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Day2-2
二人の間の沈黙を破ったのは、ぐうっという何とも間抜けな腹の虫が鳴く音だった。
あまりの恥ずかしさに思わず顔を伏せると、頭上から珠希の笑い声が聞こえてくる。
「お腹空きましたよね。僕もお昼まだなんで、よかったら適当に作りますよ」
「そんなの‥迷惑になるだろう?」
「一人分も二人分も大して変わらないですから」
そう言い残し、男はリビングを出ていった。
_何だか甘やかされている気がする。
クラブで出会った時は、あまり感情が読み取れないクールな人とばかり思っていたが、実際には世話焼きなタイプなのかもしれない。
昨夜の出来事を思い出してみても、うがいをさせ口元を拭いてくれたりと、至れり尽くせりだった。
いや、あれは一種のプレイだったのか_。
「うどんとか雑炊みたいに、軽く食べられるものがいいですか?」
聞こえてきた男の問いかけに、はっと我に返る。
ベッドから立ち上がり、声のする方へと向かうと、冷蔵庫の中を眺める珠希の姿があった。そこからペットボトルの水を取り出すと、「良かったらどうぞ」と手渡してくれる。
「‥ありがとう。正直今なら何でも食べられそうだよ」
「夕飯も食べてないんですもんね」
男の含みのある言い方に、バツが悪くなり視線を逸らす。あからさまなその態度に珠希はくすりと笑い、冷蔵庫を閉めると、少しその場で考え込むように立ち止まった。
しばしの沈黙の間、志乃は貰った水を飲みながら ぼんやりと辺りを見渡す。
玄関までの通路の左側がキッチンになっているようだ。自身も大学生の頃、似たような1Kの部屋に住んでいたため、どこか懐かしさを感じた。
リビングを出てすぐの場所に冷蔵庫があり、その上に電子レンジ、さらには電気ケトルが置かれている。
「インスタント麺もありますけど、どれにします?」
珠希は流しの上の収納を開けると、そう言いながらこちら振り向いた。
昨日の夜からご飯を食べていないのもあるが、昨夜のうちにアルコールを吐いたことで、二日酔いにしては食欲がある。
収納棚の中にちらりと見える味噌味のインスタントラーメンのパッケージが、さらに空腹感を覚えさせた。
「じゃあ、ラーメンで‥」
珠希は「はい」と言って微笑むと、おもむろに髪を結び、インスタント麺に手を伸ばした。あらわになった真っ白なうなじと二の腕に、思わず目が釘付けになる。
外見からは、全くと言っていいほど雄らしさは感じられない。例えるとするなら、“正統派のアイドル”だ。端正な顔立ちの中に可愛らしさを加えたような_。
専 ら面食いの自分が惹かれたのも頷ける。
この見た目で、まさか“抱く側”だったなんて。
初めて出会ったあの瞬間には、予想だにしなかったことだ。
「二袋くらい食べられそうです?」
「あ‥うん。ありがとう」
「リビングで好きに過ごしててください。志乃さんに見られてると‥緊張しちゃうんで」
まるで視線に気づいていたかのような口ぶりに、ぎくりとする。誤魔化しても無駄だと悟った志乃は、素直に「ごめん」と謝った。
「少しでも意識してくれてるなら嬉しいですけど」
そう言いながら流しで手を洗った男は、冷蔵庫から食材を取り出し始める。
どうやら野菜炒めも乗せてくれるらしい。
思いもよらない家庭的な一面に感心しつつ、志乃はタイミングを見計らって口を開いた。
「あの‥トイレ借りてもいいかな?」
この時は思いもしなかった。
トイレの中で昨晩の出来事を思い出したせいで、昂 りが落ち着くまで出られなくなるなんて_。
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