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6 その関係を始めた理由は
「凌平?どうした。顔、赤いぞ。熱でもあるのか?」
「あっ……」
真介が頬に触れてきて、びくりと肩を震わせてしまった。
「何だよ、その反応。勘違いするからやめろ。ほら、講義行くぞ」
真介は俺の手を引っ張り、強引に歩かせる。
俺は真介に手を取られただけでバカみたいに上がってしまった。
な、何だよこれ。
相手は男、しかも真介だぞ?
とは思うものの、思い返すと、真介は今まで俺のためにしてくれたことがたくさんあることに気がついた。
塩原がストーカーされていた時も、一緒に解決しようとしてくれて、本当に捕まえてしまったし。
影鷹の件だって……。
それに、外見なんかこんなにかっこよくなってしまって。
俺は急に真介が物凄く魅力的に見えてきて、ドキドキするのが伝わってしまわないか気が気じゃなかった。
真介も俺にキスしてきたってことは、そうなんだよな?
でも、男と付き合っても……。
いや、真介となら……。
俺は覚悟を決めた。
「真介、昨日の返事決まった」
真介が足を止め、はっとしたように俺を見る。
「俺、お前と……」
「待った。ここは人がいるから、こっち」
真介は俺の腕を引き、校舎裏に出た。
人気がなくなった途端に、ぐんと緊張感が増す。
「返事を聞かせてくれ」
真介が振り返って俺を見る。
俺はその強い眼差しに怯みそうになりながらも、必死で見つめ返して答えた。
「俺、真介と付き合いたい」
「……そうか、分かった」
真介の口許に笑みが浮かぶ。
思ったより喜んでいなそうなことに不思議に思った時、真介は俺をぐいっと抱き寄せて耳元で囁いた。
「影鷹が見ている」
「えっ?……んぅ……」
口付けられたことでまともな思考が霧散していく。
最初に口付けられた時も嫌ではなかったが、自覚すると感じ方が全く違った。
「んっ……」
唇は意外なほどあっさり解かれ、もどかしく思う俺は、半ばぼうっとしながら真介が見ている方向に目を向ける。
そこにはこちらを睨むように見る影鷹がいた。
「影鷹……」
「後悔するぞ、凌平。そいつの噂、俺は高校の時のダチに聞いた。そいつは……」
「噂なんて関係ないよ」
俺は影鷹の台詞を遮り、真介の腕を引く。
「真介、講義に行こう」
「凌平!」
俺は影鷹の声を無視して、真介と共に歩く。
高校の時も真介とつるむ度に、周りから様々な忠告を受けたが、一度たりとも耳を貸したことはない。
実は影鷹とは中学の時から友人だったのだが、彼もまた中学時代は嫌われ、いじめられていたことがあった。
俺はそこから救ったとかではないが、周りから何と言われようとも関わり続けたため、今思えばそれで好意を持たれるようになっても仕方なかったのかもしれない。
高校に上がってからは影鷹も他に友人ができ、いじめられることがなくなった。
ただ、そんな影鷹と真介には決定的に違う点がある。
影鷹は嫌われることを気に病んでいたのに対し、真介は寧ろ嫌われることを全く気に留めず、好んで一人でいるようだった。
だからそれを影鷹が異常と見るならば、無理もないのかもしれないが、俺にはその反対の感情を抱かせた。
「真介」
講義室に辿り着くと、早速講義が始まった。
俺は隣にいる真介に小声で呼びかける。
振り向いた真介に、ノートに走り書きしたメッセージを見せた。
『俺は、昔からお前のこと尊敬してる。周りからどう言われても気にするな』
それを読んだ真介は、目を見開いて俺を見る。
そして、机に置かれた俺の手をそっと包み込んだ。
俺は手のひらを裏返して真介と手を繋ぐと、今まで感じたことのないほどの温かな感情を抱いた。
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