26 / 45

Day3-5*

脳内に響き渡るような音楽も、周囲の喧騒も気にならないほど、身体を這う掌(てのひら)の感触だけに意識が向いていた。 「ちょ、‥っ」 太ももの内側をゆっくりと撫でたその手は、やがて鼠蹊部へと辿り着く。 際どい部分に触れられ、思わず声を上げると、強引に背後へと引き寄せられた。 自由に身動きが取れないため、腰を捻って上半身だけで後ろを振り返る。 ライトグレーのフードを目深に被っていて顔はよく見えないが、その隙間からはさらさらとした金髪が覗いていた。 「た、珠希くん‥?」 見覚えのあるその姿に、思わず彼の名前を口にしたが、周囲の音に掻き消されてしまったらしく、反応を示してはくれない。 それどころか、ぴったりと身体を密着させたまま、鼠蹊部に置かれた手は志乃の下腹部へと絡みついていく。 背後から右腕で抱き締められるような体勢になり、ついに逃げ場はなくなってしまった。 「捕まえた」 耳元で聞こえてきた彼の声に、ドクドクと心臓が音を立てる。 おもむろに声のする方へ顔を向けると、そこにはどこか不機嫌そうな男の顔があった。 ここへ来た理由はまさにすぐ後ろにいる彼だと言うのに、いざ本人を前にすると、色々な記憶が溢れてきてしまい、まともに顔を見ることもできない。 隣にあった影は、再び背後へと消えていき、代わりに左手が伸びてくる。 「‥っ、‥‥」 骨盤の出っ張りを指先でつうっと辿られ、ごくりと唾液を飲み込んだ。 珠希に触れられていると分かったときから、自分の身体はどこかおかしくなってしまったらしい。 彼に触れられたところからじわじわと熱が広がり、やがて一点へと集まっていくような_。 天井に設置されたスポットライトは音楽に合わせて、煌々とフロアを照らしている。 その眩しさに目を細めながら、熱を帯びた自身の顔を周囲の人に見られまいと、一人その場で俯いた。 「は‥っ、‥」 下を向くと、わずかに膨らんだズボンが目に入り、この時ようやく自分が勃起していることに気が付いた。 興奮を抑えようと熱っぽい息を吐き出すが、ほとんど意味を成さない。 スピーカーから大音量で流れる音楽は、メジャーなダンスミュージックからやがてメロウな雰囲気のR&Bへと展開していき、照明も落ち着いた色調へと変化していく。 珠希も音楽に合わせてリズムを取っていることが、背中越しに伝わってきた。 「‥ここまで踊りに来たんじゃないの?」 皆が音に身を委ねる中、不自然に立ち尽くしていると、不意に耳元に彼の息がかかる。 疾うに反応しているそれを鎮めようと必死な志乃は、フロアで楽しんでいるどころではなかった。 腿の付け根に置かれたままの左手が徐々に熱源へと近づいてくるのが分かり、身を捩ろうとしたが、背後にいる男がそれを許さない。 「こんなにして‥どうしたんですか?」 張り詰めたズボンの前見頃に触れながらそう囁かれ、耳まで赤くなっていくのがわかる。 その些細な刺激にさえも、志乃のそこは正直に反応を示す。 羞恥心を煽られ、小さく縮こまるように肩を丸めると、抱き締めていた右手で腰を掴まれ、半ば強引に身体の向きを変えさせられた。 向かい合うようにして立つと、彼の下腹部の辺りに自身の昂りが当たってしまう。 「ご、ごめん‥」 咄嗟に腰を引こうとするが、珠希が腕を絡めるのが先だった。 今度は正面から抱き締められ、目の前に広がる彼の顔に、胸の高鳴りが抑えられない。 「そんな顔、他の誰かに見せちゃダメですよ」 唇が触れそうなほどの距離でそう呟かれ、左手が頬に添えられる。 いつもとは違ってやけに熱い手のひらと、言葉から垣間見える独占欲に、心臓までもが焦がされていくようだった。

ともだちにシェアしよう!