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第11章 自主練習

 注文していた品が届いたのは、三日後だった。 「きた」  放課後、実技棟の購買で箱を受け取ったリオは、思わず両手で抱え直した。  思っていたより大きい。  箱を見ただけで、少しわくわくした。  帰宅して自室へ入るなり、鞄を床へ置いて箱を机の上に乗せる。  紐を解き、蓋を開けた。 「おお……」  思わず声が出る。  見本で見たときより、実物のほうがずっと大きく見えた。  しかも一度選んだものから、わざわざ一つ上のサイズへ書き直したやつだ。  リオはしばらく眺めたあと、満足そうに頷いた。 「これなら練習になる」  簡単にできるものでは意味がない。  せっかく買ったのだから、ちゃんと使いこなせるようになりたかった。 「よし」  リオは袖をまくる。  やる気は十分だった。  技術なら練習できる。  少なくとも、今より上手くなることはできる。  カイルドに相手をしてもらうたび、自分ばかり精気をもらっている気がしていた。  もちろん研修なのだから、それでいいのかもしれない。  けれど。  どうせなら。  カイルドにも、リオでよかったと思ってもらいたい。 「やるぞ」  誰もいない部屋で、一人で気合いを入れた。      ◇  ベッドに座り、まずはいつものように舌を出した。  先端をぺろりと舐める。  形からして違う。丸くて可愛らしい先ではなく、張りのある頭に、はっきりとした段差がついている。  リオは舌で形を覚えるように、丁寧に舐めていった。  凹凸の谷へ舌先を滑らせ、側面を濡らし、根元近くまで唾液を絡める。  口の中で転がすだけでも重い。  いつもの軽い玩具とは違って、顎が先に疲れてきた。  次に、そのまま口へ含む。  いつものものなら、すぐに根元近くまで入る。  けれど、これは違った。  太い。  長い。  少し深く咥えただけで喉の奥へ触れ、思わずえづく。  目尻に生理的な涙が滲んだ。  それでも、黒い棒はまだかなり口の外へ残っている。  リオは一度口から離し、余った長さを指で確かめた。 「…………」  大きさを間違えたかもしれない。  注文票に書いた数字を、最後の最後で一つ上へ変えたのは自分だ。  もう受け取ってしまった。  今さら戻せない。  リオは再びそれを咥え、空いた手でローションを取った。  入口へたっぷりと塗り、指を沈めていく。  口元では、濡れたシリコンが動く音。  後ろからは、ローションを含んだ指が出入りする音。  静かな部屋に、二つの湿った音だけが重なった。  ただの練習のはずなのに、耳に入ってくる音だけは妙に生々しい。  十分に身体を慣らしたところで、リオは四つん這いになった。  黒い先端を入口へ当てる。  ローションで濡れているのに、大きすぎて何度も縁を滑った。  片手で先を固定し、ゆっくりと腰を押しつける。 「っ……大きい……」  声が漏れた。  見た目以上の圧迫感だった。  少しずつ押し広げられ、段差が内側を通っていく。  その途中で、いつもの弱い場所を擦られた。 「あ……っ」  腰が震えた。  脚を開いたまま、尻だけが浅く揺れる。  けれど、今日は自分が楽しむために買ったわけじゃない。  カイルドとの夜は、気持ちよすぎる。  弱い場所を丁寧に責められているうちに、いつも何も考えられなくなって、最後にはされるがままになってしまう。  それでは駄目だ。  自分だって、もっとカイルドを気持ちよくできるようにならなければ。  リオは黒い玩具をさらに深く押し込んだ。  小さなピンク色のものとは違い、まだ入る。  いつもの深さを越えても、長さが残っている。  少し動かすだけで前立腺へ鈍い刺激が来た。 「んっ……」  本番の夜を思い出した途端、腰が前へ逃げる。  けれど、握った手は止まらない。  逃げた分だけディルドを追わせ、また同じところへ当てる。 「ああああんっ」  腰が逃げる。  手が追う。  また擦れる。  開いた脚のあいだで尻はあさましく揺れ、その奥から黒い棒だけが濡れて覗いていた。  強すぎると身体は逃げたがるのに、手だけは同じところを追い続ける。 「……っ、だめ。今日は、練習……」  自分に言い聞かせる。  これをカイルドのものだと思えばいい。  相手を悦ばせるつもりで、内側へ力を込める。  締める。  少し緩める。  また締める。  抜き差しをするたび、太さも、段差も、中ではっきり分かった。  息に甘い声が混じる。  外から長さを確かめれば、まだ余っている。  それなのに、腰はもう何度も前へ逃げていた。  リオは四つん這いから身体を起こした。  今度は台座をシーツへ押しつけ、自分で腰を下ろしてみようと姿勢を変える。  