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Day1-5
メインフロアに足を踏み入れると、大音量で流れるクラブミュージックに驚かされる。
久しぶりなこともあり、振動を感じるほどの音に体が強張るのを感じた。
“これは‥酒を飲まないとやってられないな”
そう思い、バーカウンターの方へ目を向ける。
入り口付近と中央部の二ヶ所にはスタッフがおり、客の少ないこの時間は手持ち無沙汰なようだ。
メインフロアは正方形のような形をしており、出入り口側にバーカウンター、その向かいにDJブースがある。
両サイドはカップルシートがいくつか並んでおり、そこで交流を深めることもしばしばだ。
バーカウンターの突き当たりにはサブフロアへ続く通路がある。煙草が吸えるのはサブフロアだけなので、ほとんど喫煙所と化しているが、あまり来る人がいないため、落ち着いて過ごすことができる。
“煙草も買ってくるんだったな”
元恋人の影響もあり、半年の間は吸っていなかった。
やめられないわけではないが、こういう場では気持ちを落ち着かせるのにちょうどいいのだ。
地に足がつかない感覚のままぐるりと辺りを見渡すと、バーカウンターの一番奥から手招きする林田が見えた。
「もう、ぼーっとしちゃって」
どうやらしばらくそうして合図してくれていたらしい。
「全然気づいてくれないんだから」とむくれながら、二つのショットグラスにテキーラを注ぐ林田。
志乃は胃に何も入れずに来てしまったことを、激しく後悔した。
「では、再会を記念して‥」
なみなみ注がれたテキーラの上に置かれたレモン左手で取り、かちりとグラスを合わせる。「乾杯」の合図で酒を流し込むと、二人はすぐにレモンを齧 った。
食道と胃が焼けるような感覚が懐かしい。レモンの酸味では誤魔化しきれない、独特の風味に思わず顔を顰 めた。
「わざわざすみません。‥ごちそうさまです」
「いいのよ。今お酒も出すから‥ハイボールで良かったかしら?」
林田は空いた二つのグラスを下げ、プラカップに氷を入れていく。
「覚えててくれたんですか」
「当たり前じゃない。あの頃の志乃ちゃん、スタッフの中でも人気だったんだから」
本当かどうかも怪しい話に苦笑いを浮かべながら、志乃は財布を取り出す。
ドリンクチケットは、例の彼 からお酒を買う時に取っておこうと思ったのだ。
「もうっ‥お代はいらないわよ」
「何言ってるんですか。さすがにこれは受け取ってください」
千円札を銀色のトレーに置き、炭酸がパチパチと弾けるハイボールに口をつける。
林田は「そういうことなら」と不敵な笑みを浮かべると、テキーラグラスをカウンターに並べた。
「もう一回、乾杯しましょ」
酒豪で有名な林田の肝臓は、今もまだ現役なようだ。
二杯目のテキーラを飲み干した林田は、腕時計を確認して慌ててグラスを片付ける。
「本当はもっとゆっくり話したかったんだけど、ごめんなさいね。あたし結構偉くなっちゃったもんだから‥またあとでね!」
彼は早口でそう捲し立てると、「楽しんでいってね」とカウンター越しに志乃の肩を叩いた。
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