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白熱する選挙戦に、この想いを込めて――⑪
「……噂なんですが彼は見境なく、誰にでも手を出すとか?」
党の幹部からの情報を、さりげなく口にしてみる。
「あー。そういう噂話まで、相田さんの耳に入っちゃってるんですか。それって、逆なんですけどね」
「逆?」
「はじめちゃん、クールでイケメンでしょ。あちこち行くたびに、事務所にいる若い女のコが迫るんだけど、忙しさを理由に断っているらしくて。恨んだ誰かが、変な噂話を撒き散らしているみたいです」
モテる男というのも、実際は大変なんだな――
「ちなみに私は、幼馴染みを武器に迫って、渋々交際に持ち込んだんですけど、恋人のような感情を抱けないって言われて、あえなく振られちゃいました」
ずっと好きだったのにと、寂しげに呟いてから、いきなり俺の背中を、ばしんと叩いてきた。
「はじめちゃんが男に走るなんて、全然思ってもいなかったんですけど、とにかく負けないでくださいね!」
その言葉に少しだけ微笑んでから静かに頷くと、切なげに瞳を揺らして、じっと前を見据える。
(まだ、二階堂のことが好きなんだな)
彼女のことを応援してやりたいのは山々なれど、自分の不器用さを考えたら、彼の手から稜を守るのが精一杯かもしれない。
心の中でそっと詫びながら、これからはじまる打ち合わせに、集中することにした。
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