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白熱する選挙戦に、この想いを込めて――⑬
「ですが残念ながら、悪目立ちした印象が有権者に強く残っているため、印象の薄い元村氏に、票が流れたと思います」
「ちょっと待ってくれ!」
二階堂の見解に異議を唱えるべく、慌てて手を上げた。
「何でしょうか、秘書さん」
「彼の悪目立ちといっても、随分と前の話じゃないか。毎週、週刊誌にスクープされていた時期を考えると、近年の報道関連の仕事で、随分と印象が変わったはずだろう?」
「当然のことですが人は、良い印象よりも悪い印象のほうが残るものです。たとえそれが、どんなに昔のことであっても。その結果がこれなんです」
メガネのフレームを光らせ、堂々と告げられた言葉は、反論する余地のないものだった。
「それと、秘書さんが考えてくださったキャッチフレーズなんですが、少々長くて分かりにくいので、却下させていただきます。次ページに書いてあるそれを皆さん、横線で消してください」
そんなこと、俺に書類の修正を伝えたときに、言えば良かったものだろう。どうしてわざわざ――
「コイツは仕事の出来ない人だと、周りに思わせるために、決まっているじゃないですか」
隣でコソッと呟くように言い放ち、気だるそうな顔をして頬杖をつきながら、白い目で見つめてきた彼女。
「相田さんさっきから、心の中が丸見えになっていますよ。顔に出過ぎです」
「えっ?」
思わず、口元を押さえてしまったが、時すでに遅しと言ったところか。
「減点方式で相田さんを陥れようとしている、はじめちゃんの罠です。気を付けてくださいね」
ちょっとしたことで狼狽える俺は、二階堂にとって、格好の餌食なのかもしれないな。
「ありがとう。こんな風にあからさまに、敵視されたことがないから、対処に困ってしまいました」
肩を落として告げると、何だか可愛いなんて言われてしまい――余計に困ってしまった。
そんな楽し気に話し込んでいる姿を、ポーカーフェイスを維持したまま、稜が横目で捉えているなんて思いもよらず、彼女からのアドバイスに耳を傾けたのだった。
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