そのとき、何気なく顔を上げた。  ドアが開いていた。  カイルドが立っていた。 「――っ!?」  ばっちり目が合った。  どこから見られていたのだろう。  さっきまで開いていた脚も。  黒い玩具を咥えたまま揺れていた尻も。  頭に浮かんだ途端、顔が一気に熱くなった。  リオは手近な布団を引っ張り、頭から被る。 「……それ、新しいのか」 「見ないでください!」  よりによって最初にそこを聞くのか。  こつ、こつ、と足音が近づいてくる。 「前に使っていたのとは違うな」 「そこ覚えてなくていいですから……!」  布団が捲られた。 「ちょ、団長……!」  隠したはずの身体が、再び露わになる。  黒いディルドはまだ抜けていない。  カイルドの視線がそこへ落ちた。 「それ、学校で買ったのか」 「……購買部、です」 「実技用?」  リオは布団へ顔を埋めたまま、小さく頷いた。  カイルドはそのままディルドの台座へ手をかけた。 「え――」  浅く動かされる。 「あっ……待って、ください……っ」  さっきまで自分で動かしていたものなのに、途端に感覚が変わった。  腰が前へ逃げる。  自分の手ならそこで止まる。  けれど、今は止まらない。  カイルドの手が逃げた腰を追い、同じ場所へ凹凸を戻してくる。 「んっ……あぁ……っ」  リオはそのまま腰を高く上げ、枕へ顔を埋めた。  前立腺を擦られるたび、身体が逃げる。  逃げても追われる。  時折さらに深く押し込まれると、奥まで一気に押し広げられた。  枕へ押しつけた口元から、息と一緒に涎が漏れる。  声を抑えようとするほど、濡れた音だけが耳についた。  ふいに、動きが止まった。 「……っ」  リオは肩で息をする。  腰は逃げた位置のまま。  それでも、内側だけが反射的にきつく締まった。  カイルドは動かさない。  ただ、そのまま見ている。  リオは枕から目だけを上げた。  視線が合いそうになって、すぐに逸らす。  次の瞬間、台座がまた動いた。 「あっ……!」  さっきと同じ一点へ戻ってくる。  カリの段差が何度もそこを越えた。  膝がシーツの上を滑り、脚がさらに開く。 「んぁ……っ、そこ……」 「この大きさで練習してたのか」 「そ、です……っ」 「随分思い切ったな」 「……だって……練習、だから……っ」  奥まで押し込まれる。 「んあっ……!」  腹の底まで形が分かる。  熱のない玩具のはずなのに、カイルドが動かすだけでまるで違った。  自分なら逃げれば止まれる。  今は逃げても、追ってくる。 「足りないなら言えと言っただろう」 「ちが……っ、これは……そういうのじゃ……」 「じゃあ何だ」  また前立腺を擦られる。  リオは枕へ顔を押しつけた。 「っ……練習……です」 「何の」 「もっと……上手く、なりたくて……っ」  言葉の途中で息が乱れる。 「俺、魅了も……下手だし……できないこと、多いから……」  カイルドは何も言わなかった。  ディルドだけが、ゆっくりと動いている。  リオは何度か息を継いでから続けた。 「だから……せめて実技くらい……ちゃんと、できるように……なりたいんです」 「もう十分できているだろう」 「足りません」  そこだけは、すぐに答えた。 「もっと上手い淫魔……いっぱい、いるし……」 「それがどうした」 「どうしたって……っ」  また刺激が来て、続きが声にならなかった。  リオは枕へ顔を伏せ直す。 「……とにかく、練習したいんです」 「それで一人で?」 「一人じゃないと……できないでしょう」 「なぜ」 「なぜって……」  リオが顔を上げた。  カイルドは相変わらず真顔だった。  台座を持つ手だけが止まっている。 「練習相手が必要なら、俺がやる」 「……はい?」 「玩具より実物のほうがいいだろう」 「ちょっと待ってください」 「実技の練習なんだろう」 「そうですけど……」 「騎士団の訓練と同じだ。実際に相手がいたほうが身につく。それは俺が保証する」  そう言って、カイルドはディルドを引き抜いた。  リオは四つん這いのまま、すぐには身体を起こせなかった。  しばらくしてから振り返る。 「……本気で言ってます?」 「ああ」  カイルドの答えには、一秒の迷いもなかった。      ◇  カイルドは引き抜いた黒いディルドをシーツの端へ置いた。  リオの後ろは、開いたまま小さく収縮している。  四つん這いの腰はまだ高い。  枕は涎で暗い染みを作っていた。 「実物でいく」  カイルドはローションを足さなかった。  すでに十分濡れている。  熱い先端を縁へ当て、ゆっくり沈める。  玩具より脈があり、温度がある。  カリの段差が大好きなしこりを擦った瞬間、リオの肘が滑った。 