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Day3-1
あの日_珠希のことを考えながら自慰をした日から、早くも3日が過ぎた。
連絡アプリで友だち登録をして、軽く挨拶をして以来、彼とのやり取りは未だできていない。
あんなことをしてしまった手前、心のどこかに罪悪感があり、自分から連絡するのを躊躇していた。
そして、またこの場所に来てしまったというわけだ。
「ふぅ‥」
エントランスの前で、一度大きく深呼吸をする。
もちろん彼に会うという目的で訪れたのだが、顔を合わせるには心の準備が必要だった。
身分証の確認を済ませ、狭い階段を降りて行く。
一段一段と進んでいくたびに、緊張が増していくように感じられたが、キャッシャーに立つ男の姿を見て、少しだけ気が楽になった。
「こんばんは」
「志乃ちゃん!また来てくれたの?」
満面の笑みを浮かべた林田は、そう言いながら志乃の手を取る。
「あの、この前はご心配をお掛けして‥すみませんでした」
「全然いいのよ。たまには酔いたくなる日もあるわよね」
「‥えぇ」
「たまちゃんが送ってくれて、助かったわね。直接お礼が言いたかっただろうけど、あいにく今日はお休みなのよねぇ‥」
男の口から発されたその言葉が、まるでスローモーションのように聞こえてくる。
呆然とその場に立ち尽くした志乃の姿は、林田の目にはあまりにも分かりやすく映っていた。
彼がいないからといって、入店して5分も経たないうちに店を出るわけにもいかない。それこそ会いたくて来たことが丸わかりだ。
「そ‥そうなんですね。それは‥残念だな」
辿々しくそれらしい言葉を捻り出して、ぎこちない笑顔を浮かべる。
これではまるで“彼に会いに来ました”と言っているようなものだが、当の本人は上手く誤魔化せたものと思い込んでいた。
「ほんと、残念よねぇ‥」
含みがあるような言い方をした林田は、何か思いついた様子で、突然自身のスマートフォンを取り出した。
「ねぇ志乃ちゃん、一つお願いがあるんだけど‥」
林田の話を聞くと、どうやらクラブのサイト用に写真を撮らせて欲しいらしい。もちろん顔などの本人が特定できるようなところは隠すとのことで、サンプルの写真を見せてもらうと、後ろ姿や腕などのパーツに寄ったものであった。
中には見覚えのある金髪の男の写真もあり、顔は見えないものの、雰囲気からして珠希であることが分かる。
少し前に撮られたものなのか、今よりも髪が短い。
「俺で良いんですか?」
「もちろん。志乃ちゃんイイ身体してるんだもの」
「じゃあ‥協力させてもらいます」
その後は林田に言われるがままにポーズを取らされては、幾度もシャッターを切られる。
スマホのカメラを向けては、度々誉めてくれていたが、こんなふうに写真を撮られるのは慣れていないというのもあり、何だか気恥ずかしかった。
「よしっ、このくらいでいいかしら。載せる前に一度確認するから安心して」
加工を済ませた画像は、連絡アプリで送ってくれると言う。
いつも通り“青色”のバンドを着用し、入場料の支払いを済ませた。
「協力してくれてありがとう。お礼に後でご馳走するわね」
林田はドリンクチケットを手渡すと、ショットを煽るような仕草を見せ、にっこりと笑う。
せっかくここまで来たのだ。
終電までの約2時間、とことん楽しもうじゃないか。
そう心に決め、大音量の音楽が鳴り響くフロアへと歩を進めた。
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