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白熱する選挙戦に、この想いを込めて――⑦
「図星を突かれてイライラしても、そんな顔を、有権者に見せてはいけません。ちなみにそんな顔さえ、僕には魅力的に映りますけどね」
(へぇ、下半身に節操なしの選挙プランナーは、口も達者だってことか。年下だからって舐めてかかったら、ほいほい落とされちゃうかも)
「それじゃあストレスが溜まったら、はじめに八つ当たりさせてもらう。使い勝手のいい男が傍にいるのは、すっげー楽だわ」
言いながら、掴まれた腕を外そうとしたのに、更に握り締めてきた。
「……はじめ、いい加減にこれ、放して欲しいんだけど。マジで痛いよ」
「放してほしければ、僕と付き合ってください」
メガネの奥から見つめてくる眼差しは、真剣そのものだったけれど、言い慣れているから、出来るものかもしれない。しかも力技でこんな風に、自分のものにしようなんて、浅はかな男だな。
まるで付き合う前の、克巳さんみたいじゃないか。
「放さないなら、殴りつけるまでだけど。こんなことして、付き合うと思ってるの?」
バカらしいと口にする前に、掴んでいた手が別の手によって、引き離してくれた。
「選挙プランナーと候補が言い争って、何をしているんだ?」
はじめと俺の間に割って入り、大きな背中で守ってくれる克巳さん。誰もいなければ、身体にぎゅっと縋りつきたい気分だ。
「何って、原因を作っていた秘書さんに、とやかく言われたくはありませんね」
「原因?」
「デリケートな時期なんですから、ちゃんと考えて行動していただかないと困るんです。僕なら絶対に、恋人を不安にさせるようなことをしない。それが出来ない貴方から、稜さんを奪ってみせます!!」
小声だったけど、力強く言い放たれた言葉は、俺と克巳さんを充分に困惑させるものだった。ふたりして固まったまま、その場から動くことが出来なかったのである。
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