「あっ……熱い、本物……っ」  根元まで入る前に、カイルドは一度止めた。  沈めたまま角度だけを変え、前立腺へ先を押し当てる。  小さく腰を揺らす。  当たるたび、リオの先がシーツの上で跳ねた。  カイルドは空いた手をリオの腿のあいだへ回し、熱を持って立ち上がったものを掌に収める。  前後のリズムを合わせた。  奥でしこりを擦るたびに、手前も同じ速さで扱く。  弱くない。  逃がさない。  リオの腰が逃げようとすると、握った先を根元まで扱き下ろして止める。 「んあっ、一緒に……だめ、両方……っ」  そこで、カイルドがふと思い出したように口を開いた。 「そういえば、具体的に何の練習をしてたんだ?」 「え……っ」 「大きいのを入れる練習だけじゃないんだろう」  リオは一瞬黙った。  腰は逃げるように前へずれているのに、奥は埋まったものをきゅっと締めつけた。 「……締め方、とか……」 「締め方?」 「あと、自分で動くのとか……っ。俺、団長とすると、いつも気持ちよくされてばっかりで……途中から、ほとんど何もできなくなるから……」  途中で息を詰まらせながら、リオは続けた。 「だから……ちゃんと俺からも動けるようになりたくて。どこで締めたら気持ちいいとか……そういうの、練習してました」  カイルドは少しだけ黙った。  腰の動きを止めたまま、内側の締まりを確かめるように待つ。 「俺を気持ちよくする練習?」 「……そうです」 「なら、玩具相手じゃ分からないだろう」 「え……」 「締める強さも、動く速さも、相手によって反応が違う」  淡々と言われて、リオは言葉に詰まった。 「……それは、そうですけど」 「なら俺相手にやれ。反応くらいは教えられる」  そう言いながら、カイルドは一度浅く引き、今度はゆっくり奥まで沈み直した。  玩具で届いた場所を、今度は熱い脈が押し開く。  リオの腹が落ち、尻だけが高く残る。  言われたばかりの「練習」を思い出し、リオは試すように奥へ力を込めた。  熱いものが根元まで咥え込まれ、カイルドの腰が一度止まった。 「きついな」  わずかに乱れた息が混じった。 「気持ちいいぞ。そのままやれ」  リオは枕に顔を埋めたまま、もう一度締めた。  反応が返ってきたことが嬉しくて、今度は意識して強弱をつける。  けれど、締めるたびに内側では前立腺へ硬い先が押し当てられた。  腰は逃げる。  穴は離さない。  カイルドはそこを短い動きで繰り返し、掌では先端を避けて茎と袋だけを刺激した。  先端がひどく敏感なのは、以前リオ自身が口にしている。  カイルドはそこだけを残し、じわじわと熱を溜めていった。 「出る……っ、触らないで……あ、だめ、イく――っ」  白いものがシーツへ落ちた。  射精の震えが収まりきる前に、カイルドの手が上へ滑る。  今まで避けていた敏感な先端へ、今度は指の腹が触れた。 「まだいける」 「待って、出したばかりで……っ、あっ、ああんっ」  先が痙攣する。  白濁のあとに、薄い熱が噴いた。  潮がカイルドの指を伝い、リオの腹を濡らす。  後ろはきつく締まり、中に埋まったものを離さない。  リオは枕に顔を埋め、涎と涙でさらに濡らした。  カイルドは腰を抱えたまま、短い動きを再開する。  太く充血した前立腺を擦り、結腸の手前をとんとんと叩く。  柔らかい内壁が侵入を拒むように反射的に縮んだ。  散々ディルドで慣らしたあととはいえ、そこまで押し込まれるたびにリオの身体は逃げようとする。  けれど、数度繰り返すうちに、強張っていた内側が少しずつ受け入れていった。  手前では、敏感な先を指で転がし続ける。  出したばかりの身体は、逃げたがっているのか求めているのか、自分でももう分からない。  腰は逃げる。  穴は咥える。  先は噴く。 「きもちいい……っ、奥も、先も……わけ、わかんない……んあっ」  精気が、繋がった肌や粘膜からリオの中へ流れ込む。  玩具にはなかった熱だ。  カイルドは最後まで止めず、リオの先をもう一度親指で潰すように転がした。  乾いたはずの射精のあとに、また潮が短く跳ねる。  その瞬間、奥が根元まで絡みついた。  カイルドの呼吸が、はっきり乱れる。 「……出る」  それまで一定だった腰が深く沈み、そのまま止まった。  熱いものが奥へ溢れる。  リオの膝から力が抜け、四つん這いの形が崩れた。  精気は、射精の脈に乗っていちばん深いところへ落ちていく。  カイルドはリオの背中へ胸を寄せ、低く言った。 「本番のほうが、覚えるだろ」  リオは枕に潰れた声で、小さく頷いた。  練習したかったはずなのに、最後にはまた何も考えられなくなっていた。

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