現に向けてこれからは、報道番組みたいなものに出演していこうと思うんだ。世の中のことをもっと深く知らなきゃいけないだろうし、最低限の知識も必要でしょ。だから俺はやる」 「稜、君は――」 「痛い思いをさせてゴメンね。それに見合うだけの大きな夢を、克巳さんに見せてあげる。だからこれからも、俺の傍にいて……」  こうしてピンチをチャンスに変えた稜は宣言通り、報道系の番組を中心に出演していった。ときには災害現場まで赴きリポーターを勤め、危ない橋を渡ることもしばしばあったせいで、俺の心配は尽きることがなく、ハラハラさせられっぱなし。  俺が愛した綺麗な華は、その色を変えても艶やかさはそのままに、テレビで大々的に活躍していったのだった。

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