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Day3-2
「えっ‥遼太郎、お前また振られたの?」
「だからぁ、今回は俺が振ったの」
「最終的にはって話だろ‥」
月曜日ながら賑わっている大衆居酒屋で、3人では小さいテーブルを囲んでいた珠希は、やけに濃いハイボールを一口飲んで煙草に火をつけた。
「お前‥ほんと全然続かないよな」
「高校時代の彼女を未だに引き摺ってるようなヤツには言われたくないね」
酒が回ってきた二人の口論を見ているのは好きだが、今日という日はそれすらも楽しめそうにない。
その理由と言うのも、志乃と連絡先を交換してすでに三日が経とうとしているというのに、初日にやり取りをして以来、何一つ音沙汰がないからだ。
“また連絡してもいいかな”という言葉を間に受けた自分が悪いのだろうか。
珠希はスマホの画面を見えるように机に置き、彼からの連絡がないかと気にしてばかりいた。
「おい、珠希も何とか言っ‥」
言いかけた言葉を慌てて飲み込んだ純喜は、隣で不貞腐れた顔をする遼太郎にそっと耳打ちした。
「‥なんか、今日は一段とひどいよな」
「あぁ?だから‥“春が来た”ってやつなんじゃねぇの」
「どう見ても上手くいってないみたいだけどな‥」
「何言ってんだお前」
遼太郎は純喜の肩を抱き、若干呂律の回らない口調で呟く。
「そんな時のために俺たちがいるんじゃねぇか」
そう言ってにやりと笑うと、レモンサワーをぐびぐびと飲み、わざとらしく音を立ててジョッキを置いた。
その音に視線を上げた珠希は、おもむろに口を開く。
「‥何?ごめん。全然聞いてなかった」
「お前の“春”についての話だよ」
「は‥?」
「だからぁ、恋‥しちゃってんだろ?」
今にも落ちそうな灰を灰皿に落とし、酔いが回った頭で考えてみる。
“恋”なんて_呼べるのか。
「‥どうかな」
肩をすくめてそう答えると、目の前に座る二人はあからさまにつまらなそうな顔をした。
自分の中にあるのは、ただの独占欲だ。
彼が内に秘めた欲望を満たせるのは自分だけだという優越感さえ感じる。
「おい‥俺たち全然力になれてねぇぞ」
「俺たちじゃなくてお前だけな」
「んだよ、じゃあ純喜も何とか言ってやれよ」
周囲の雑音に掻き消されてほとんど聞こえなくなった二人の声に耳を傾けながら、残りわずかになった煙草を灰皿に押し付けていると、不意にスマホに表示された通知が目に入った。
送信者は“林田(チーフ)”となっており、『今日はたまちゃんがいなくても帰れるかしら?』という何とも不穏なメッセージに、慌ててアプリを開く。
「‥まじか」
開いたと同時に送られてきた一枚の画像に、思わず声が漏れた。
顔は映っていないものの、そこに映っていたのは間違いなく志乃だった。
_結局は、“そっち”を選んだってことか?
自分の中でドス黒い感情が湧き出てくるのが分かる。
こんな感情のどこが恋だって言うんだ。
「おい、何か顔が‥」
「やべぇよ。俺‥なんかまずいこと言ったか?」
二人が恐怖のあまり縮こまっていることに気づきもせず、珠希は残っていた三分の一ほどのハイボールを一気に飲み干す。
「俺、先帰るわ」
「お‥おう。気をつけてな」
「‥また明日」
五千円札をテーブルに置き、足早に店を出る。
駅へと向かった珠希が乗ったのは、自宅とは反対方向へ向かう電車だった。
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