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Day2-3

リビングへ戻ると、ベッドのすぐ横にあるローテーブルに、自分の荷物をまとめて置いてくれていたことに気がついた。 ベッドとテーブルの直線上にテレビが配置されており、普段はそこで寛(くつろ)いでいるであろうことが、容易に想像できる。 一人暮らしにしては広めの部屋だ。 長方形の形をしたリビングには、窓側にベッド・ローテーブル・テレビの三点が並んでおり、通路側にダイニングテーブルと二つの椅子が向かい合うように置いてある。 自宅の状況からしても、彼の几帳面な性格が伺える。 トイレや洗面所といった水回りも、清潔に保たれていた。 人が来ると分かっていたなら部屋を綺麗に片付けておくだろうが、ここへ来たのはたまたまだ。 まさか定期的に誰かを招いているなんてこと_。 頭に浮かんでくる嫌な妄想を掻き消したくて、焦茶色の遮光カーテンを開けた。真っ白なレースカーテン越しに太陽光を浴びながら、大きく伸びをすると、二日酔いの気だるさもいくらかマシになる。 しばらくそうして日の光を浴びていると、キッチンから食欲をそそる匂いが漂ってきた。リビングからキッチンを覗くと、男は慣れた手つきでフライパンを煽っている。調理道具や調味料もスペースを活用して収納しており、普段から自炊していることが分かる。 何か手伝おうかとも思ったが、勝手がわからない他人(ひと)の家では大人しくしているのが最善のような気がした。 手持ち無沙汰になった志乃は、ローテーブルの上に置かれた自身のスマートフォンに手を伸ばす。 画面をつけると、バッテリーは100%と表示されていた。どうやら昨晩のうちに充電をしておいてくれたらしい。 ベッドに腰掛け、スマホのロックを解除する。通知欄には返信する気が失せるほどたくさんのメッセージが並んでおり、何件か不在着信も入っていた。 全てに返信するのには時間がかかりそうだが、無視するわけにもいかない。一度大きく深呼吸をしてから、メッセージアプリを開いた。 乾杯してくれた友人の中には、突然クラブから姿を消した志乃がお持ち帰りしたのだと思っている人もいた。今回はされた側だと言っても、きっと誰一人として信じはしないだろう。 林田からも体調を心配するメッセージが届いており、自身の醜態を晒したのだと悟った。 『Belva』には数えきれないほど通ったが、自分の足で帰ることができなかったのは、今回が初めてだった。 これまで優等生として節度を守っていただけに、泥酔したという事実は自分の中でもショックが大きい。 酒に飲まれる客は、当然スタッフからも目を付けられやすい。迷惑行為はもちろんのこと、酒に酔ってトラブルを起こそうものなら、当然クラブは出禁になる。 今回はタイミングよく珠希が目の前に現れ、介抱してくれたから良かったものの_。 あそこで潰れていたら、間違いなくセキュリティに摘み出されていたことだろう。 林田への返信は特別丁寧に、時間をかけて文章を考えた。送信ボタンを押すと、ちょうど完成したようで、珠希がリビングへ入ってくる。 スマホをローテーブルに置き、水の入ったペットボトルを片手に男のもとへ歩いていくと、「どうぞ」と椅子を引いてくれる。 「ありがとう‥」 大学生に世話を焼かれていると思うと、少しばかり照れ臭い。 素直に椅子に腰掛け、キッチンに戻る珠希の背中を見つめた。 「すみません。ラーメン丼(どんぶり)が一つしかなくて‥このまま食べてもらってもいいですか」 そう言うと、志乃の目の前に置かれた鍋敷の上に、湯気がのぼる鍋を運んでくれる。 食欲をそそる香りに、思わずごくりと唾を飲んだ。 「うわ、美味(うま)そう‥」 「インスタントなんで、味は間違いないと思うんですけど」 人に食べてもらうことに緊張しているのか、少し硬い表情で箸とれんげを手渡してくる。 向かいの椅子に座り、かなりの量の一味唐辛子をかけている珠希を眺めながら口を開いた。 「わざわざ作ってもらっちゃって‥ごめん」 「僕がしたくてしたことですから、謝らないでください」 こういうことをさらっと言えてしまうところがズルいよな、とつくづく思う。 嘘偽りのない真っ直ぐな彼の言葉に、いつも心を弄ばれるばかりだ。 「さ、伸びないうちにどうぞ」 その言葉に頷くと「いただきます」と両手を合わせ、箸を持った。

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